September 12, 2018 / 8:49 AM / 11 days ago

焦点:相次ぐ豪雨で「東京大洪水」リスク浮上、500万人避難も

[東京 12日 ロイター] - 地震への備えの重要性は昔から認識されてきた日本だが、近年、大規模な台風に次々と見舞われ、新たな自然災害の脅威に直面している――洪水だ。

 9月12日、地震への備えの重要性は昔から認識されてきた日本だが、近年、大規模な台風に次々と見舞われ、新たな自然災害の脅威に直面している――洪水だ。写真は首都圏外郭放水路の圧力調整タンクをチェックする東京都職員。(2018年 ロイター/Toru Hanai)

東京で、大雨により河川の堤防が決壊し洪水が起きた場合、海抜の低い東部地域では数千人が死亡、500万人以上が避難する事態になるとの専門家の見方もある。

東京だけではない。東京大学特任教授の片田敏孝氏は地球温暖化との関連で、日本全体で短時間に大量の雨が降る現象が増えていると指摘。

「日本の3大都市圏は、いずれも大きな河川の最下流部で、なおかつ(海抜)ゼロメートル。その中で、こんな(記録的な)雨が降り出した。台風も巨大化している。国家的な危機管理の問題であり、いわば国難と言われるような状況に、日本の大都市圏は置かれているという認識でいる」と話す。

7月には、西日本の一部で1000ミリを超える大雨により河川の堤防が決壊、土砂崩れで家屋が倒壊し200人以上が犠牲となるという36年ぶりの災害が起きた。

『首都水没』の著書があるリバーフロント研究所の土屋信行氏は「こんなことがあれば、東京ははっきり言って、壊滅的な打撃を受けるだろうと思う」と語る。

特に危険なのは、約150万人が住む荒川沿いの海抜ゼロメートル地帯。土木学会は6月、この地域で大規模な洪水が起こった場合、死者2000人超、被害額は62兆円に及ぶとの試算を公表した。

政府と地方自治体は近年、ダムや貯水池、堤防などを建設し、水害対策を強化していきた。しかし、内閣官房参与の藤井聡氏は、建設のペースが遅すぎるとみている。

同氏はロイターの取材に「全国各地に、予算さえつけば迅速にできるところがたくさんある。それは可及的速やかに対策していく必要がある。その財源に関しては国債を充当することが適切」と述べた。

国土交通省は8月、来年度予算の概算要求で、水害対策の推進のために前年当初比3割増となる5273億円を要求した。堤防のかさ上げや、避難警戒体制構築などが含まれる。

<自宅が水没>

1947年、カスリーン台風による大雨で東京にも大規模な洪水が発生、全国で1000人以上が犠牲となった。

この洪水を体験した葛飾区東新小岩の町会長・中川栄久氏(82)は、軒下まで達した水から逃れ、1階建ての自宅の屋根の上で父親と一緒に3週間過ごしたと当時を振り返る。

隣の2階家には、近所の人が13人避難していたという。「その中に、明日生まれてもおかしくないような大きいお腹をした女性がいた。お産婆さんは呼べないし、医者には連れて行けないし、どうしたらいいのか皆心配していた。妊婦さんが死んだらどうしようかと思うと、子供ながら眠れないようなことだった」と中川氏は語った。

さらに同氏は当時と今を比べ、「今なら大変だと思う。(これだけ家が密集して)そこに水が来たら、どうにもならないのではないか」と懸念を示した。

短時間に降る集中豪雨は、日本全体で増加している。1時間に80ミリ超の降雨は、1976年―85年の10年間の年平均11回に対し、2017年までの10年間では18回に増えた。

科学者は、これには地球温暖化が関係していると指摘する。東大の片田氏は「地球温暖化は海洋気象において一足先に進んでいると言われる。平たく言うと、海水温が高ければ膨大な水蒸気量が上がる。だから1回の雨が非常に多いということになり、台風も強大化しやすい」と述べた。

9月初めにも、西日本を襲った台風21号による高潮で関西国際空港が浸水し、一時閉鎖された。この台風では少なくとも13人が死亡した。

<避難の困難さ>

8月下旬、東京東部の海抜が低い地帯にある江東5区が共同でハザードマップを発表し、大規模水害の際には合計約250万人の住民に避難を呼びかける方針を示した。

ハザードマップには、それぞれの区域でどの程度の浸水被害が起きるか、どのくらいの期間水害が続くかが示されている。

しかし、7月の西日本の水害では、あらかじめ配布されていたハザードマップの内容についてきちんと確認していない住民が多かったことが明らかになった。

リバーフロント研究所の土屋氏は、今回のハザードマップでは、およそ90%のエリアが水没する結果になったとし、そのエリアの住民250万人に、中央区、千代田区、北区などの水没する地域、そこで昼間働いている他の地域からの300万人を加えると「この大規模水害がもし昼間に起こったとすると、500万人を超える人々を避難させなければならないという大災害になってしまうだろうと考えられる」と警告する。

自民党からは、自然災害に備え「防災省」を設置すべきという声が出ている。安倍晋三首相と総裁選を戦っている石破茂氏が、選挙戦で必要性を強く訴えている。

一方、安倍首相は「一考に値する」としながら、慎重姿勢を示している。現在、災害発生時には首相官邸が対応を主導している。

企業も洪水のリスク対応を始めている。東京海上日動リスクコンサルティングの主幹研究員・指田朝久氏によると、同社ではこれまで地震の場合の事業継続計画(BCP)に関する依頼が多かったものの、「やはり水害などを念頭に置かないと、ということで、そういう相談が増えてきているのは確かだ」と述べた。

*見出しを修正しました。

 9月12日、地震への備えの重要性は昔から認識されてきた日本だが、近年、大規模な台風に次々と見舞われ、新たな自然災害の脅威に直面している――洪水だ。写真は洪水に備えたボート。葛飾区で8月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

 翻訳:宮崎亜巳

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