for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:独3%賃上げの背景に企業ブランド戦略、日本に大差

[東京 6日 ロイター] - 「勤勉さ」をともに誇ってきた日本とドイツの経済のあり方に、大きなギャップが生じていることをご存じだろうか。財政赤字の拡大に苦しむ日本を尻目に、ドイツは今年度予算で赤字国債発行ゼロを達成。今年の主要企業の賃上げは3%台に乗せた。

 3月6日、「勤勉さ」をともに誇ってきた日本とドイツの経済のあり方に、大きなギャップが生じている。ドイツで2月撮影(2015年 ロイター/Michael Dalder )

マクロ面の格差には多様な議論があるだろうが、企業活動からみると、ドイツ企業が頑固に「値下げ」を拒否し、ブランドイメージの確立に力を注いでいる点について、日本企業は見習うべきだ。

<46年ぶりに赤字国債ゼロ、ドイツの底力>

第2次世界大戦の終結から70年という節目でもある今年、同じ敗戦国として国内が焦土と化し、生産設備の多くが灰燼(かいじん)に帰した日独両国の戦後の歩みに、多くの注目が集まることになるだろう。

そこから「奇跡の復興」を果たした原動力として、日独両国民の「勤勉さ」が多くの経済学者から指摘されてきた。

だが、ここにきてドイツ経済のパフォーマンスの良さが目を引き、日本経済はかなりの差を付けられている面が多くなっている。

たとえば、国と地方を合わせた債務残高の国内総生産(GDP)比を見ると、ドイツが約70%なのに対し、日本は200%を突破して250%へと向かう動きになっている。ドイツの2015年度予算案では、46年ぶりに赤字国債の発行がゼロになった。

マクロ面での日独ギャップの拡大については、多くの要素が混ざっており、アカデミズムからも有力な研究がまだ出てきていないようにみえる。

ただ、第1次大戦後のハイパーインフレと財政赤字の累増から「強い教訓」を得たドイツと、第2次大戦後に財政破綻とハイパーインフレを経験しながら、そのことがあまり語り継がれていない日本との差は、歴然としているということは言えるのではないか。

<IGメタルが3.4%の賃上げ獲得>

また、リーマン・ショック後にともに大きな落ち込みを見せた経済と企業業績でありながら、賃上げ率にも大きな「格差」が生じている。

ドイツ国内で最大の労組である金属産業労組(IGメタル)は、主要な企業や地域での交渉で今年の賃上げ率3.4%を獲得。自動車大手の一角であるフォルクスワーゲンVOWG_p.DEとは5日に合意した。

一方、日本では連合の要求自体がベースアップ2%以上であり、大手企業の賃上げ率が1%台に乗せれば「御の字」という声も、政府関係者や労組関係者から漏れる。

大幅なベースアップに消極的な経営者の本音には「また、リーマン・ショックのような大波が来た場合、固定費を増やすと経営の死命にかかわる」(大手企業幹部)という部分があるようだ。

<日本企業の弱点、値下げ対応>

政策当局の一部には、経営者にデフレマインドが残っており、期待インフレ率が2%にアンカーされるようになれば、2%プラスアルファの賃上げが常態化するようになるとの声もある。

ただ、大企業の経営者の中にも、将来にわたって売上高が右肩上がりで推移する自信がない、という心理もどうやらあるようだ。

その原因の1つに「国内企業同士の過当競争とその結果としての値下げマインド」(大手企業幹部)を挙げる声がある。

値下げでシェアを維持するという手法が、短期的な経営の落ち込みを回避するのに、最も手っ取り早い手法であるという認識が、かなり広がっているとみられる。

対照的に欧州の大手企業は、ブランドイメージを大切にし、販売価格の引き下げをかたくなに拒否し、値下げ競争から一線を画しているところが多い。

中でもドイツ企業には、ベンツを生産するダイムラーDAIGn.DEのように、「高品質」に見合った「価格の維持」にこだわっているところが目立つ。

<見習うべきブランド戦略>

たとえば、このところの円安で欧州の自動車メーカーは、日本での円建て販売価格を値上げしている。「ユーロ高/円安」で円建て価格を維持すれば、ユーロでの手取り価格は減少するが、そういう選択肢はとっていない。

それでも、欧州車の中には、販売額を増加させているところもある。今年1─2月の国産車の販売台数は軒並み前年同期比で大幅マイナスとなっているが、メルセデスベンツは同プラス7.8%と伸ばしている。

高くても売れるのは、日本国内の富裕層が、品質に見合った価格帯の設定を支持しているからではないか。「ベンツ」のブランドに対し、日本の富裕層がその価値を認めているのは、「ブランド戦略」の勝利と言えるだろう。

ブランド力で販売価格を維持できれば、求めている利益率も達成しやすくなり、設備投資、研究開発、人的投資により資金をつぎ込めるという「好循環」を作りやすくなる。

一見すると地味だが、こうした努力を着実に積み上げてきた企業と、値下げでシェアを維持するだけの企業との間には、大きな差がつくということではないか。

内部留保を積み上げているだけでは、「無能」のレッテルを張られるということに、ようやく多くの企業経営者が気付いてきた。だが、「ブランド力の開発・強化」というより高いハードルを越えようというチャレンジングな経営者は、まだ少数派のようだ。

この状況が変わった時に、日本の賃上げ率がドイツを追い抜くことも可能になるだろう。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up