September 2, 2019 / 8:25 AM / 3 months ago

消えない長期金利-0.3%予想、日銀オペ減額には政策の限界も

[東京 2日 ロイター] - 日銀が国債買い入れオペ減額で金利低下を食い止めようとしているが、市場では大きな効果は期待できないとの見方が多い。ゼロまで減額しても金利押し上げ効果は限定的であるうえ、マネタリーベースを増やすという現在の政策方針では、大きな減額は難しいとみられている。世界的なリスクオフが再開するような局面では、再びマイナス0.3%を試す可能性がありそうだ。

 9月2日、日銀(写真)が国債買い入れオペ減額で金利低下を食い止めようとしているが、市場では大きな効果は期待できないとの見方が多い。2016年9月に東京で撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

<買い入れゼロでも効果わずか>

わずか5分間──。日銀は30日、午前10時10分に通告した残存期間5年超10年以下の国債買い入れを4500億円から500億円減額した。直後に国債先物は下落したが、同15分には反発。長期金利も一時、前日比2.5bp上昇のマイナス0.265%をつけたが、引け値ではマイナス0.280%まで戻した。

週明け2日も、10─25年超の国債オペを200億円減額、長期金利は一時マイナス0.265%まで上昇している。しかし、市場では「オペ通告前から相場が弱く、金利は上昇しやすい状況だった。オペ減額では金利低下を止められない」(国内証券)との見方が多い。

野村証券のシニア金利ストラテジスト、中島武信氏の試算では、日銀がすべての国債買い入れをゼロにした場合でも、10年金利への上昇圧力は12ベーシスポイント(bp)程度。5─10年国債のみをゼロにした場合は4bpに留まる。

10年債金利がマイナス0.30%の場合、マイナス0.18%程度かマイナス0.26%までしか押し上げられないことになる。「ストック効果と米金利低下、海外勢の買いなどで構造的な金利低下圧力がかかっており、オペ減額では金利上昇圧力は高まりにくい」と中島氏は分析する。

フロー効果の小ささは日銀のワーキング・ペーパーでも指摘されている。昨年10月に出された分析レポート「日本における市場分断・特定期間選好仮説のDSGEモデルによる検証」によると、17年末の金利押し下げ効果のうち、日銀保有の国債残高が積み上がることがもたらす金利低下のストック効果が72bpを占め、フロー効果は3bpに過ぎない。

<マネタリーベース増加方針が束縛>

現在、日銀は年率換算で約64.5兆円強の国債を購入しているが、一方で今後1年で保有国債のうち約55兆円が償還される。現在の国債買い入れ額が維持されれば、いまから1年後の国債保有増加額は約9.5兆円になる。

日銀は消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという、オーバーシュート型コミットメントを掲げている。ETF(上場投資信託)購入もマネタリーベースの増加要因になるので、9.5兆円に6兆円(償還はない)が加わり、現在は約15.5兆円の増加ペースとなっている。

一方、現在の残存期間5年超10年以下の国債買い入れ額は月4000億円。月4回実施されており、1年間ゼロにすれば、19.2兆円の減額となる。この場合、マネタリーベースは拡大ではなく縮小してしまうため、現実的にはゼロ化は難しい。5─10年を減らす一方で、他の年限の国債買い入れを増やすこともできるが、それでは全体的な金利押し上げ効果は薄らぐ。

これは1年間、オペをゼロにし続けた試算であり、急激な金利低下局面で、一時的にオペを大きく減額することも可能だ。しかし、減額した分を再び増やす場面では、金利低下圧力がかかってしまうほか、減額は一時的とみられれば効果は出にくい。

保有国債の売りオペも可能だが、オーバーシュート型コミットメントに反するだけでなく、金融引き締め政策への転換と受け止められるおそれがある。

<意図伝えにくい緊急オペ>

日銀は8月に3回オペを減額したが、小幅で効果は薄かった。残された方法としては、予定されているオペを見送ることも可能だ。しかし、日銀はこれまでオペ回数を減らしてきており、チャンスは多くない。長期国債(残存期間5年超10年以下)対象のオペは現在月4回。金利低下に機動的に対応するのは難しい。

相場が大きく動いたときに、緊急オペを行うこともできるが、金利上昇局面とは異なり、日銀の意図を伝えにくい。オファー額を前回比で減額して金利低下抑制の意図を伝えたとしても、実際には国債を買うことになるためだ。しかも予定外の買い入れであり、金利低下要因になってしまう。

予定されているオペで、買い入れる国債の利回りに下限を設けることもできる。しかし、日銀が提示している以上に低い金利(債券価格は高い)で買いたいという投資家がいれば、金利は容易に低下してしまう。最初はサプライズ感があるため、そのときは金利が上昇するかもしれないが、そう何度も使える手ではない。

「米中貿易摩擦、香港情勢悪化、製造業減速など金利低下方向の材料ばかりだ。やればやるほど限界が見えてくるオペ減額だけでは金利低下を止められない。再びマイナス0.3%を試す可能性がある」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア債券ストラテジスト、稲留克俊氏は予想する。

円高抑制効果もある金利低下は、現在の日本経済にとって必ずしも悪いわけではない。また世界的な金利低下傾向のなかで、日本だけ止めることも難しい。許容幅を超える低下を容認することを弾力化による「(イールドカーブ)コントロール」の1つとみることもできるが、いざ低下を止めようとしても難しいとみる市場は、機をみて下限を試すことになりそうだ。

(編集:石田仁志)

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