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焦点:日本型CBDC、民間事業者は「協調」と「競争」 思惑に温度差

[東京 27日 ロイター] - 日銀が実証実験を進めている一般利用型の中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、民間部門の役割が見えてきた。「仲介機関」としての仲介業務や利便性向上につながる追加サービス提供など、様々な主体による協調が想定され、ビジネスチャンスと捉えるフィンテック企業も多い。一方、競争条件の公平性確保やデジタル対応へのコスト負担増などに懸念を示す向きもあり、各事業主体の思いは一枚岩ではない。

日銀が実証実験を進めている一般利用型の中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、民間部門の役割が見えてきた。写真は2016年9月、都内の日銀本店で撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)

<慎重な銀行界、地銀はコスト懸念>

日銀は、現時点で発行する計画はないとの基本的姿勢を崩していないが、一般利用型CBDCを発行する場合、中銀と民間部門による決済システムの「二層構造」を維持することが適当としている。日銀が発行したCBDCを、銀行など民間の仲介機関を通じて個人や企業に流通させる仕組みで、その流れは現在の日銀券を使ったものと概ね変わらない。

銀行界はかねて、日銀が利用者に直接CBDCを供給する形態をとることで預金が流出する可能性を懸念していたが、あるメガバンクの関係者は「二層構造にしたら銀行を経由しないといけない」と指摘。そうした懸念は薄まっているとの声も聞かれる。

現在のメガバンクは、導入されれば仲介機関の役割を果たすことになると自覚しつつも、日本でCBDCを導入するメリットを見極めることがまずは必要とのスタンスがうかがえる。

三菱UFJフィナンシャル・グループは、日本を含む先進国では利便性・安全性を有した決済インフラがすでに相当程度確立されていることから「導入意義や目的、ユースケースがまず明らかにされることが重要だ」と指摘。その上で、デジタル化に対応した決済の高度化に向けた取り組みを進めていくとしている。

三井住友フィナンシャルグループも具体的な設計やユースケースに関する今後の議論を注目するとコメント。みずほフィナンシャルグループは「銀行ビジネスへの影響は制度設計によって大きく異なることから大きな関心を持って情報収集を行っている」としている。

一方、地域銀行などからは懸念の声が上がっている。仲介業務に関するコストが明確ではないためだ。実際の運用では犯罪対策やシステム開発などの対応コストが発生することが考えられ、資金力が乏しい中小金融機関が費用負担に耐えられるか不透明だ。

デジタル化を積極的に推進している地銀の関係者は「デジタル通貨によって何らかの収益を得られる仕掛けが作れるのであればいいが、現金の代わりにデジタル通貨を普及させるとなるとシステム投資が必要になって体力勝負となる。収益が見込めないのであれば体力がないところはますます弱る」と話す。

<仲介機関の競争促進、ノンバンクに参入余地>

一方、日銀を含む7つの中銀と国際決済銀行(BIS)による共同研究グループは、今年9月の報告書で、消費者の将来のニーズに応えるには、多様な仲介機関の間でイノベーションや選択、競争を促進するシステムが必要になるとした。

これは仲介機関が銀行だけにならない可能性を示唆するもので、参入余地がある民間事業者にとってはビジネスチャンスとなり得る。

野村総合研究所のシニア研究員、井上哲也氏は「最近、一部の欧州の国では大規模に資金決済サービスをやっているようなノンバンクにも中銀の当座預金を持たせるかという議論が進んでいる」と指摘。制度設計によっては、CBDCの仲介機関にノンバンクが入ってくる可能性もあるとみている。

マネーフォワードの執行役員で、フィンテック研究所長の瀧俊雄氏も、仲介機関に「〇〇ペイ」などを手掛ける大きな資金移動業者や、世の中で広範に物理的な接点をもっている大手鉄道事業者などが潜在的に含まれてくると指摘する。

こうした民間事業者の参入は競争を促すだけでなく、支払い決済に伴う情報やデータを利活用し、一般ユーザーに有益となる新たなサービスを生み出すことなども期待されている。スタートアップ企業が多いフィンテック業界からは「大歓迎」(沖田貴史Fintech協会会長)との声が上がる。

ただ、競争条件の公平性がしっかりと確保されるのか、一部の銀行関係者が神経質になっているという。同分野に詳しい専門家は「ノンバンクや新興企業などに参入を促すために規制緩和が行われ、自分たちの不利な方向に進むのではないかという恐怖感があるようだ」と話す。

野村総研が主催している「通貨と銀行の将来を考える研究会」の中間報告では、銀行とノンバンクが競争状態となる場合、銀行の業務規制がイコールフッティングのハードルとなる可能性があるとの声も出ていた。

<様々な決済手段が共存する社会>

もっとも、日銀は、現金、CBDC、銀行預金、民間デジタルマネーといった様々な決済手段が共存し、機能に応じて役割分担する社会もあると見込んでいる。

民間デジタル通貨の発行に向けた取り組みを進めているディーカレット(東京都千代田区)の時田一広社長は、自社のデジタル通貨の決済インフラでは「電子マネーのように似て非なるものが乱立するのではなく、相互運用性をしっかり担保する」と強調する。

ディーカレットが事務局を務め、民間デジタル通貨のユースケースなどを研究している「デジタル通貨フォーラム」の山岡浩巳座長は、CBDCに関する検討と民間の検討は双方に利益があり、互いがプラスの方向に刺激しあって進んでいくということになると指摘。「CBDCが発行されるとしてもあくまで決済インフラの一部を担うものであり、民間がイノベーションの主役を担うということに関しては変わらない」と話す。

(杉山健太郎 編集:石田仁志)

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