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菅新内閣発足、どこに期待するか:識者はこうみる

[東京 16日 ロイター] - 菅義偉氏が16日に衆参両院で首相に指名され、菅内閣が発足する。発表された閣僚名簿に対し、市場関係者や有識者が示した見解は以下の通り。

菅義偉氏が衆参両院で首相に指名され、菅内閣が発足する。発表された閣僚名簿に対し、市場関係者や有識者が期待感や問題点を指摘した。写真は自民党総裁室での菅氏。2020年9月14日に撮影。(2020年 ロイター/プール撮影)

  ●「守り」強いが前向きメッセージ見えず

<立教大学 社会学部・メディア社会学科 砂川浩慶教授>

新内閣を顔ぶれを見ると、安倍前首相と親戚の岸信夫氏、加藤勝信氏、菅氏の恩師子弟の小此木八郎氏など地縁・血縁による採用が多く、平均年齢も59.9歳と若くなく、前向きなメッセージが感じられない。旧体制によるアンシャン・レジーム内閣とのイメージだ。新内閣で新しい方向に向かっていく光を感じることができない。一方、守りには強いディフェンス優先のチームとの印象だ。

菅新首相はデジタル庁の創設を提唱しているが、裏を返せば政府のデジタル化がいかに遅れているかの証明。省ではなく庁としており、政府全体の組織を動かすのは難しいのではないか。

菅氏は省庁の縦割り打破を掲げている。本来は各省庁からあがってきた良いアイデアを政府全体でくみ取るボトムアップの形が望ましいが、菅氏の手法は官邸主導・トップダウンのスタイル。各省庁の専門性をないがしろにしたトップダウンはうまく行かないのではないか。

安倍政権では森友・加計学園問題や桜を見る会の問題などがあり、日本の民主主義の根幹がおかしくなったとみているが、これらを改善する意向も感じられない。

菅新首相としては、早期に衆院解散を行い自分の内閣を改めて作りたいだろうが、新型コロナウイルスの患者数は減っていない。解散は東京五輪の中止を決めた後、来年春ぐらいではないだろうか。

与党も旧体制だが野党も旧体制なため、合流した新立憲民主党に大きく票が流れるとは考えられないものの、お灸をすえるため一定の票が共産党に流れる可能性はある。

●ご祝儀なし、為替への影響は株価次第

<FXプライムbyGMO常務取締役 上田眞理人氏>

新内閣では「アベノミクス」が継承されると予想されるが、アベノミクスの実態は超金融緩和であり、既に追加緩和の余地がないところまで超金融緩和が推し進められてきたことを考えれば、何もできないことになってしまう。

一方で、菅氏は携帯電話料金の押し下げやGotoトラベルなど、消費を喚起する規制緩和やその他の政策には前向きで、この点は期待できよう。年内に解散し、菅氏は自分のカラーを出した組閣を望んでいるとみている。

為替への影響は、株価動向を通じた間接的なものとなるだろう。株価の押し上げ効果がある政策が採用されれば、ドル/円にも上値余地が広がる。

外為市場では、前日から円高気味となっているが、これは菅新内閣がアベノミクスを継承するとの見方から、ご祝儀的な株高/円安を期待した投機筋が、株ロング/円ショートで待ち構えたものの、実際にそうした反応が現れないので、ポジションを巻き戻しているためだ。

新内閣の政策云々にかかわらず、ユーロは1.18ドル、ドル/円は105円ちょうどと、現在クリティカルなポイントに近づいている。

ユーロが1.18ドルを割り込んだ際には、過去最大級に膨らんでいるユーロロングの部分的な巻き戻しがいったん入りそうだ。ロングの圧縮を受けたユーロ安はユーロ/円を押し下げ、対ユーロでの円高がドル/円にも波及するだろう。

  こうしたユーロ安/円高の流れに、欧州連合(EU)との通商交渉でもめている英ポンド安が加われば、クロス円および対ドルでの円高はより大幅になるリスクがある。

●円債市場に安心感与える陣容

<バンクオブアメリカ・メリルリンチ チーフ金利ストラテジスト 大崎 秀一氏>

菅義偉氏は安倍政権の流れを引き継ぐということを掲げてきたので、新内閣の顔ぶれがあまり変わらないのは仕方がない。マーケットとしても、継続性を評価している。ただ、継続性を先に評価してしまったために、新味が乏しいということが反動として嫌気される可能性もある。

