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焦点:受動喫煙対策の法案、今国会提出困難に 自民など強い反発
2017年5月1日 / 23:31 / 7ヶ月後

焦点:受動喫煙対策の法案、今国会提出困難に 自民など強い反発

[東京 2日 ロイター] - 厚生労働省が2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて受動喫煙対策を強化するために提示した法改正の素案が、自民党議連や飲食業界の強い反発に遭い、宙に浮いている。今国会での成立を目指してきたが、法案提出のめどは立っていない。

 5月2日、厚生労働省が2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて受動喫煙対策を強化するために提示した法改正の素案が、自民党議連や飲食業界の強い反発に遭い、宙に浮いている。写真は都内の居酒屋で3月撮影(2017年 ロイター/Issei Kato)

日本は2004年に世界保健機関(WHO)たばこ規制枠組み条約(FCTC)を批准し、締結国となった。だが、その後対策は進まず、規制が最も遅れた国の1つとなっている。  WHOのダグラス・ベッチャー生活習慣病予防部長は4月7日、都内で記者会見し「日本は先進国だが、たばこ規制では他の国に大きく遅れをとっている」と強く批判。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が規制強化に向けた「絶好のチャンス」になると規制強化を促した。

<厚労省VS自民・飲食店業界>

厚労省が昨年10月に提示した受動喫煙防止法の「たたき台」では、主な公共施設を建物内完全禁煙とし、未成年者や患者が利用する学校や病院は、より厳しい敷地内禁煙にするとしている。

また、飲食店などでは原則建物内禁煙としたうえで、煙が外部に流出しない喫煙室の設置を認め、違反者が勧告や命令に従わない場合、罰則が適用される。

2003年施行の健康増進法は、施設管理者に受動喫煙対策を課していたものの、努力義務にとどまっていた。

このたたき台に対し、自民党厚生労働部会で反発が噴出。飲食店業界による反対集会や署名活動も行われた。

これを受けて厚労省は3月1日、面積の小さい店舗を禁煙の対象としないなど一部規制を緩和した修正版を策定した。それでも自民党の一部や業界の反発は収まらず、3月には約280人のメンバーを抱える自民党たばこ議連が、学校や医療機関での分煙と飲食店の店頭での「禁煙・分煙・喫煙」のステッカーによる表示を基本とする対案を作成した。対案は、厚労省の案とはあまりにも大きな隔たりがあり、調整は暗礁に乗り上げた。

自民党厚生労働部会の渡嘉敷奈緒美会長は、ロイターのインタビューで「厚労省が出そうとしている法律はけっこうきつい。最低限のところは法律で決めて、そこから先はモラルに任せていくという自由度があった方がいいのではないか」と話した。

現段階では合意のめどが立たず、「対立軸ばかりで怒号が飛び交うような部会を何回もやることに意味はない。ある程度、皆さんの合意が取れる方向性が見えた段階でなければ、部会を開くつもりはない」としている。  これに対し、WHOのベッチャー氏から、公共の場を完全禁煙とするうよう法改正を求められた塩崎恭久厚生労働相は会見で、厚労部会を開くよう自民党に異例の要請を行った。

<廃業に追い込まれる懸念>

全国飲食業生活衛生同業組合連合会は今年1月、厚労省のたたき台に反対する決起集会を開き、全国から550人が参加した。その後、8万店舗の会員に用紙を配って署名活動を展開。小城哲郎専務理事は、受動喫煙防止対策は進めていくべきだとしつつ、「売り上げが下がるだけならいいが、家族経営の店が廃業を余儀なくされる。その辺の懸念が一番大きい」とし、将来的に日本は「分煙先進国を目指していければいい」との考えを示した。

<東京オリンピックに向けて>

日本禁煙学会は1月31日、外国特派員協会で会見を開き、2020年のオリンピック・パラリンピックを「スモークフリー」で開催すべきと主張した。同学会の作田学理事長は、多くの政治家にたばこ販売・耕作者団体から献金が行われていることや、日本たばこ産業(JT)(2914.T)が主要メディアのスポンサーとなっていることが、日本でのたばこ規制を阻害していると主張。1)たばこが大きな税収源となっている、2)JT株の3分の1を財務省が保有している、3)財務省からJTに官僚が数多く天下りしている──ことなどを挙げ、政府によるたばこ規制の矛先が鈍りやすい構造を指摘した。

たばこ税は、過去15年以上にわたり毎年2兆円を超える安定税収。JT株式の33.5%を保有する政府への配当金は、2015年度で786億円に上った。  JTは今回の厚労省の案について「事業者の実情が十分に考慮されない厳格な規制をかける内容で、合理的かつバランスの取れたものになっていないと危惧する」とコメントしている。

肺がん患者の会「ワンステップ」の長谷川一男代表は、受動喫煙問題はマナーではなく健康被害であり、止めなければいけないと主張。そのうえで「たばこは嗜好品なので吸いたい人の権利を守るという考え方は、それによって命を落とす側からすると、許容できない」と話す。同氏はオリンピックに向けた受動喫煙防止法制定の動きを支援したいと述べた。

宮崎亜巳、Elaine Lies、Ha Kwiyeon

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