March 13, 2019 / 9:14 AM / 5 months ago

焦点:輸出企業ベア伸びず、弱い消費刺激 パート厚遇力不足

[東京 13日 ロイター] - 自動車・電機など大手輸出型企業の賃上げが13日、いっせいに回答されたが、前年実績割れが目立ち、中国などの海外経済の不透明感が企業経営者の判断を慎重化させた。他方で、非正規社員や中小企業での賃上げ幅の拡大が期待されている。

 3月13日、自動車・電機など大手輸出型企業の賃上げがいっせいに回答されたが、前年実績割れが目立ち、中国などの海外経済の不透明感が企業経営者の判断を慎重化させた。写真は都内で2014年4月撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

ただ、非正規社員などの賃金底上げによる消費活性化の効果は小さいとの指摘が専門家から出ており、賃上げ─消費拡大─物価上昇ー企業収益拡大のメカニズム稼動とはならず、低成長が続くとの予想が広がっている。

<収益懸念と脱官製春闘>                                                                                                                                                                                

「競争力の観点から、さらなるベースアップを行うことは、慎重に見極めなければならない」──。ホンダ(7267.T)は、このような理由を示し、昨年を下回るベースアップを回答した。

世界的な景気減速や貿易摩擦の影響が懸念される情勢の下で、自動車、電機、金属など輸出産業の回答は、軒並み前年を下回った。

自動車8社の昨年4-12月の営業利益は5社が減益となり、米中摩擦などに伴う販売減や、自動運転など研究開発コストが収益を圧迫している。

12日発表された最新の「法人企業景気予測調査」(財務省・内閣府)でも、2018年度下期の全産業の業績見通しは前年同期比4.9%の減益、19年度も上期は減益が見込まれている。

複数のエコノミストは、昨年までのベア引き上げの幅が企業による官邸に対する「忖度(そんたく)」で0.2─0.5%程度かさ上げされていたと指摘する。

実際、昨年の経団連の春闘取り組み方針に「3%の賃上げとの社会的期待を意識」と盛り込まれたのは、安倍晋三政権の要望があったからだと経団連関係者は打ち明ける。

しかし、今春闘で安倍政権からは、賃上げに対する具体的な「要望」はなく、経団連も19年の春闘取り組み方針で賃上げの目標率などは示さなかった。

<働き方改革、経営側と労働側の双方に懸念>

一方、今年4月から施行の「働き方改革」に関する新たな規制も、企業の警戒感を高めている。

具体的には、1)同一労働同一賃金によるパートの賃金上昇、2)定年後再雇用の増加、3)月例給与だけでなく社会保険料などの上昇──など、総額人件費は膨らむ可能性が高いと経団連ではみている。

その結果、正社員により大きな「しわ寄せ」が発生する可能性がありそうだ。正社員のベア引き上げなどが圧縮され、さらに残業時間の削減で、手取りの給与額が減額になるケースがあるからだ。

例えば長時間労働が多いトラック業界。運輸労連の武井伸泰・中央書記次長によると、トラックドライバーの年間労働時間は全産業より2割多く、年収は2─3割低い状況。時短による減収をカバーできるような固定給の増加がなければ、生活が立ち行かないドライバーが多数、発生しそうだという。

日本総研・山田久理事の試算では、残業代にあたる所定外給与の減少は1兆円程度。「これは昨年の主要企業ベア率0.5%の半分以上に相当し、無視できない。月例賃金上昇率の上積みが求められるほか、一時金などでの還元が必要」と指摘している。

<弱い消費、消費税実施にハードルの声>

他方、人手不足の解消を目指し、企業側は非正規社員の賃上げ幅を拡大する動きをみせている。また、大手企業に比べ、人材確保が難しくなっている中小企業での賃上げ幅の拡大が予想され、大企業・正規社員とのコントラストが強まると予想されている。

ただ、国内景気全体への影響をみると、やはり大企業の正規社員の賃上げ動向が、消費に対し、強い影響を与えるようだ。

野村証券・シニアエコノミストの桑原真樹氏は「パート給与が上がっても、やはり消費への効果が大きいのは正社員のベアだ。ベアが弱いと将来的に所得が上がっていくというイメージにつながりにくい」と分析。

その上で「今年は消費増税も控えている。通常の物価上昇を上回るベアは当然ながら、さらに2%の増税に耐えるには、0.3-0.4%分の上乗せも必要になる。そこまでの上昇が見込みにくいとなれば、今年も低成長を余儀なくされるだろう」と予想し、雇用者数と総所得が増加しても「消費がそこまでついていかない」と展望している。

また、第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は「ベアが昨年より上がるかどうかは微妙だ。賃金底上げはあっても、外部環境が厳しいので、うまくいっても去年並みといったところがせいぜいだろう」と、今年の賃上げ情勢を予測。さらに「中小企業や非正規の働き方改革による底上げ効果ですら、景気悪化が波及してさほど期待できないかもしれない」と述べた。

また、正規雇用者も残業代の減少を補てんする必要があるが、難しい環境だとし、「こうなると、今年は消費には逆風が吹く。へたをすると消費増税もやめることになりかねない」と懸念している。

中川泉 編集:田巻一彦

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