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日本株に慎重な米国投資家、語られなくなった「ストーリー」
2017年2月24日 / 04:39 / 9ヶ月前

日本株に慎重な米国投資家、語られなくなった「ストーリー」

[東京 24日 ロイター] - 米国投資家の日本株買いが鈍い。ホームの米株が絶好調でリスク許容度は上がっているはずだが、欧州の投資家などと比較しても、その慎重さが目立つ。米株市場の規模が圧倒的で世界の株価も連動しやすいため、米国の投資家は分散投資のニーズが低いとされる。トランプ政策への不安感だけでなく、アベノミクスへの期待感が薄れ、日本独自のストーリーを欠いていることが慎重な投資姿勢につながっているようだ。

 2月24日、米国投資家の日本株買いが鈍い。ホームの米株が絶好調でリスク許容度は上がっているはずだが、欧州の投資家などと比較しても、その慎重さが目立つ。写真は東京証券取引所。2015年6月撮影(2017年 ロイター/Thomas Peter)

<米国勢と欧州勢の違い>

欧州の投資家と比較すると、米国勢の日本株に対する慎重さがよくわかる。

トランプラリーが始まった昨年11月。日本取引所のデータによると、欧州勢は日本株を約1.3兆円買い越したが、北米勢(ほぼ米国と推測される)の買い越し額は336億円どまりだった。今年1月までの3カ月間では、約2.3兆円を買い越した欧州勢に対し、北米勢は計1842億円の売り越しだ。

自国の株式市場の規模がそれほど大きくない欧州勢は、国際的な分散投資のために一定程度、日本株を買わなくてはならない。経済や相場の状況により、売買の振れは大きいが、「今年は欧州政治の不透明感が強い。欧州の投資家は資金を分散させるニーズが高まっている」(国内投信)という。

一方、米国勢には、分散投資の必要性が低いと言われる。世界の株式市場に占める米株のウエートは時価総額ベースで50%以上。世界の株価は米国の株価にほぼ連動する。「米国の投資家は各地域に分散してヘッジする理由が乏しい」とピクテ投信投資顧問の荻野琢秀社長は話す。

さらに米株は、ここ5年の間でベストパフォーマーだ。しかも足元はドル高で、相対的な価値も上がっている。米国の投資家は、自らの国に投資するのが最も効率が良く、わざわざ為替リスクをとって日本株に積極的に投資するインセンティブは乏しい。

<積極的に買う理由乏しく>

対米証券投資のデータをみると、米国投資家も万遍なく海外に投資している。2016年トータルで海外株は7兆円超の買い越しと、それほど多いわけではないが、昨年はカナダや英国、フランスなどへの投資を膨らませている。

16年に売り越したのは、日本とオランダ、アイルランドくらい。そのうちアイルランドはタックスヘイブンで、「米国の薬品会社などが複雑な取引をしており、純粋なポートフォリオ投資以外の事情がある可能性が大きい」(T&Dアセットマネジメントのチーフエコノミスト、神谷尚志氏)という。

オランダは今年総選挙があり、政治的な不透明感がある。しかし、日本は他国と比較して政治的に安定していることが相対的なプラス材料だ。企業業績も悪くはなく、ファンダメンタルズ的に劣っている面が多いわけではない。

米国投資家が日本株に慎重な理由として、JPモルガン・アセット・マネジメントのストラテジスト、重見吉徳氏は「金融緩和策には限界がみえ、コーポレートガバナンスの改善は足踏み、賃金も上がらない。企業業績も為替次第だ。現時点で日本株を積極的に選好する理由が乏しい」とみる。

東京都内での投資家会合に参加した米系運用会社のアナリストは、自社のグローバルファンドが日本株を依然アンダーウエートにしていると指摘。「日本株のパフォーマンスは円安の効果が大きく、ドル建てでは特段良いわけではない。米国株のパフォーマンスが良いなか、日本株に投資する必要性をさほど感じていない」と話した。

<語られなくなった「アベノミクス」>

米国投資家が日本株を積極的に買っていた時期がある。2013年だ。約5兆円を買い越し、欧州勢の6.7兆円に匹敵する規模となった。

その要因はアベノミクスへの期待感。外国人が株式を買うには、たとえ間違っているかもしれなくても、ストーリーが必要とはよく言われる。アベノミクスによって、日本経済の長期停滞が打ち破られるかもしれないという「物語」が、米国投資家の触手を動かしたようだ。

しかし、それから4年。海外投資家を訪問することが多い米系証券エコノミストは「アベノミクスがすっかり話題にならなくなった」とこぼす。分散投資の必要性が薄い米国投資家が日本株を買ってこないのは、日本独自のストーリーに欠けているからだという。

米国投資家の売り越し動向は、16年後半からペースダウンしており、米国の日本株ETFにも徐々に資金が流入している。米バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが14日公表した月次調査結果によると、グローバル投資家の日本株配分は20%のオーバーウエートになっており、全体的なセンチメントはそれほど悪くない。

米国で法人税減税が実現されれば、米国での現地生産化が進んだ日本企業に対してはメリットが出る可能性もある。トランプ米大統領に名指しされることが多い日本に対し慎重になっている投資家は、その反動を短期的には見せるかもしれない。

しかし、それも外部発の材料。米国投資家が13年のような本格的な買いを復活させるには、日本独自のストーリーが描けることが必要だろう。アベノミクスの次なる一手が求められている。

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