February 28, 2019 / 7:57 AM / 3 months ago

焦点:生産減速、戦後最長景気は「風前の灯」 消費増税に慎重論も

[東京 28日 ロイター] - 貿易統計に続き、1月生産が市場予想を大幅に下回り、国内景気のエンジン減速懸念が民間エコノミストから示されている。今年1月には戦後最長の景気拡大を達成した可能性があるとの政府の期待は風前のともしびとなっている。

 2月28日、貿易統計に続き、1月生産が市場予想を大幅に下回り、国内景気のエンジン減速懸念が民間エコノミストから示されている。今年1月には戦後最長の景気拡大を達成した可能性があるとの政府の期待は風前のともしびとなっている。写真は川崎で2017年1月撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

経済財政諮問会議の民間議員の中には、景気失速懸念が浮上するなら「機動的財政運営」にかじを切るべきとの声が根強くあり、2019年1─3月期の国内総生産(GDP)が前期比マイナスになる可能性が高まれば、消費増税の実施を巡り政府内で慎重論が台頭する可能性もある。

<輸出・生産・マインドに悪化の動き>

「戦後最長の景気回復が、幻に終わる可能性も否定できない」──。ニッセイ基礎研究所・経済調査室長の斎藤太郎氏は、28日発表の1月鉱工業生産(速報)をみてこう指摘する。

政府は1月月例経済報告公表の際に、戦後最長の景気拡大となった可能性があると発表した。

だが、その判断の根拠となる景気動向指数(一致指数)の過半数の系列が、昨年10月までにピークをつけ、その後は急速に悪化に転じている。今回、1月の鉱工業生産が前月比3.7%減となったことで、1月も拡大となるかどうか微妙な情勢になってきた。

生産は1月に突然、悪化したわけではない。鉱工業生産は3カ月連続で低下し、その間、市場予測を大きく下回ってきた。

2月の予測指数は前月比5.0%増だが、誤差など修正後の経済産業省の実質的な見通しでは、ほぼ横ばい圏にとどまり、2、3月予測指数に基づく1─3月期の生産は前期比1.4%減の見込みだ。

この背景には、中国などの外需の減速傾向があり、1月貿易収支では輸出が前年比8.4%減、貿易赤字は1.4兆円規模と市場予測よりも膨れ上がった。

中華圏の春節の影響や、アジア向け輸出の減少、一部自動車メーカーの部品供給トラブルなど、生産下押しの要素が並んだためとみるエコノミストもいる。

ただ、それらを割り引いても「下振れは予想以上」(第一生命経済研究所・主席エコノミストの新家 義貴氏)との見方が市場では多い。

生産活動の低下は、企業の投資マインドにも影響している。設備投資向けの「資本財出荷指数」と「建設財出荷指数」は今年1月にいずれも減少。先行指標である機械受注も1─3月期は2期連続の減少予想となっている。

ニッセイ基礎研の斎藤氏は「好調を続けてきた企業収益だが、ここにきて変調の兆しも見られる。先行きの設備投資は減速に向かう可能性が高いだろう」と予想。

国内需要のもう1つの柱である消費は、今のところ腰折れる気配は見えないが、景気ウォッチャーなどマインド指標は、足元でいずれも大幅に悪化。28日発表された1月小売業販売額は前年比0.6%増と市場予測の同1.1%増を下回った。

<マイナス成長なら財政出動の材料に>

外需発の景気下振れリスクについて、市場の懸念は表面化していないものの、実は政府が早手回しに議論を始めている。1月18日の経済財政諮問会議で、一部の民間議員は、海外経済から逆風が吹き、ショックが起これば、一時的に財政出動で対応すべきとの考え方を提示している。

第2次安倍晋三内閣が発足した2012年12月以降、マクロ政策の方向転換の前には、諮問会議の民間議員から、具体的な選択肢の提示が何度も行われてきた経緯があり、今回の「提案」も軽視できない側面がありそうだ。

政府・日銀が外需の動向の中で注目しているのは、中国経済の動向だ。中国と経済的な関係を深める韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国などのアジアへの日本からの輸出は、全体の50%を超える。中国とアジア向けの輸出が減少する事態は、輸出─生産─設備投資という循環に大きな打撃となる。

こうした中で、バークレイズ証券が行った試算は興味深い結果を導き出している。米中通商交渉において、中国が対米貿易黒字をゼロにすることを「目指す」ことで合意する可能性が高いと予想。実現するためには、中国が米国製品の輸入額を今後6年間で1.35兆ドル増加させる必要があると試算する。

この場合、中国は他国からの輸入を抑制することになり、日本の中国向け輸出は15.2%減少、輸出全体が3%減少し、実質GDPを0.6%ポイント押し下げると試算している。

一方で、中国政府は景気下支えのための景気対策を打ち出し、中国経済の腰折れはないとの観測が市場では多数を占めている。

ただ、リーマン・ショック後の4兆元規模の財政出動は難しく、「チャイナウォッチャー」の間では、2兆元が限度との声が多い。その規模では、中国経済のV字回復は望めないとの予測も少なくない。

国内景気をみるうえでは、生産悪化が在庫の大幅な積み上がりにつながるかどうかがポイントになるが、その兆しは見えず、直ちに景気後退に陥るとの声はほとんどない。

ただ、アベノミクスを強く支持してきたリフレ派のエコノミストや安倍首相の周辺では、消費増税を延期し、消費の腰折れを避けるべきだとの見方が多い。

大和証券・チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏は「すぐに新たな対策を打たねばならない状況には、まだない」としつつ、「5月発表の1─3月期GDPが大幅なマイナスになると予想されるようになれば、一部で消費増税延期論が出てくる可能性はありそうだ」とみている。

中川泉 編集:田巻一彦  

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