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アングル:機密資格見送り、経済安保法の成立優先 参院選後の焦点に

[東京 11日 ロイター] - 企業活動を制約しかねないと懸念の声が上がりながら11日に成立した経済安全保障推進法案は、議論を呼びそうな「セキュリティ・クリアランス」制度を盛り込まず、一部野党や世論の反対を最小限に抑えた。防衛技術などの国際共同研究に同制度が欠かせないと考える政府・与党は、夏の参院選後に議論を本格化させたい考えだ。

 5月11日、企業活動を制約しかねないと懸念の声が上がりながら11日に成立した経済安全保障推進法案は、議論を呼びそうな「セキュリティ・クリアランス」制度を盛り込まず、一部野党や世論の反対を最小限に抑えた。東京都で2020年6月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

<特定秘密保護法の教訓>

セキュリティ・クリアランスは、安全保障に関わる機密などを取り扱う個人の適性を評価し、情報にアクセスできる資格を与える制度。人工知能(AI)やサイバーセキュリティなど先端技術の情報に触れられる民間人を特定しておくことで、情報漏えいを防ごうというものだ。経済安保法の実効性を高めるために必要とされる一方、身辺調査もするため、個人情報保護の観点から慎重論も根強い。

今回成立した経済安保法案は、夏の参議院選挙を前に政治的に対立する可能性のあるものは避け、多くの党が賛成しやすい内容に絞ったと、法案に関わった与党関係者は言う。背景にあったのは、2013年に成立した特定秘密保護法の教訓だ。野党がこぞって反対する中で深夜に強行採決し、成立後も若者を中心に市民の間で抗議活動が続いた。

「特定の人を排除するという見方や、特定秘密保護法のときのように秘密が増えるのではという懸念が生じる可能性を鑑み、今回は導入を見送った」と、同関係者は説明する。それでも「米国など西側諸国との安全保障に関わる共同研究やビジネスをする上で必要性が生じている」と話す。

経済安全保障に詳しい多摩大学大学院の井形彬・客員教授は、米国で行われたサイバーセキュリティに関する国際会議に参加した際、この資格がないため一部参加することができなかった。欧米からの参加者からは適性評価を有していないことを驚かれたという。

井形教授は「民間対象の適正評価制度があった方が良い」とする一方で、法律にする十分な需要があるのか検証が必要と指摘する。

<産業界は賛同>

岸田文雄首相は4月中旬の参議院本会議で「今後検討していくべき課題の1つであると認識している」と発言しており、参院選後に議論が本格化しそうだ。西側企業と共同研究や共同開発ができなくなる可能性を危惧する産業界も同制度の導入を支持しており、経団連は「相手国から信頼されるに足る、実効性のある情報保全制度の導入を目指すべき」との提言を政府に提出している。

前出の与党関係者によると、適性評価の資格をいくつかのレベルに分け、資格付与型の制度にする案がある。

特定秘密保護法も類似の制度だが、安全保障関連の業務に携わる国家公務員や、国の仕事に関わる民間企業の従業員が適正評価の対象となっている。2020年末時点で、特定秘密の取り扱いを行うことのできる人の数は、国家公務員や都道府県警察の職員、民間人で国の特定秘密の業務に携わる人を合わせると12万8452人だった。

経済安全保障法制に詳しい大川信太郎弁護士は、「特定秘密保護法は対象となる情報の範囲が非常に狭い」と指摘する。「特定秘密に指定できる4つの分野、防衛、外交、スパイ、テロのうちさらに一部しか指定できない」と語る。

金子かおり、取材協力:Ju-min Park 編集:久保信博

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