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意外に下げない日本株、新型肺炎への抵抗力はあるか

[東京 17日 ロイター] - 中国に次いで世界で2番目の新型肺炎の感染国となっている日本だが、円高が進んでいないこともあり、株価の下落率は意外と大きくない。しかし、日本株に対する海外勢の関心がすでに低かったため、失望にも至らないという皮肉な状況でもある。暴落はしないとしても、経済減速懸念は強く、他国と比較した相対的な株価パフォーマンスは悪くなりそうだとの見方が多い。

 2月17日、中国に次いで世界で2番目の新型肺炎の感染国となっている日本だが、円高が進んでいないこともあり、株価の下落率は意外と大きくない。写真は東京証券取引所で2015年7月撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)

<進まない円高が下支え>

日経平均は17日時点で、2019年末の水準から133円38銭(0.56%)の下落にとどまっている。年初から、中東情勢の緊迫化や新型肺炎など悪材料が続いたにもかかわらず、過去のリスクオフ局面と比べて底堅い動きを示している。

その理由の1つは、円高が進まないためだ。足元のドル/円は109円台後半。昨年末の終値108円88銭よりも1円近い円安水準で推移している。日銀短観の12月調査で、大企業・製造業の2019年度の下期想定為替レートは106円90銭。新型肺炎の影響は懸念されるが、為替だけみれば、まだ業績上積み期待が持てる水準だ。

ただ、リスクオンの円安が進んでいるわけではない。過去の円高・株安局面では、低金利通貨を調達して高利回り資産に投資するキャリートレードの、調達通貨として使われていた円の巻き戻しが起きた。しかし、昨今はユーロなどマイナス金利の通貨が増えたことから、調達通貨としての「利用率」が低下しているとみられている。

ドルも円と同じくらいに上昇しているため、ドル/円としては動きが鈍くなっているほか、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が米債投資を増やしている」(外資系投信)との観測も、円高が進まない要因だ。

「新型肺炎は、以前なら1ドル105円くらいになっているイメージの悪材料だが、円高が進まないことが、日本株の下支えになっている。しかし、景気減速懸念が強い局面では、世界の景気敏感株である日本株は買われにくい」と、JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏は指摘する。

<海外勢の関心低下>

海外勢の売りが限定的であることも、日本株の下落が小幅にとどまっている理由だ。年初から2月第1週までの、海外投資家の売買動向をみると、先物は7600億円強の売り越しとなっているが、現物は売り買いが拮抗している。

しかし、これも日本株に魅力を感じて売り惜しんでいるというわけではないようだ。

「新型肺炎による日本経済への影響について、海外投資家から、あまり問い合わせがない」──。日本在住の外資系証券のエコノミストはこう明かす。「昨年あたりから日本への関心が急激に低下してきている。関心がないから売られない、そんな状況だ」という。

海外投資家は、2019年に日本株の現物を7953億円売り越した。先物で3兆2667億円買い越しているが、あくまで足の短い短期資金。2013年に現物だけで15兆円買い越した「アベノミクス相場」初期の海外投資家の様相とは大きく異なる。

最近の日本株の買い主体は、日銀と事業会社。昨年、日銀は上場投資信託(ETF)を通じて4兆3772億円買い入れた。めどの6兆円には達していないものの、最大の買い主体となっている。事業法人も自社株買いなどによって昨年は4兆1870億円、買い越している。

海外勢と個人の売り(昨年は現物で約4.3兆円)を、日銀と企業による買いで埋め合わせているのが、いまの日本株の需給的な構図だ。リスクオフ局面で大きく売られないのはこのためでもある。日本株の魅力で底堅いとは言いにくい。

<高まらない政策期待>

政策期待も強まっていない。財政は補正予算編成を決めたばかり。日銀は追加緩和の余地が乏しいと市場ではみられている。

「この局面で、追加金融緩和をしても景気に効果があるとは限らない。マイナス金利を深掘りすれば副作用も大きくなる。円高が進んでいないなら、追加緩和には踏み切らないのではないか」とシティグループ証券のチーフエコノミスト、村嶋帰一氏は指摘する。

日本の10─12月期実質GDP(国内総生産)は前期比マイナス1.6%と、事前予測のマイナス0.9%を大きく下回った。1─3月期はさらに新型肺炎の悪影響が大きく表れるとみられている。ヒトやモノの動きが滞れば、いくら財政を出しても、事業は進まず、効果は発揮できない。

「2期連続のマイナス成長ならリセッション(景気後退)だ。そんな国に投資すれば最終投資家への説明責任が問われる」(外資系証券)──。少なくとも世界景気の持ち直しがみえるまで、日本株への投資には慎重にならざるを得ない。

円債は買われ金利は低下。金利が低く抑えられているために、金利面からの円高も抑えられている。しかし、日本の財政への安心感といった理由からではない。直近の3週間で約3兆円、日本の中長期債を買い越した海外投資家はドル円のスワップから得られる上乗せ金利を利用しているだけだ。

円高が進まないおかげで、日本株は以前と比べて底堅い動きを示している。しかし、日本株の魅力が評価されているわけではない状況では、パフォーマンスは相対的に劣後する可能性が大きい。

(編集:内田慎一)

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