July 10, 2018 / 9:22 AM / 4 months ago

焦点:金融庁新長官の遠藤氏、「森路線」継続しつつ手法は柔軟に

[東京 10日 ロイター] - 金融庁のトップが3年ぶりの交代となり、新長官に遠藤俊英・監督局長の昇格が決まった。前任の森信親長官は強い指導力で金融業界に「顧客本位の業務運営」を促すなど、金融行政の改革に努めた。遠藤新体制でもその基本路線は継承される方向だが、「手法は柔軟に転ずるのではないか」との見方もある。マイナス金利の長期化や、金融とITの融合などの金融ビジネスの大変革期にどのように対応するのか、遠藤長官の手腕が問われる。

 7月10日、金融庁のトップが3年ぶりの交代となり、新長官に遠藤俊英・監督局長の昇格が決まった。写真は金融庁のロゴ、都内で昨年6月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

<現場主義の新長官>

持ち前の現場主義には頭が下がる――。遠藤氏をよく知る金融関係者は、遠藤氏をこう評する。新しい取り組みをする地域金融機関の情報が入ると、経営トップにじかに話を聞きに行くという。「監督局長は普通は出向かない先にも躊躇なく足を運ぶ」(同金融関係者)というその姿勢には、庁内だけではなく金融業界からの信認も厚い。

同庁が試験的に導入している「360度評価」でも、幹部クラスの中で圧倒的な評点を得ており、部下からの人望も絶大だ。

一方で、ブレない意思も持ち合わせる。地銀の経営トップに就く旧大蔵省OBに対しても、地域の顧客のために具体的な施策を打ち出していないとして「ビジネスの現場は生え抜きに任せ、ガバナンスなどグループの方向性を担当すべき」と、退任を迫ったこともある。

地銀などの一部には「強硬だった森路線からの方向転換」を期待する声もあるが、「原則は変わりようがない。期待するだけ無駄」と金融庁のある幹部は言う。

同庁は、地域金融機関の持続的なビジネスモデル構築のため、業績悪化の金融機関には、経営陣の刷新を求める方針だ。

遠藤氏は6月、庁内の有識者会議で、ビジネスモデルの検討を金融機関に丸投げすることはせず「われわれも当事者意識をもって議論していかなければならない」と踏み込んでいる。

<深まる他省庁との対立> 

家計の貯蓄を投資に向かわせるためのつみたてNISA(少額投資非課税制度)や、顧客本位の業務運営、検査・監督の一体運営と金融庁の機構改革――。森長官は強いリーダーシップで多くの実績を残した。その半面、長官としての3期目は、金融庁と他の行政機関の意見対立が目立った。

ふくおかフィナンシャルグループ(8354.T)と十八銀行(8396.T)の統合計画をめぐっては、長崎県に発足する予定の新銀行のシェアが高すぎるとして統合を認めない公正取引委員会と、地域金融の特殊性を考慮して統合を承認すべきとする金融庁の見解が対立したままだ。

一方、郵政民営化委員会による郵政事業の検証作業で、ゆうちょ銀行(7182.T)の預入限度額が焦点に浮上すると、民営化委と見解が衝突。報告書の取りまとめが遅れている。

利用者の利便性向上のため、通常貯金の限度額撤廃を要望する日本郵政(6178.T)に対し、金融庁は、限度額撤廃で貯金が集まり過ぎれば、低金利下でゆうちょ銀の運用が一段と困難になると懸念。

また、ゆうちょ銀の株式売却プロセスが示されない中で、限度額だけ緩和されれば、地銀との協調関係に悪影響が出ると金融庁は警戒している。

他の省庁や行政機関との意見対立を乗り越え、地域金融の利用者に具体的なメリットをもたらすことができるのか。遠藤新長官の調整力が試される。

<山積する課題>

前身の金融監督庁発足から今年で20年を迎え、金融庁はかつての不良債権処理を主軸に置いた金融行政から、顧客本位・業界育成に舵を切っている。金融機関の健全性をチェックする資産査定の旗印だった「金融検査マニュアル」は18年度を最後に姿を消し、新たにビジネスモデルを検証する「深度ある対話」に行政手法も大きく変わる。

しかし、検査・監督の実務のあり方を検討する金融庁の研究会は議論を始めたばかりで、次の方法論が明確に定まっているわけではない。

足元では「地銀の優等生」と評価も高かったスルガ銀行(8358.T)で不正融資問題が浮上。「検査体制に不備があるのではないか」(メガバンク首脳)との指摘も出ている。

一方、仮想通貨取引所・コインチェックからの仮想通貨流出事件を機に、金融庁が仮想通貨交換業への行政処分を連発したことは、イノベーションの促進と規制を両立させる難しさを示した。

遠藤新長官の前途には、森長官が残したさまざまな課題が山積みとなっている。

和田崇彦、布施太郎 編集:田巻一彦

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