September 13, 2018 / 2:13 AM / 4 days ago

コラム:バブル後の日本、企業凋落でも「勝ち組」の訳

[ロンドン 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 2008年の金融危機で世界株式市場が崩壊するはるか前、1990年の日本は、株価と不動産市場の暴落に見舞われた。

 9月12日、2008年の金融危機で世界株式市場が崩壊するはるか前、1990年の日本は、株価と不動産市場の暴落に見舞われた。グローバル金融危機の経験からすれば、そのとき日本は数十年は続く混乱の中に叩き落されていたはずだ。だが、そうはならなかった。都内で2017年撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

10年前に起きたグローバル金融危機の経験からすれば、そのとき日本は数十年は続く混乱の中に叩き落されていたはずだ。だが、そうはならなかった。

日本の「バブル経済」は、世界クラスだった。

バブルの絶頂を迎えた1989年には、世界の上場企業の時価総額上位50社のうち、32社が「日出ずる国」に本社を置いていた。そしてバブルがはじけた。幾度もはじけた。

その後30年間、日経平均株価は何度かピークを迎えたが、その都度、直前につけたピークを下回った。底値も同様だ。2009年3月にバブル崩壊後の最安値に沈んだ日本の株価は、史上最高値から82%下落していた。現在でも、最高値より42%程度低い。

株式市場の視点で言えば、10年前の金融パニックは、日本のバブル崩壊と比べれば大したことではないように見える。

MSCI世界株価指数は、2007年10月から2009年3月にかけて57%下落したが、そのわずか6年後の2015年2月には、当時の史上最高値を更新した。現在は、それを27%程度上回っている。

さらに、日本の金融危機は、株式市場に限定された出来事ではなかった。不動産価格が暴落し、都内の住宅地の地価は、現在でもピークより65%低い水準にある。その上、巨大な経営危機が銀行を襲った。

これほど甚大で地殻変動的な金融ショックに襲われたなら、経済の残る部分が破壊されたとしてもおかしくなかった。

確かにメガ銘柄の数で言えば、日本は巨人から小人へと転落してしまった。NTT(9432.T)や野村ホールディングス(8604.T)、日産自動車(7201.T)などは、スイスの食品大手ネスレ(NESN.S)、同製薬大手ノバルティス(NOVN.S)、米半導体大手エヌビディア(NVDA.O)などに取って代わられた。

いまや、世界の上位50社に残った日本企業は、時価総額2000億ドル(約22兆円)のトヨタ自動車 (7203.T)だけだ。

こうした転落の大部分は、ピーク時につけた日本企業の異常なバリュエーションを反映したものだ。

とはいえ、かつて明るかった光の多くが曇ってしまった。5兆ドルの国内総生産(GDP)と、ドイツとフランスを合わせた規模の人口を有する国にしては、世界最大手を争う巨大日本企業の数は驚くほど少ない。 大胆な買収を仕掛けた武田薬品工業(4502.T)のような企業は例外的だ。

だが、一国の経済は、株式市場やトップ企業だけで回っているのではない。巨大な金融危機が、日本人の生活に与えた影響は驚くほどわずかだった。

国の繁栄を示す最も簡単な指標である1人当たり実質GDPは、日本の場合、1988年から1998年にかけて18%増加している。国際通貨基金(IMF)のデータによると、これは、他の主要先進国6カ国の平均17%を上回っている。これらの国は、同期間にバブル崩壊を経験していない。

また、金融危機のダメージが長引くこともなかった。IMFの2018年予測値を見ると、日本の1人当たりGDPは、この30年で41%増加。これはフランスと同じ伸び率であり、日本以外の主要7カ国(G7)の平均44%をわずかに下回る程度だ。

さらに素晴らしいのは、こうした尊敬に値する成長が、明らかな副作用を伴わなかったことだ。日本の失業率は安定して低位にあり、格差問題も限定的であり、医療費負担も先進国で最低水準にある。

過去30年の1人当たりGDP成長率で見ると、米国は日本より11%高いが、それでも米国人はこの安定ぶりをうらやましく思うかもしれない。だが、こうした統計には、人口動態の違いによる影響が示されていない。

米国の人口は、1988年より3割以上増えている。人口増加により、住宅や道路、病院などが必要となっている。こうしたインフラ建設が、GDP増加分の大部分を占めており、消費による影響は少ない。

日本の人口増加率はわずか3%で、GDP増加分のうち個人消費が寄与した分は米国より多かった。

世界の舞台で活躍する日本人経営者の減少も、人口動態の違いによって説明できるかもしれない。

日本の20─24歳の人口は、1994年のピークから37%減少している。新たに労働市場に参入する若者の数が減ったため、企業側も、国際的な野心を満たすために必要となるエネルギッシュな若者の採用が難しくなっているのだろう。

日本が他の先進国のように移民を受け入れていたなら、国際的に活躍する企業がもっと増えていた可能性はもちろんある。移民は、結局のところ、より大きな目標を抱き、国際的である場合が多い。国際的な事業拡大に資する資質だ。外国出身者は日本人口の2%にとどまっており、他のG7諸国の9─20%を大きく下回っている。

こうした状況はいつか変わるかもしれないが、そうなったとしてもそれは経済的な必要性からではない。人口が減少するにつれ、縮小する労働人口によって、平均賃金増加率は他の先進経済と同じペースで維持される見込みだからだ。

だがそれでも、世界の舞台で薄れていく日本企業の存在感と、安定的な国内の繁栄とのコントラストは、大きな経済上の疑問を提示している。それは、なぜ国をさらに豊かにすべきか、という問題だ。

安倍晋三首相は時に、日本が国際社会で存在感と名声を得るべきだと考えているかのような発言をする。それは、最近では第2次世界大戦当時まで、標準的な目標だった。

世界のトップ企業は、こうした栄光の一端をもたらしてくれる。もし、それが目標であるならば、日本は大敗しつつある。だがいまや、個人の快適さの追求に焦点は移っている。その基準でいけば、日本はいまだに世界の勝ち組なのだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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