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コラム

コラム:7月日米消費伸び悩み、永田町の情報吸引機能に異変も

[東京 21日 ロイター] - 日米ともに7月に入って個人消費の回復基調が頭打ちになっているもようだ。背景には新型コロナウィルス感染の収束メドが立たず、雇用などへの先行き不安の存在がある。加えて足元の日本では、猛暑による生鮮野菜の値上がりで実質購買力が削がれる現象も浮上。個人消費の先行きに暗雲が垂れ込めている。

 8月21日、日米ともに7月に入って個人消費の回復基調が頭打ちになっているもようだ。背景には新型コロナウィルス感染の収束メドが立たず、雇用などへの先行き不安の存在がある。5月28日、千葉県のショッピングモールで撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

一方、コロナ感染の拡大を懸念し、与野党の国会議員が「かき入れ時」の旧盆休暇の期間も含め、地元の選挙区で「濃密」な活動を行うことができず、地元経済の苦境や個人消費の弱まりなどを訴える生の声が永田町に届いていない。その結果、戦後最大の経済危機にもかかわらず、政策対応が後手に回ろうとしている。

<日米共通、コロナ懸念が消費抑制>

大きな危機の場合、直後の急降下から持ち上がる局面が必ず出てくる。「ペントアップ効果」と言われる需要のことで、日米の消費も4月から5月に底を形成し、6月には急速な回復が明らかになった。

ところが、7月に入るとその伸びが鈍化した。ジェーシービーとナウキャストがクレジットカードのデータから消費動向をフォローするために作成した「JCB消費NOW」によると、今年1月後半を基準にした財とサービスを合わせた総合指数は、7月に入ってマイナス10%前半で推移。ボトムのマイナス30%から回復してきた勢いたが失われている。

ナウキャストCEOの辻中仁士氏は、7月に入ってからの感染拡大や長雨による外出頻度の低下が、消費の弱さにつながったと分析している。

一方、米国でも米連邦準備理事会(FRB)が19日に公表した連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の中で、7月に入ってクレジットカードや携帯電話の位置情報などの高頻度データによると、消費回復の勢いに鈍化の動きが見られるとの見解を示した。

米国でもNY州などを除いて感染拡大が目立ってきており、コロナ感染の動向が消費の行方を大きく左右しているとみられる。

<日本は猛暑で購買力低下の公算>

先行きはどうか。ナウキャストの辻中氏は「8月は少し回復してくるが、それほど強い回復ではないだろう。位置情報をみていると、人の動きが十分に戻っていないからだ」と予測。

米国では労働省が20日発表した15日までの週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)が110万6000件と、前週の97万1000件(上方改定)から増加した。増加は3週ぶりで、労働市場の回復の鈍さが浮き彫りになった。この雇用環境の不透明感が、米国の消費の頭を押さえつける構図を作っている。その背景にもコロナ感染の拡大懸念がある。

つまり、日米ともにコロナへの懸念が経済活動を委縮させ、不透明感を残したままの状況を作り出している。

さらに日本では、猛暑による生鮮野菜の値上がりが目立ち始め、その他の消費を圧迫し始めている。7月全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は前年同月比0.0%だったが、長雨による日照不足で、トマトやネギなどの生鮮野菜が値上がりし、総合指数は前年比0.3%上昇だった。物価がジワジワと上がり始めると、消費者の購買態度は急速に慎重化する。野菜の値上がり分は、不要不急な支出のカットに直結し、外食やレジャーなどの需要を圧迫するだろう。

直近では、残業代などのカットによる所定外給与の減少が勤労者世帯のフトコロを直撃。10万円の定額給付金の効果がはく落する9月以降は、消費者態度がさらにシビアになり、財布のひもを強く締め付けると予想される。

<コロナ禍、国会議員の選挙区入り制約>

このような消費者の受けている打撃や、戦後最大の下落幅となった2020年4─6月期の国内総生産(GDP)の結果が出ても、政府に追加の経済対策を求める声が、リーマンショック時に比べて小さいのはなぜか──。

1つは、すでに打ち出されている財政・金融政策の効果もあって、日経平均.N225が2万2000円台を維持し、あたかもマーケットが日本経済の先行きを楽観しているかのように見えていることがある。

もう1つの大きな理由は、コロナ感染拡大のリスクによる国会議員の移動規制だ。「金帰火来」と言えば、金曜夕方に国会を出て選挙区に帰り、火曜の朝に戻って国会審議に参加する「先生」方の行動を示す「業界用語」だった。ところが、コロナ感染を地元が警戒し、東京に滞在したまま選挙区に帰れない日々が多くの国会議員を襲った。

夏場になって選挙区に戻ることができても、盆踊りは中止となり、ソーシャルディスタンス(社会的距離)という言葉は多くの選挙民が知るところとなり、票固めの集会も開催できない状況となっているという。

その結果、地元の「生」の声が、先生方に届くパイプが極めて細くなり、地元の中小企業が実際に直面している危機の程度を把握できなくなっているとの声が、永田町から漏れてきている。言い換えれば、全国の窮状を東京に伝える「フィードバック機能」が壊れてしまっているということだ。

例えば、失業者の急増を防止している雇用調整助成金の期限が来る9月末が接近しているのに、与野党を問わず、この助成金をいつまで支給し続けるのか、その先はどういう対応を取るべきか、という議論がわき起こってこない。10兆円の予備費の使い道についても、中央官庁にはそれなりの「皮算用」があるが、国会議員からの情報発信はほとんどない。

消費の先行きは、戦後最悪の展開をたどるリスクもあり、楽観は許されない。静かな永田町の動静が、政策対応の手遅れにならないことを切に望みたい。

●背景となるニュース

・ 7月の総合指数は前年比0.3%上昇

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編集:石田仁志

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