[東京 24日 ロイター] - 日銀総裁候補の植田和男氏の発言に対し、金融市場では一定の安心感が広がり、株高・債券高が進んだ。「現在の日銀の金融緩和は適切」と述べたことで、早急な大幅政策変更の可能性は低いとの見方が広がった。ただ、イールドカーブ・コントロール(YCC)政策について将来的な見直しに含みを残したことで、相場は上昇一服となっている。
植田氏に対する所信聴取が24日衆院で行われ、同氏は冒頭で「現在の日銀の金融緩和は適切」と述べた。足元の物価高の要因は、主に輸入物価高によるコストプッシュであり、需要の強さではないと指摘。コストプッシュ要因は今後減衰し、「消費者物価上昇率dは来年度半ばにかけて2%を下回る水準に低下していく」との見通しを示した。
この発言を受けて、日経平均は一時、前日比350円を超える上昇。国債先物中心限月3月限も上げ幅を拡大した。「3月・4月といった早期の政策修正を示唆する内容ではなかったことで市場に一定の安心感が生まれた」(りそなホールディングスのチーフストラテジスト、梶田伸介氏)という。
一方、みずほ証券のチーフ債券ストラテジスト、丹治倫敦氏は、「物価の2%上昇達成までは金融緩和を続けるなどと発言しており、これまでの黒田東彦日銀総裁のスタンスを踏襲している」と指摘。マーケットの政策修正観測は根強く残るとみられるが、将来の金融政策を示唆する内容は乏しいとしている。
足元では株高・債券高は一服。植田氏が、日銀が現在採用しているイールドカーブ・コントロール(YCC)政策について、「基調的な物価見通しが一段と改善する姿なら正常化方向での見直し考えざるを得ない」と述べたためだ。また植田氏は「買い入れたETFの取り扱いは大問題、出口が近づけば具体的に検討」とも発言した。
ニッセイ基礎研究所の上席エコノミスト、上野剛志氏は「緩和継続の姿勢を示したものの、YCCに手を入れないということではない。市場では、金利の引き上げ方向への修正の可能性は今後も意識され、それに伴い円高への警戒感がくすぶり続け、円の下値を支える」と話している。
為替市場では、ドル/円は134円前半から後半を行き来する荒い値動きとなっている。市場筋によると、午前の取引量は「かなり高水準」(国内金融機関)だったという。
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