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コラム

コラム:過激派を弱体化させる「難しい一歩」

[3日 ロイター] - イラクはなぜ、過激派組織「イスラム国」に国土の約半分を明け渡したのか。ナイジェリア北部ではなぜ、イスラム過激派「ボコ・ハラム」が確たる拠点を築けたのか。イエメンでは無人機による掃討作戦が繰り返されているにもかかわらず、なぜアルカイダ系組織が弱体化しないのか。

 2月3日、過激主義を生み出す根源的な問題に本気で歯止めをかける意志があるなら、これまで大きく見過ごされてきた政治的腐敗にまず手を付ける必要があるだろう。写真はシリアのコバニ付近で実施された空爆。トルコのシュリュジュで昨年10月撮影(2015年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

これらの国に共通点を見いだすとすれば、それは政治的支配層の間で腐敗がまん延していることだ。

ここで言う腐敗とは、どこにでも見られるような一時的な金銭のやり取りとは違う。上記3カ国やウクライナ、4年前に「アラブの春」を経験した中東・北アフリカ各国などでは、西側諸国の多くに比べ、国民の間に毒性の強い「腐敗の病」が広がりやすい。

こうした「腐敗の病」は市民の日常生活にも忍び込んでいる。例えば警察官がバスに乗り込んできたとき、乗客は彼らに現金を手渡さなくてはならない。さもなければバスから引きずりおろされ、殴打されるかもしれない。子供の切り傷を病院で縫い合わせる時も、医師に診てもらうためには袖の下を要求される。筆者が知っているウズベキスタン人ジャーナリストは、息子の大学入学の賄賂資金を工面するため、車を売るべきかどうか頭を悩ませていた(入試では高得点だったにもかかわらず)。アフガニスタンでは、爆弾攻撃で命を落とした父親の死亡証明書を取るのに、息子が賄賂を払わなければならないケースもあった。

こうして社会階層の末端で受け取られた賄賂の一部は、支配層に吸い上げられる。これらの国々の政府はとても政府と呼べる代物ではなく、極めて効率的な犯罪組織と言い表すのが一番合っている。

来る日も来る日も金品を巻き上げられ、その間に侮辱や虐待を受け、しかもそうした行為を働いているのが政府の一員であるなら、国民は怒りを募らせるしかない。そして怒りを抱えた国民は、とりわけプライドや希望を打ち砕かれた若い男性は、時として暴力的になる。

過激派組織はこうした怒れる男性(そしてますます多くの女性)に、2つのことを提供する。1つ目は「説明」だ。米ジョージ・ワシントン大学の欧州・ロシア・ユーラシア研究所(IERES)で中央アジア部門の責任者を務めるマーリーン・ラリュエル氏は「世俗的であるために政権は腐敗しているというのがイスラム教主義者たちの主張だ。こうした理屈は以前はそれほど共感を呼ばなかったが、今は違う」と語っている。

言い換えるなら、聖戦主義者らは、腐敗という言葉の曖昧な意味に由来する感情を刺激している。政府の役人たちが不正を働くのは、宗教的義務から逸脱しているからだと主張し、役人の態度を正す唯一の方法は、必要であれば武力を行使してでも厳しい道徳規範を守らせることだとしている。

聖戦主義者が提供する2つ目のことは、怒りのはけ口だ。彼らは若者たちに銃を渡し、傷ついたプライドを取り戻すチャンスを与える。場合によっては命と引き換えになるが、腐敗した政府への不満が非常に強い多くの人にとっては、その価値があるように映る。

オバマ米大統領は繰り返し、「過激思想の源を断つ戦略」を抜きにしたままでは、「終わりなき戦争は自滅を招く結果となるだろう」と強調している。しかし、実際の米国の取り組みはと言えば、イラクでの空爆や関係各国の軍や民兵組織への協力など、依然として大部分は軍事的解決に結びついている。米議会に2日提出された2016年度予算教書での国防予算案は、イランやシリアでの活動に58億ドルを要求している。

テロ組織との戦いで腐敗した政府と手を組むのは(米国や西側同盟国は常々そうしているが)、事態をさらに悪化させるだけだ。西側も腐敗に加担しているという聖戦主義者のプロパガンダを裏付けることに他ならない。そうした政策は、新たに多くのテロリストを生むことになる。

過激主義を生み出す根源的な問題に本気で歯止めをかける意志があるなら、これまで大きく見過ごされてきた政治的腐敗にまず手を付ける必要があるだろう。

*筆者はカーネギー財団の上級研究員。過去にはマイケル・マレン米統合参謀本部議長の特別補佐を務めたこともある。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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