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衆院選:識者はこうみる

[東京 1日 ロイター] -

 10月31日に投開票された第49回衆院選に関する識者の見方は。写真は岸田文雄総理、都内の自民党本部で代表撮影(2021年 ロイター/Behrouz Mehri)

31日に投開票された衆院選は、自民党が単独過半数(233議席)を大幅に上回る261議席を獲得し、国会を安定的に運営するための「絶対安定多数」を確保した。識者の見方は下記の通り。

●現状変える力ない野党、立民新代表が焦点

<政治評論家(元時事通信解説委員) 原野城治氏>

自民党政権の支持率が低下しても、自民党の支持率が高止まりしており、無党派層は自民党と無党派の間を行き来するだけで、野党に票が流れることがなく、野党に現状を変える力がないことが示された。

  自公の協力が20年を超え両党の選挙協力が強固であるのに対して、野党共闘は1年しか経過しておらず、選挙協力のブロックを作れていない。

日本維新の会が躍進したが、投票先がなくこれまで棄権していた無党派層の票が流れた。ため池のようなもの。投票率が60%を超えないと左派野党には流れないということだろう。今回の衆院選結果は、自民が勝ったわけでなく、現状維持が選択されたとみるべき。

  維新のような中間政党は、これまでも希望の党やみんなの党などの例がある。

今後の自民党内政変・政局の動きの鍵を握るのは、立憲民主党が再生できるリーダシップを発揮できる新代表や執行部を作ることができるかどうか。枝野幸男代表が交代することが来年夏の参院選に向けての試金石になる。

立憲が党首の顔を変えてきたら自民党も身構えるだろう。立憲には、野党にとって厳しい環境であった安倍晋三政権時代を生き残り、力を付けた人材がいるはずだ。

衆院選結果を踏まえ自民党は表面上、当面は岸田体制で行けるとの見方から党内の不協和音に蓋をしているようにみえる。

  しかし、安倍元首相と菅義偉前首相の亀裂などの構造は大きく変わっていないのではないか。甘利明幹事長が(小選挙区落選により)影響力を失うことによって、菅氏や二階俊博前幹事長など非主流系実力者と、細田派(清和会)や岸田派(宏池会)など保守本流との不協和音は顕在化する可能性はある。

●反自民の受け皿に維新への期待

<立教大学教授(社会学部) 砂川浩慶氏>

大手メディアは衆院選で自民党の単独過半数獲得は微妙などと予測してきたが、今回の選挙結果は大きく外した。その理由として有権者の意識がかつてと比べ変化してきたことが考えられる。一つの要因は有権者の共産アレルギー。もう一つは日本維新の会に対する期待の大きさ。自民もダメだが立憲民主党もダメという有権者がなんとなく、維新を選んでいる。政治に詳しい人は、維新は自民よりも保守色が強い可能性も感じるが、そのような点が期待になっている。

  一方、自民党で大物議員が多数小選挙区で落選したのは反自民、世代交代への期待も確認できる。

  立憲民主党も、枝野幸男代表は(接戦となり)小選挙区獲得判明が日付変更後にずれ込み、辻元清美副代表は比例復活もできないなど、世代交代が進んだ面もある。

立憲・共産が伸び悩んだ理由には、岸田政権も分配を強調したため経済政策で差が小さくなった面もある。

  世界的な潮流であるLGBTや気候変動問題への対応が衆院選で争点にならなかったことも懸念材料だ。維新と自公は是々非々で政策協力するとされているが、温暖化ガス削減や代替エネルギー政策ではなく、憲法改正や敵基地攻撃能力などのテーマのみであれば懸念材料だ。

●国債増発懸念いったん後退、幹事長人事を注視

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア債券ストラテジスト 稲留克俊氏>

事前には自民党の議席が過半数に届かないとの懸念もあったが、結果は、自民党単独で絶対安定多数を確保した。岸田文雄政権が支持率てこ入れのために経済対策を大型化させるとの思惑は強まらず、円債市場で売り手掛かりとなることはなかった。

ただ岸田首相も既に経済対策を盛り込んだ補正予算を年内に成立させる意向を示しており、債券市場の注目は引き続き、その規模と財源となる国債増発に向いている。このため、選挙結果を受けて円債の買いにくさは弱まったものの、依然買いづらさは残ると言える。

もう1つ気がかりなのは、小選挙区で敗北して比例で復活当選した甘利明幹事長が辞任意向を示したことだ。仮に辞任が認められた場合、自民党内のパワーバランスがどうなるかには留意したい。結果として高市早苗政調会長の影響力が強まる場合は経済政策が大型化する可能性もあり、注視している。

