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コラム

コラム:菅・黒田コンビ、上々の滑り出し 最大リスクはコロナ再拡大

[東京 18日 ロイター] - 日本のマクロ政策を決める菅義偉首相と黒田東彦総裁のコンビにとって、最大のリスク要因は新型コロナウイルスの再拡大だ。緊急事態宣言の再発動を検討するような事態に直面すれば、大規模な財政出動だけでなく、日銀にとって最後の切り札かもしれないマイナス金利の深掘りも視野に入るだろう。高支持率で発進した菅首相と市場を平穏化させた黒田総裁にとって、コロナの不確実性は目の前に迫る「暗雲」と映っているのではないか。

9月18日、日本のマクロ政策を決める菅義偉首相と黒田東彦総裁のコンビにとって、最大のリスク要因は新型コロナウイルスの再拡大だ。写真は都内で10日撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

<申し分ないスタート>

18日の国内メディアは、菅新内閣の支持率が60─70%台の高水準であると報道した。支持する理由に「人柄が信頼できる」が上位に入り、「たたき上げ」の経歴が好感を持たれたとみられる。

一方、日銀も企業への資金繰り支援や国債の無制限買い入れなど3つの柱で市場の不安心理を払しょく。黒田総裁は17日の会見で「ひところの市場の緊張は緩和されている」と指摘した。安倍首相・黒田総裁に代わる菅首相と黒田総裁の新コンビは、「上々の」滑り出しを見せたのではないか。

<景気失速懸念、財政・金融で対応>

現在の世界経済と日本経済をみると、製造業を中心に4月・5月ごろの最悪期を脱し、ペントアップ需要で生産と輸出は回復傾向にある。一方、人と人との接触がビジネスの中心である旅行、宿泊、飲食などの業態は、回復のテンポが鈍く、7、8月に入っても前年の売り上げ水準にいつ到達するのか全く分からない状況が続いている。

このため政府は今年度2次補正予算に計上した10兆円の予備費の支出に加え、景気下支えのための第3次補正予算の編成も念頭に、今後の景気状況を注視しているようだ。この際の財源は赤字国債の発行となり、数兆円規模の新規国債がまとまって市場に出てくれば、相応の反応が予想される。

ここで日銀は、長短金利操作付き量的・質的金融緩和(YCC)の枠組みの中で、長期金利が上昇しそうになれば、ゼロ%付近で推移させるとの方針の下で、淡々と国債を市場経由で購入する。その結果、為替も円高に振れず、株価も財政出動という「プラス」面だけを消化でき、景気悪化による株安という事態も回避できる。ここまでは、政府・日銀が「読み切っている」展開だろう。

<コロナ危機の再来なら、雇用不安増大へ>

ところが、新型コロナが今年秋から冬にかけて再び、猛威を振るうようになると、事態は一変する。今のところ、国内における感染拡大の2つ目の山はなだらかになりつつあるが、17日の東京都のモニタリング会議では、今後感染の急速な増加が危惧される状況との分析結果が公表された。年末にかけたコロナ感染のリスクについては、決して楽観できない状況と言える。

もし、緊急事態宣言を再び出すかどうか、政府が本格的な検討に入るような重症者と死者の増加、病床不足が顕在化するようなら、国民の不安心理が再び4月、5月ごろのように強まっているに違いない。

その場合は、需要の減少を起点にして生産減少・在庫積み増しが表面化する一方、サービス業の需要が急減し、中小・零細企業の中には経営破綻や廃業を選択するところが増加し、一気に雇用環境が悪化する事態に直面すると予想される。

17日の会見で、黒田総裁が「雇用の状況を含めて、健全な発展を目指すのは当然。そういう観点から必要に応じて追加的な緩和措置も十分検討しうる」と述べたが、コロナ再拡大による雇用悪化が深刻化するなら、日銀も追加緩和にかじを切ることになるだろう。

<最悪のシナリオは、円高とのダブルパンチ>

さらに米国の状況も気になる。失業保険の積み増しが7月末で切れ、消費の鈍化が顕在化しつつある。しかし、共和・民主両党の意見が一致せず、このままでは「財政の崖」に直面しかねないとの指摘が米国内の専門家から浮上。16日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見でも、財政出動の重要性が強調された。

そこに米国ではコロナ感染者の増加が止まらないという現象も加わっており、このところ振れ幅が大きくなっている米株式市場が調整局面に入った場合、政府・日銀が最も懸念する円高が襲来するリスクも出てくる。

国内のコロナ再拡大と円高のダブルパンチというのが、最悪のシナリオだと考える。そのケースでは、自民・公明両党の与党内からも、10%の消費税率引き下げを求める声が出てくる可能性がある。2021年10月に衆院議員の任期満了を控え、景気の失速に与党議員から悲鳴が出かねないからだ。

日銀もドル/円JPY=EBSに100円割れのリスクが出てきた場合、マイナス金利の深掘りを検討するかもしれない。その前の段階で、フォワードガイダンス強化などの手を打って、円高を止めることができていれば「最終兵器」を使用せずに済むが、コロナの打撃と円高のマグニチュード次第では、どうなっているのかわからないだろう。

さらに永田町の大きな関心事である衆院選の時期も、一部でうわさされた10月25日、11月1日を選択しないなら、次は来年度予算案編成後の1月がラストチャンスになりかねない。6月の東京都議選、7月の東京五輪と主要な予定が並び、衆院解散の日程的な余裕がないからだ。来年1月にコロナの感染者が増加し、衆院解散ができないなら、任期満了かそれに近い時期の解散に追い込まれるリスクが浮上する。コロナの再拡大は、菅首相にとっては政治的にも大きな「脅威」になる危険性がある。

菅・黒田コンビが乱気流に巻き込まれるかどうかは、コロナ次第という極めて不確実な要因によって大きく左右される。

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編集:石田仁志

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