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アングル:漂流するPB黒字化、進む形骸化 2%物価目標と共通点

[東京 7日 ロイター] - 政府は、次年度以降の予算編成に向けた「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)で、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標に言及し、経済再生とともに財政健全化に取り組む姿勢を堅持する構えだ。しかし、新型コロナウイルス対策の拡大を求める声が根強い中、財政健全化の議論は深まりを期待できる状況にない。日銀が掲げる2%物価目標と同様、PB黒字化目標は一段と形骸化が進みつつある。

 6月7日、政府は、次年度以降の予算編成に向けた「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)で、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標に言及し、経済再生とともに財政健全化に取り組む姿勢を堅持する構えだ。東京都で1月22日撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

<PB黒字化、達成時期は不透明>

政府は与党内の議論を踏まえ、月内に骨太の方針を閣議決定する予定。ロイターが入手した方針の原案によると、「経済あっての財政」との考えを掲げ、成長志向の政策を進める一方、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化の旗は降ろさない。

菅義偉首相はこれまでも財政健全化のための歳出改革努力を続けると表明しており、今回のPB黒字化目標の維持は既定路線といえる。しかし、これまで明示していた目標の達成時期を改めて示すかどうかは不透明だ。

PB目標をいつ達成するのか、政府の方針は当初より大きく後退している。政府はもともと2010年代初頭の黒字化を目指していたが、安倍晋三政権下の2018年には目標達成時期が20年度から25年度に先送りされた。

去年の骨太の方針では「2025年度」の目標時期は明記されず、2018年、2019年の骨太方針などに基づき、経済・財政一体改革を推進する旨が盛り込まれるにとどまった。  

今回の骨太の方針における達成時期の取り扱いは内閣府、財務省、与党内で最終協議が続いているが、自民党の財政再建推進本部が先月とりまとめた提言では、「2025年度」との目標時期は明示されていない。

<財政膨張、与党内に危機感も>

先月、麻生太郎財務相は、財政目標の達成に向けて「着実に歳出、歳入両面から改革を進めていく必要がある」との認識を重ねて示し、25年度のPB黒字を念頭に「経済再生と財政健全化の両立をはかる」との姿勢を堅持した。

自民党の鈴木馨祐・財務金融部会長は、PB黒字化の目標を維持する政府の方針を支持、コロナ対応に追われる財政運営の先行きに懸念を示す。

「(財政の)タガが外れてしまった。他の国が財政出動しているから、日本でも(同じように歳出を増やしても)全く問題ないという話ではない」と同議員は語る。今後の新たな有事に的確に対応できるよう、「(規律を維持して)財政余力を作っておかないといけない」と指摘する。

別の与党議員は、「党内には今は財政再建を議論している場合ではないという声がある」と話す。「財政再建への努力をしないわけではないが、コロナで苦しんでいる人々がいる中で、総選挙前に財政健全化の必要性を大声で叫ぶことは難しい」と述べた。

今年度予算の一般会計は、コロナ対策としての予備費や社会保障費、防衛費が増え総額106.6兆円に膨張、9年連続で過去最大となった。与党内では、秋にも開かれる臨時国会で補正予算編成の必要性を訴える議員もいる。 

来年度から団塊世代が75歳になり始めるため、社会保障費はさらに増加する。75歳以上の人口の伸びは、今年度0.5%の後、2022年度は4.1%、2023年度は4.2%と高い伸びとなる見込みだ。

<日銀物価目標と同様、市場の関心薄い>

目標達成が先送りされてきたもう1つの代表例に日銀の物価目標がある。2013年3月に就任した黒田東彦日銀総裁は、2%の物価目標を2年程度で達成するため大胆な金融緩和への決意を表明した。ただ、今年4月に公表された日銀の物価の見通しによると、総裁の任期中2023年4月までに実現するのは難しい状況だ。

「現時点でみると、現実的ではない目標値が維持されている点でいうと2つは似ている」。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストはこう指摘し、PB黒字化について「本来ならより現実的な目標を早めに設定して、それに向けた具体策を出していくのが一番良い」という。

ただ、コロナ禍の中、今後どの程度の補正予算が必要になるか不透明であるうえ、新たな目標を設定すると、実現するための施策を示す必要がある。

同氏は今年の骨太方針について「財政健全化の姿勢を見せるだけで、事実上、健全化(PB黒字化)目標をほぼ2年間棚上げするということが続くのではないか」と予想。来年の骨太方針で、2030年度などに目標を先送りした上で、達成するための手段である増税策等を検討するのかもしれないとの見方を示した。

PB黒字化目標の形骸化はすでに金融市場でも意識されており、あまり材料にされなくなっている、と三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア債券ストラテジスト稲留克俊氏は語る。

稲留氏は、財政健全化論議が盛り上がりにくい背景として、日銀による国債の大量購入の影響を指摘する。「日銀の影響力が大きくなりすぎて、(財政支出の膨張や骨太方針の重要性など)他のあらゆる要因が相対的に小さくなってしまった」という。さらに「PB黒字化は無理だという見方が元々あり、今年の骨太方針で、目標の見直しなどの新展開が示されない限り、織り込み済みの反応が予想される」とみる。

ただ稲留氏は「いつまでもこのままではいけない。財政健全化は必要」と指摘、コロナ終息後の財政再建の取り組みをどう立て直すかが重要になるとしている。

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