●幹事長落選は岸田首相にとって敗北、既存政党にノー

<法政大学大学院教授(現代政治分析) 白鳥浩氏>

今回の選挙結果は、必ずしも岸田政権に対する信任ということにはなっていない。自民党は小選挙区で甘利明幹事長や塩谷立元文科相、石原伸晃元幹事長など大物議員が次々と落選している。

幹事長が落選するような選挙を強行したことで、参院選に向け「岸田下ろし」の胎動は起こるだろう。岸田氏にとっては敗北で、しかし敗北の中でも最悪ではなかったということだ。有権者が岸田首相に全ての政策で全権を委ねるということにはならず、今後の政権運営に厳しい目が注がれるだろう。

  今回の衆院選、有権者は既存政党にノーを突き付けている。議席を伸ばしたのは維新の会とれいわ新撰組で、逆に自民党、立憲民主党、共産党が議席を減らしている。

  これまで自民の安倍晋三政権や菅義偉首相政権は、一強多弱の枠組みの中で森友・加計学園問題などスキャンダルになりかねない問題を数の力によって乗り越えてきた。今回の選挙は、これに対して疑問符を突き付けたと言える。

  しかし、有権者は必ずしも共産と立民の協力に賛同したわけではなかった。政策に隔たりがあるにもかかわらず選挙協力を進めたこの両党の在り方にも疑問府が付いた。

  今回躍進した維新は、コロナ禍で大阪府の吉村洋文知事が強いリーダーシップをみせ独自の大阪モデルも展開し府民に安心感を与えてきた姿に、コロナ対策には必ずしも成功したとはいえない安倍・菅政権と違う選択肢を有権者は感じたのではないか。

また、維新が躍進した理由の一つは、コロナ禍で大規模集会や握手ができないなど従来型の選挙活動が制限される中で、SNSやブログでイメージを売ることに長けていたためだ。一方、与野党で大物議員の落選が相次いだのも同様の理由だろう。

●120円超の円安も視野、岸田政権の対応が注目

<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

自民単独で絶対安定多数となり、事前の予想調査と比べてもかなり強い結果となった。初動では株高・円安で反応している。中長期的には来年の通常国会運営や参院選の行方、自民党内事情については波紋が起きる可能性はあるものの、目先については岸田政権の安定運営は続くとみられ、今の初動の動きを継続していくとみている。

日本は、一時的だとみられていたサプライチェーン問題や資源価格の高騰が解決していないこともあり、コロナ禍で経済成長が弱まっている状況の中でインフレだけが進む「スローグフレーション」問題がある。また、黒田東彦日銀総裁は円安については総合的な見地から容認している。

一方で、他国は来年もインフレが続いてくとの見方が収斂していく中で、通貨高指向がみえる。その受け皿としての日本円の円安という話になりやすい。円安水準は今後一段と進む可能性がある。120円を超えるドル高/円安が想定され、岸田政権がそれに対してどのように対峙していくかが注目だ。

●政治の安定確認で円高リスクは後退

<野村証券 チーフ為替ストラテジスト 後藤祐二朗氏>

自民党が単独で過半数の議席を獲得する見通しとなったが、事前予想からは、ここまで自民党が健闘するとは思わなかったので、相当、伸びたという印象だ。株式市場では日経平均先物が上がっており、政治リスクが低下したことで株高で反応というのは非常に理にかなっている。株安に伴う円高のリスクは後退したようだ。

目先のドル/円相場は、113―115円のレンジで推移するとみている。今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)や英中銀の政策会合などイベントが多く、日本の政治イベントには反応しづらい状況だ。

ただ、衆院選を無難に通過して円高リスクが後退したことに加え、先週の黒田東彦日銀総裁の発言が円安余地を拡大させたとみている。ドルは113―115円で推移した後、どちらにブレークするかというと、ドル高/円安方向に振れる可能性が高いのではないか。

政策的な観点でいうと、次の参議院選挙でねじれを回避できるかどうかが重要になってくる。また、2023年4月黒田総裁の退任と、後任人事が政治的にも注目される。短期的には自民党の議席獲得はしっかりした結果となったが、今後の政権支持率を引き続き注視する必要があるだろう。

●株価にベストの結果、来年1月半ばまでに3万2000円も

<大和証券 チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治氏>

自民党が議席を大幅減少させながらも絶対過半数を占めるという今回の選挙結果は、株式市場にとってベストのシナリオと言えるのではないか。安定的な政権運営が可能となる半面、議席減と大物議員の落選という事実は、緊張感を保たせることになり、年末にかけて経済対策をしっかり行うことが期待できる。連立を組む公明党の議席増から、給付金やGoToトラベルなども打ち出されそうだ。

