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焦点:米低金利で膨らむドルキャリー取引とドル安の連鎖

森 佳子記者

 9月15日、米低金利で膨らむドルキャリー取引とドル安の連鎖。ソウル市内の銀行で2月撮影(2009年 ロイター/Jo Yong-Hak)

 [東京 15日 ロイター] 米国がゼロ金利政策・量的緩和の早期解除に二の足を踏むなか、投機筋は安価で潤沢なドルを借り入れ、ドルを売って利回りの高い資産に投資するドルキャリー取引を膨らませている。市場ではドルキャリーの進捗に歩調を合わせ、ドル安が進行している。

 オバマ米大統領は米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻から一年の節目となる14日、ウォール街で演説し、危機が収束するに連れて、金融業界では既に投機的な動きが目立ち始めているとの認識を示し、「向こう見ずな行動が許された日々に戻ることはない」と規制強化に向けた決意を示した。しかし、ドルを巡る投機筋の「向こう見ずな行動」は、米国のゼロ金利政策が育んでいる側面も否めない。 

 <リパトリからドルキャリーへ>

 米国際収支統計によれば、米金融機関は2009年第1・四半期に、ネットで909億ドルを国外向けに貸し付けた(資本流出=対外債権増)。18日発表予定の第2・四半期の国際収支でも、対外債権が一段と増加することが予想され、米金融機関を介したドルキャリー取引の活発化が推し量られる。

 ドルキャリーの肥大に合わせてドルは軟調となり、対ユーロでは2008年12月以来の安値1.46ドル後半へ、対円では7カ月ぶりの安値90円割れ寸前まで下落した。

 短期金融市場では、米政策金利であるフェデラル・ファンド・レートは過去1カ月間に平均0.15%付近の低水準に張り付き、3カ月物のドルLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)は0.2950%と過去最低水準を更新した。 

 地域別に見ると、第1・四半期の金融機関の対外債権増加分のうち、約760億ドルが英国向けとなっている。英国は大手金融機関やファンド勢が軒を連ねることから、いったん英国に貸し出された資金が、新興国や商品市場に再投資されていることも考えられる。

 現在、全面安の展開をみせるドルは、今年3月まで堅調さを維持していた。ドル指数で見ると、昨年の12月にかけてほぼ一本調子で上昇したあと、3月上旬にはほぼ2年ぶりの高値を更新している。

 ドルが3月まで上昇トレンドを維持した背景に、昨年4月以降3四半期連続した米金融機関経由の対外債権回収があるとの見方が有力だ。ネットの対外債権回収額は合計で6664億ドルにのぼる。

 債権回収分は米国人によるリパトリであり、「昨年半ばから年末にかけてのユーロの大幅な下落の一因となった可能性が高い」(ファンド・マネジャー)という。

 <米利上げは可能か>

 キャリー取引とドル安の連鎖を断つには、利上げが不可欠だが、エコノミストの間では米国の早期利上げに懐疑的な見方が多い。

 「ドルキャリーは政策金利が低位定着するとの見通しを足場に膨らんでいる」と三菱UFJ証券チーフエコノミストの水野和夫氏は指摘する。

 水野氏によれば、オバマ政権の減税措置で、個人は貯蓄を増加させたが、その大半は借金返済に充当され、結果的に金融機関が支援されるという構図になっている。しかし、減税財源は11月にほぼ底をつく公算が高い。

 オバマ政権は財政刺激策と金融安定の双方で危機に対応してきたが、オバマ大統領は14日、「第2弾の景気刺激策を実施しない強い意向がある」と述べた。

 「金融機関からみれば、なおさら利上げは当分出来ないという予測が立ち、ドルキャリーを一段と推し進める原動力になるだろう」と水野氏は言う。

 米サンフランシスコ地区連銀のイエレン総裁は14日、国内の失業者数が適正水準を大幅に上回っているため、連邦準備理事会(FRB)は当面、金融政策というアクセルに足を乗せておく必要があるとの見解を示した。

 他方、ドル安で資産の目減りを恐れる中国は、米金融政策の早期正常化を望んでいる。

 中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は7月末の米中戦略・経済対話後の記者会見で、FRBが将来のインフレ抑制に向け行動すると人々を確信させる限り、インフレリスクは最小限に抑えられるとの見解を示した。「もし人々が、危機は最悪期を脱したと考え、FRBは将来のインフレ抑制に向け適切な調整を行うと確信すれば、インフレ期待の低下につながるだろう」と周総裁は語った。

 (ロイター日本語ニュース 森佳子 編集 橋本浩)

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