麻生太郎財務相が再任されることで、円債市場にも安心感が出るだろう。安倍政権時代に2度の消費税増税を実施した実績もあり、財政健全化に向けた姿勢が緩むことはないとみられる。

菅新政権のポイントは、支持率が落ちた時だ。野党の状況から、自民党が負けることがないとみれば解散・総選挙に打って出る可能性もある。その際、大型景気対策を打つことも考えられるが、10兆円の予備費もあり、国債発行が大幅に膨らむことはないのではないか。

また、日銀と政府の関係も継続される見通しだ。イールドカーブ・コントロール政策に基づき、国債増発が10年債金利に影響を与えるようであれば日銀は国債買い入れを増やすとみられるため、この点も円債には安心材料だ。

●既得権益との衝突懸念、茂木氏注目

<立命館大 政策科学研究科 上久保誠人教授>

新内閣で最大の注目は官房長官。安倍晋三前首相の側近で器用に動けるようにみえる加藤勝信氏になった。菅氏はスポークスマンとして加藤氏を使うことになるのだろう。一部で取り沙汰されていた萩生田光一氏の方が泥をかぶるタイプだったと思う。

安倍前政権の権力は、森友・加計問題への対応やメディア・コントロールのために集中した側面がある。そのような権力を、菅氏が、規制改革・行政改革・縦割り行政打破などの正論のために活用できるのか。既得権益と衝突し、菅氏が批判の矢面に立たされるのでないか注目している。

新内閣の布陣に目新しさは少ない。河野太郎氏の着任した行革担当相は歴史的に渡辺喜美氏を除いて大きな成果が少ない。財務省など改革が必要な巨大官庁の担当大臣はいずれも留任だ。

あえて注目するならば茂木外相の留任だ。安倍政権の7年8カ月で、長期政権で日本の存在感が非常に高まることが証明された。日本は諸外国からみて援助に前向きで非常に良い国であるのも一因。安倍首相が辞任しても外相が留任することで外交の継続性が確保できたことは評価できる。同じ首相候補とされる河野氏が、難しいポストに就いたことで、今後茂木氏が首相候補として台頭する可能性がある。

現在の野党には消費税減税以外に目立った政策がないため、早期解散すれば自民党は勝つだろう。公明党がいかに早期解散に消極的で、菅氏が公明党に同調しても、自民党内の早期解散圧力に抗し切れないのではないかと思う。

もっとも自民党の歴史を振り返ると、安定すると余計な内部抗争に走る可能性がある。早期解散に踏み切り衆院選で成功しても、その後、政権が不安定化する可能性はありそうだ。

●株価は小動き、財政運営に変化なく解散の可能性も低い

<野村証券 エクイティ・マーケット・ストラテジスト 伊藤高志氏>

菅新政権の発足を受けても、株価は特段動かないとみている。安倍政権の流れをある程度引き継ぐことが予想され、ここ数日も小幅な動きにとどまっている。背景には財政運営に大きな変化はないとの見方がある。

通信や地銀などの業種では今後、ある程度影響が出てくるかもしれない。既得権益にメスを入れることで新しいサービスが生まれたり、業界全体のパイが増えたりするなど効用を生み出す可能性もあるので、ネガティブな見方はしていない。

衆院の解散総選挙に踏み切るタイミングは2つある。菅氏自らの立場が不利になった場合か、逆に自らの立場が有利な場合だ。現状では周辺の環境はかなり安定しているので、市場も解散総選挙は織り込んでいないとみている。

直近の課題は、コロナ禍で壊滅的になってしまった消費を立て直すことだ。GoToトラベルやGoToイートなどの政策で消費意欲を高める必要がある。そうした需要喚起策が軌道に乗ってくれば、安倍政権下でも行ってきた公共事業への投資や経済界への賃金引き上げの働きかけなど、策が打たれるのではないか。

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