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アングル:マーケティングでも「モバイル戦争」、各社が巨費投入

[ニューヨーク/サンフランシスコ 4日 ロイター] 「広告費というのは、平凡な製品を作ったときに必要になるものだ」───。アマゾン・ドット・コムAMZN.Oのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は、株主総会でこんな冗談を言ったことがある。

10月4日、アップルやサムスンによるスマートフォンやタブレット端末の競争が激化するのに伴い、各社がマーケティングに投じる費用も急増している。写真はサムスンの新型ギャラクシーノートを手にするモデル。ソウルで9月撮影(2012年 ロイター/Lee Jae Won)

あれから3年。アマゾンは現在、タブレット端末や電子書籍端末といったモバイル端末事業を積極的に進めているが、市場調査会社カンターによると、今年1─6月期のテレビ広告費は3400万ドル(約26億7000万円)に上り、その額はさらに増える見通しだ。

マーケティングに多額の資金が投じられる消費者向けテクノロジー事業では、製品が素晴らしいからといってシェアを勝ち取れるわけではない。

アップルAAPL.Oを例に取ってみよう。類まれな技術力で業界に君臨する同社ですら、iPhone(アイフォーン)やiPad(アイパッド)には、これまで約15億ドルの広告費をかけている。

スマートフォンやタブレット端末メーカーのサムスン電子005930.KS、アマゾン、マイクロソフトMSFT.O、そしてその他の企業は、こぞってテレビCMや紙媒体などの広告に巨額の費用を投じている。

年末に向けたホリデー商戦を前に、市場での戦いは熾烈(しれつ)でクリエイティブなものになるだろう。

広告エージェント、ドロガ5の創設者デービッド・ドロガ氏は、「全ての企業が注目を集めようとしている」と話す。米ニューヨークとシカゴでは数カ月前、ビルの側壁に「surface(サーフェス)」と記した謎の落書きが現れた。マイクロソフトが発売を控える、新基本ソフト(OS)「ウィンドウズ8」搭載のタブレット端末「サーフェス」の広告の一環だろうが、それを広告だと同社が認めることはおそらくないだろう。

<目の敵にされるアップル>

ブラックベリーで知られるカナダの老舗メーカー、リサーチ・イン・モーション(RIM)RIM.TORIMM.Oは今夏、アップルにある「いたずら」を仕掛けた。シドニーのアップルストアに黒い大型バスを送り込み、列をつくる客らに向かって「目を覚ませ」と書かれたプラカードを掲げたのだ。

iPhoneやiPadで顧客を引きつけるアップルは、他社にとってねたみの対象だ。

サムスンも、アップルに忠誠を誓うファンたちをからかったテレビコマーシャルを製作し、「iPhone5を求めて店先に並ぶ人はだまされている」といった内容を放送した。ソーシャルメディアのモニター会社ブルーフィンによると、このCMはユーチューブで1600万回も再生され、ツイッター上では放送開始1週間で最もつぶやかれた話題となった。一方でiPhone5のCMは、再生回数が100万回にとどまっている。

サムスンはさらに攻勢を強める見通しだ。カンターの調べでは、サムスンはスマートフォン「ギャラクシー」のテレビ広告費を急増させており、1─6月期で8000万ドルを投入。すでに昨年の全広告費を上回っている。

広告代理店のBBDOノースアメリカでデジタル戦略を担当するマーク・ヒメルズバック氏は、製品の差別化を図るためには「顧客の興味をかきたて、人の心を動かすブランド戦略を展開していくことが重要だ」と指摘する。

<急増する広告費>

調査会社ニールセンによると、スマートフォンやタブレット端末に投じられる広告費は、ここ5年間で2倍、金額にして年間約6億5000万ドルまで急増した。

グーグルGOOG.O、マイクロソフト、アマゾン、サムスンはいずれも具体的な広告費に関してコメントを拒否している。

皮肉なのは、スマートフォンやタブレット端末といった「ニューメディア」の広告が、テレビや出版物といった従来からの「オールドメディア」に頼っているところだ。

デジタル戦略に詳しいマイケル・ウィンター氏によれば、昨年から今年の第2・四半期までのスマートフォンに関する広告は、6割がテレビを通したものだったという。紙媒体での広告は3割、ウェブ広告に至ってはわずか9%だった。

アマゾンは新型タブレット端末「キンドル・ファイアHD」のテレビCMで、あえて製品の詳細を伝えないことによって消費者の好奇心をあおる「ティーザー広告」と呼ばれる戦略を展開した。こうした努力は、いずれ利益として企業に返ってくるだろう。

ブランド調査会社ブランド・キーズのロバート・パシコフ社長は、アマゾンがオンラインショッピングだけではなく、端末機器とそこからアクセスできるコンテンツをPRする努力を重ね、勢いに乗っていると分析した。

<アップルが頼るメディアの力>

だが、ブランドイメージを変えるのは一筋縄ではいかない。例えば、グーグルはネット検索大手としては名高いが、モバイルコンピューティングの分野ではそうでもないとパシコフ氏は語る。

世間一般では、モバイルOSシェア首位の「アンドロイド」がグーグルの製品であるというイメージを持っている人は少なく、このことが同社のハードウエアビジネスの展開に障壁となる可能性もある。

パシコフ氏は、「スマートフォンやタブレット端末の話をする時にグーグルは話題に上がらない」と指摘。グーグルはテレビCMや紙媒体、それに自社の検索ページも使って、新型タブレット端末「ネクサス7」のプロモーションを続けている。

一方、RIMはこの「広告戦争」で苦しい戦いに直面している。

マーケティング責任者のフランク・ボールベン氏は、新OS「ブラックベリー10」搭載の新型スマートフォンについて、メディアなどへの発表は小出しにしていくと話す。発売までは顧客の狙いを定めたリアルタイム・マーケティングを増やし、「店頭販売が始まってから、通信キャリアとともにテレビや屋外での広告といったマーケティングを開始する」という。

これとは対照的に、アップルのテレビキャンペーンは現在進行中だ。同社のマーケティング部門トップを務めるフィル・シラー氏は、サムスンとの特許訴訟の法廷で、自社製品のうわさを広めるために初めに頼るのはメディアだと証言した。さらに、広告を本格的に展開するのは、当初の熱気が冷めてきた時だとも語った。

また、アップルはテレビや印刷物に加え、テレビ番組や映画の中で同社の製品を登場させて露出を高める「プロダクト・プレイスメント」にも多くの費用を割いている。

特許訴訟の資料によると、アップルはiPhoneシリーズに10億ドル、iPadシリーズに4億5700万ドルの広告費を投じてきた。これに対して、メディアの報道に費用は全くかかっていない。

(原文執筆:Jennifer Saba、Poornima Gupta記者、翻訳:梅川崇、編集:橋本俊樹)

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