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焦点:原油高と萎む輸出、強まる貿易赤字傾向 GDP回復不透明に

[東京 20日 ロイター] - 日本の貿易収支が赤字となる傾向が強まっている。9月も自動車の減産などで対米輸出が7カ月ぶりに減少に転じるなど、輸出の増加が鈍化する一方、原油高に伴う輸入額の増加が響き、想定を超える赤字幅となった。原油高が続けば家計消費に悪影響が及ぶことも予想され、政府が想定するように年内に国内総生産(GDP)がコロナ前の水準に戻るかは依然として見通せない。

 10月20日、日本の貿易収支が赤字となる傾向が強まっている。写真は都内の港で2019年5月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

財務省が20日発表した9月の貿易統計速報によると、貿易収支は6228億円の赤字だった。2カ月連続の赤字で、赤字幅はロイターが集計した予測中央値(5192億円の赤字)を上回った。

鉄鋼や鉱物性燃料の輸出が増え、輸出額は前年同月比13.0%増の6兆8412億円と7カ月連続のプラスとなった。ただ、減産対応が続く自動車輸出が40.3%減少し、輸出全体の伸び率は鈍化した。

一方、輸入は38.6%増の7兆4640億円となり、9月としては過去最高の輸入額だった。原油高に伴う原粗油の輸入額が約2倍に膨らみ、専門家の間では「資源価格が高止まりし、しばらくは貿易収支の赤字基調が続く」(農林中金総合研究所の南武志・主席研究員)との見方が多い。

<家計直撃の懸念>

原油高はGDPの半分を占める個人消費にも影響しそうだ。代表的なWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は17日に7年ぶりの高値となる1バレル=83ドルを超えた。

国際エネルギー機関(IEA)は先月、世界の石油需要が10月は4カ月ぶりに増加すると想定。「10月の需要は日量160万バレル急増し、年末まで増加が続く」と指摘した。政府内には「脱炭素の流れを受けて天然ガスが高騰していることも原油相場に影響している可能性がある」との見方があり、今後落ち着きをみせるかは予断を許さない。

第一生命経済研究所の永浜利広・首席エコノミストは「原油価格が平均80ドルで推移すれば年後半から1年間の家計負担を2.8万円、90ドルなら3.3万円増加させる計算になる」と指摘する。

「今の原油高が続けば年間0.3%ポイント程度のGDP押し下げ要因となる可能性もある」と、信金中央金庫の角田匠・上席主任研究員は言う。

<G20での対応期待>

政府は、今年7月の経済財政諮問会議で「GDPは21年中にコロナ前の水準を回復する」との見方を共有し、当初の年度内回復との想定を3カ月前倒しした。新型コロナウイルスのワクチン接種が進むことでサービス消費が回復し、輸出や設備投資の増加も見込めるとの判断からだ。

毎月実施しているロイター調査によると、新型コロナなどの影響で7―9月期GDP予想は月を追うごとに下方修正され、10月時点で前期比プラス0.2%(年率0.8%)となった。10―12月期は前期比プラス1.2%(同4.5%)の予想となっている。

仮に7―9月期GDPが前期比ゼロ成長だった場合、コロナ前の経済水準を回復するには「10―12月期は前期比プラス1.4%(年率5.8%以上)が必要となる」(ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済調査部長)とされ、原油高と同時に輸出が頭打ちとなる現状では、政府のシナリオ通りに経済が回復するかは見通せない。

「日本の交易条件は悪化し続けている。企業コストの増加は収益減少となるだけでなく、ガソリンや灯油の高騰が続けば家計負担は深刻になる」と大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは指摘、「月末の20カ国・地域(G20)サミットで主要産油国に増産を働きかける必要がある」と話している。

政府は18日、原油高対応で関係閣僚会議を実施、11月上旬に開催予定の石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどによる「OPECプラス」に向け、産油国に増産を働きかける方針を確認した。

(山口貴也、金子かおり、小宮貫太郎 編集:石田仁志)

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