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焦点:経済対策でも否めない「場当たり感」、土壇場で首相が増額指示

[東京 28日 ロイター] - 政府が28日閣議決定する総合経済対策では、予算規模を巡って土壇場の攻防が繰り広げられ、岸田文雄首相が鈴木俊一財務相に直接指示するかたちで歳出を膨らませた。財務省からは異論の声も出たというが、米中の景気減速リスクを理由に退けた。閣僚辞任に見舞われたばかりの岸田内閣の突然の決断は、かえって場当たり的な政権運営を印象付けそうだ。

政府が28日閣議決定する総合経済対策では、予算規模を巡って土壇場の攻防が繰り広げられ、岸田首相が鈴木財務相に直接指示するかたちで歳出を膨らませた。写真は7月、都内で会見する岸田首相。代表撮影(2022年 ロイター)

<一夜で4兆円増>

「世界経済の下振れリスクを考えて、それをカバーできる金額にして欲しい」。政府関係者3人によると、岸田首相は26日、鈴木財務相と複数回協議を重ねる中で、こう指示を出したという。

当初想定していた対策規模は財政支出ベースで35.0兆円とし、民間企業の支出も含めた事業規模を67.1兆円とするものだった。財政支出のうち、国の支出である国費は31.6兆円とし、2022年度2次補正予算の一般会計分を25.1兆円と置いていたが、「規模も含めまとまりかけていたものが、一夜にして4兆円増えた」と、別の関係者は言う。最終的に財政支出ベースで39.0兆円、補正歳出は29.1兆円とした。[L4N31S1N6]

提示された案は、「真水」とされる一般会計の歳出だけでも、先にドイツのショルツ政権がまとめた最大2000億ユーロ(約28兆円)の総合対策に匹敵する規模となる。ところが了承は見送られ、当初案を引き取った首相みずから「茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長と連絡をとり、予算規模の積み上げで一致した」と、別の自民党関係者は明かす。

対策決定に先立ち、国際エネルギー機関(IEA)が25日、史上初の危機を宣言したことも歳出圧力を強めるきっかけとされた。

「エネルギーが枯渇する危機的状況の中で世界経済をけん引してきた米中のダブルエンジンが変調を来している」(首相周辺)との声が急浮上し、財務省提示の対策規模を巡って「今の経済情勢を踏まえていない」との見方が、政権内で一気に強まった。

<物価対策は減額>

もっとも、政権与党の声に配慮するかたちで、全体の規模ありきだったのは明白だ。与党自民党内ではもともと「真水30兆円が発射台。(30兆円に)届かないまでも、限りなく近づけなければ求心力を維持できない」との声が出ていた。

総合経済対策は、1)物価高騰への対応と賃上げ加速、2)円安を生かした稼ぐ力の強化、3)新しい資本主義の加速、4)国民の安全・安心の確保――の4本柱で構成してきたが、土壇場の調整で「今後への備え」とする項目が加わった。すでにある2つの予備費に加え、「ウクライナ情勢経済緊急対応予備費」を創設するためだ。

追加した「今後への備え」には財政支出ベースで4.7兆円をつぎ込み、不測の事態に備える構えだが、追加項目を講じたことで、対策の筆頭格に据える物価高騰・賃上げ対策の財政支出については、逆に13.7兆円から12.2兆円に減額となる。

複数の関係者によると、円安に対応する財政支出ベースの関連施策も、財務省が当初示した支出案から0.1兆円減額されており、「全体の積み上げは図ったが、政策的矛盾は否めない」(政府関係者)との声がくすぶる。

ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「この数カ月は旧統一教会の問題などで政治的対応に追われ、経済政策に先行き予見性が伴っていない」と言う。「規模を追うだけでなく、世界的な景気後退後の回復局面も見据えた施策も、今回の対策に盛り込んでおくべきだった」と指摘している。

(山口貴也 編集:橋本浩)

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