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コラム

コラム:「避難通貨」円の魅力、オミクロン株出現で再び脚光

[オーランド(米フロリダ州) 30日 ロイター] - 新型コロナウイルスの新変異株オミクロン株の出現で金融市場が不確実性に覆われた一方で、円はその特異な魅力を輝かせている。

 11月30日、新型コロナウイルスの新変異株オミクロン株の出現で金融市場が不確実性に覆われた一方で、円はその特異な魅力を輝かせている。2017年6月撮影(2021年 ロイター/Thomas White/Illustration)

11月26日に円は1.8%上昇した。1日としてはパンデミック発生以降最大の値上がりで、数年来の大幅高を記録した格好だ。これは過去の世界的なボラティリティー拡大局面で円が避難通貨として選ばれてきた流れにも一致する。

市場が機能不全に陥り投資家が逃げ場所を探す事態になると、円で調達されたキャリートレードはしばしば解消、もしくは巻き戻され、世界中に振り向けられた膨大な日本の投資資金が環流して円を押し上げる。

オミクロン株に対する不安が長引いて世界経済に悪影響を及ぼす事態になったとしても、既に各政府債が割高となっている今、投資家が株式などリスク商品への投資をヘッジできる資産は以前よりも乏しい。その中で、割安かつ流動性の高い円こそがヘッジ先候補の一つに浮上してくる。

MUFGのグローバル調査責任者デレク・ハルペニー氏は、昨年3月のパンデミック発生以降、S&P総合500種が3%以上も値下がりするという定義に基づいたリスクオフ局面は8回あったと指摘する。

昨年中の4回はより深刻で、いずれの場合も円はG10通貨で最も堅調に推移。今年に入ってから深刻度が低かった4回では、円はそこまで買われなかった。

そして26日に株式とコモディティーが売り込まれると、市場は思い知らされた。すなわち、突然ボラティリティーが跳ね上がると、投資家は他のほぼ全ての資産を差し置いて、ベータ値と利回りが低く経常収支が大幅黒字の円に殺到する、という事実をだ。

ハルペニー氏は「今年のリスクオフ・イベントから何かを推定するのはかなり難しい。あまり多くの事例がなかったからだ。しかし、ここから一定の流れが生じるとすれば、その傾向は強まる余地がある」との見方を示した。

<米金利との高い相関度>

ドイツ銀行、JPモルガン、ゴールドマン・サックスといった外国為替市場における有力金融機関は、米連邦準備理事会(FRB)のタカ派傾向の強まりと金利差拡大を根拠に、ドルは利回りゼロの円に対して上昇すると主張している。

つい先週には、金利市場がFRBは来年6月に利上げを開始し来年中に少なくとも政策金利を50ベーシスポイント(bp)引き上げる展開を織り込み始める中で、JPモルガンが来年半ばのドル/円相場予想を117円ちょうどに上方修正した。

今月に入ってドルが一時115円台と約5年ぶりの高値を付けたのも、こうした見方に後押しされたからだ。円の年初来の対ドル下落率は9%で、年間ベースで2014年以来の下げとなる可能性が十分に出てきた。投資家も円の一段安を見据え、大規模な円の売り持ちを構築。一部指標では、売り持ち規模が15年以降で最大となっている。

ただし、ロックダウン(都市封鎖)によって人々の移動が制限され、企業活動が止まり、国境が閉鎖される世界では、事態は正反対になる。これらの状況は全て、オミクロン株が生み出した不確実性の下で想定され得るシナリオだ。

米政策金利の見通しが下振れ、米国債利回りも上がるとしても予想ほどでないとすれば、ドル/円の支えはその大部分が取り除かれ、金利差拡大は金利差縮小へと転じる。

ドル/円はG10通貨の中で、米国債利回りとの相関度が最も高い。ゴールドマン・サックスが着目する指標によると、相関度は80%と、次に高いドル/スイスフランの実に2倍近い。

<リスクヘッジの主役交代>

特に市場のボラティリティーが跳ね上がっている場合、日米国債利回り差とドル/円の間には相関性が十分に確立されている。1998年と2008年の危機をきっかけに、円が過去最大級の上昇を記録したことは外為市場関係者の脳裏に焼き付けられた。

当然ながら、外為市場のボラティリティーや株式市場の混乱、利回り差の縮小度はこうした危機時のレベルからはまだ程遠い。それでも注視に値する動きだ。

昔から為替レートを左右する2つの要因、すなわちポジションとモメンタムも、円の追い風として働いてもおかしくない。そして円には、約40年前から毎年、経常黒字という構造的な支えがある。

直近のデータによると、投機筋やファンドの米通貨先物市場におけるドル売り持ちポジション220億ドル(約2兆5100億円)の半分を、対円が占めている。言い換えれば、彼らは多通貨よりもずっと円に対して弱気ということだ。

これは、円が買い戻され、上昇が加速する余地を意味する。ドイツ銀行のアナリストが指摘するように、円は「どの指標に基づいても一貫して割安」であるため、投資家はさらに円を押し下げようとするのをためらうはずだ。

みずほ(ロンドン)のニール・ジョーンズ氏は「パンデミックの大半を通じて、ドルはリスク回避の際に買われる通貨とみなされてきたが、もはやそうではない。来年は、リスクヘッジの最も効果的なバロメーターとして円が取って代わるだろう」と予想している。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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