経験則から言うと、与党が過半数を明確に確保した場合の株価は、向こう4週間ぐらいは堅調に推移するため、11月は2万9000円台での推移が考えられる。選挙後に3カ月間、堅調な地合いが続いた2017年10月のケースに当てはめると、来年1月半ばごろまでに日経平均は3万2000円を目指す相場展開になりそうだ。

●過半数維持はポジティブでも増税なら痛しかゆし

<みずほ証券エクイティ調査部チーフエコノミスト 小林俊介氏>

自民党が単独過半数割れであれば公明党のキャスティングボードが強まり自民党内で岸田おろしが始まりかねなかった。単独過半数維持により岸田首相は政策のフリーハンドを得ることができ基本的にポジティブだ。

ただ岸田首相の掲げる新自由主義の否定も信認を得たとみなし、補正予算や来年度予算の議論で、金融所得課税を含め富裕層に対する増税に強く踏み込んでくるようであれば、今回の自民党絶対安定多数の獲得は、マーケットにとっては痛しかゆしな面もある。来年の参院選も踏まえた対応が注目される。

一方、小さな政府路線を掲げる維新が票を伸ばした。甘利幹事長の後任が、大きな政府を掲げる岸田派・麻生派系列か、小さな政府志向の細田派系列か、なども今後の岸田政権の政策を占うリトマス試験紙になりそうだ。

●目先の株価にポジティブ、持続力には不透明感

<ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏>

衆院選の結果に対し、市場はひとまずポジティブに反応しそうだ。公明党が議席を伸ばした上、自民党単独でも絶対安定多数を確保し、政権基盤の安定が見えてきた。

ただ、これによって日本が大きく変わるとの期待感が出ているわけではない。自民党は、想定された以上には議席を減らさなかったが、それでも2桁減だ。来年の参院選で過半数を確保できるかは依然、不透明といえる。ねじれ国会の可能性が強まるようなら、市場からのポジティブな評価はあまり続かないかも知れない。

改革路線を打ち出していた日本維新の会が伸びた。立憲民主党が議席を減らすなど、自民党が善戦したのは野党の共闘が受け皿になり切れなかったことが背景にあり、有権者の消去法的な選択とみることが可能だ。

焦点は今後の政権運営に移る。選挙結果を受けて、自民党が危機感を抱いているならいいが、誤った自信につながるようなら、先行きの相場にはネガティブになり得る。

日経平均は、目先2万9000円台での値固めとなりそうだ。ただ、選挙を通過した後は、市場の目線は企業決算に向かう。企業業績の懸念はくすぶり、短期間で3万円を超えて上昇ていくイメージはない。

●留保付きの自民勝利、政策は実質変化なしか

<シティグループ証券 チーフエコノミスト 村嶋帰一氏>

自民党は単独過半数ギリギリとの事前予想が多かっただけに、絶対安定多数を上回る議席を確保したことは健闘したと評価できるだろう。岸田文雄政権は一定の政治基盤を築いたと言える。

ただ、日本維新の会の躍進などをみると、自民党を積極的に評価した勝利とはみえない。自民党に懐疑的な票が維新に流れたと言える。その意味では留保付きの勝利だろう。

今後の政策は実質的には変わらない見通しだ。岸田氏は、選挙前には分配を強調していたが、終盤は成長を強調していた。来年の参院選に向けて、分配と成長のどちらかというわけではなく、両方掲げていくのではないか。

野党の候補一本化はあまりうまくいかなかった印象だ。自民党への反対票は立憲民主党から維新に流れ、立憲民主は最大野党として政権を担えるオプションとはみられていないことが示されてしまった。

来年の参院選は政権選択選挙ではなく、政局にはなりにくい。政策論議は今回不調だったが、今後も期待しにくいかもしれない。

一連の政治イベントを経ても、結局、何も変わらなかったという結論になるのではないか。

●世代交代選挙、立民受け皿になれず

<政治評論家(元自民党政調会長室長) 田村重信氏>

今回の選挙は、小選挙区で立民の小沢一郎氏、自民党の石原伸晃氏や野田毅氏らが落選しており、世代交代が進んだ選挙だ。

自民党の議席が大きく減らなかったのは、立憲民主党が受け皿になれなかったためだ。維新の会は大阪で受け皿になれたので、議席が大きく伸びた。立民の議席が最終的に伸び悩むと、枝野幸男代表の進退が問題になる可能性がある。

自民は首相が菅義偉氏から岸田文雄氏に代わりフレッシュさがあったが、立民は代表が枝野氏のまま。共産党は20年も同じメンバーが執行部にいる。有権者は現状に不満があるのだから、党首も変えられない政党は変わらないとみているのだろう。

*内容を追加しました。

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