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ブログ:縮むソニー、いでよ「ヒット商品」

村井 令二

写真はソニーの平井一夫社長。先月7日、米ラスベガスでの家電見本市「コンシューマー・エレクトロ二クス・ショー」にて(2013年 ロイター/Steve Marcus)

ソニー6758.Tのエレクトロニクス事業黒字化は、今期も厳しい。同社の平井一夫社長は「カニバリゼーションは常に意識している」と、スマートフォン(多機能携帯電話=スマホ)の販売拡大でゲーム機やデジタルカメラの販売が目減りする現象を指摘する。

いまや、スマホ1つで、デジカメ、ビデオカメラ、ゲーム機、音楽プレーヤー、ポータブルナビゲーションの機能をすべて内包している。にも関わらず、スマホの価格は、それぞれの機器とほとんど変わらない。これが、ソニーにとっては売上高の目減りを招く。

スマホ本体の強化としては、同社が今春に投入する「エクスペリアZ」が、テレビやオーディオ機器にかざすだけで瞬時に映像や音楽を転送できる技術をアピールしている。だが、スマホ市場で韓国サムスン電子005930.KSと米アップルAAPL.Oの2強に対抗するのは至難の業だ。実際に平井社長も、スマホ市場では「現実を直視する。短期的には世界3位を確実にねらう」とのスタンスで、ソニーの再起の難しさを物語っている。

平井社長が就任して9カ月。いまだソニーは、リストラや事業・資産の売却など財務対策ばかりが目立つ。ソニーがこの泥沼から抜け出すには「ヒット商品」を出すことしかないだろう。ウォークマンを生み出したこの会社に対する世の中の視線は、そこに集約されている。

ソニーOBで有力技術者として知られた前田悟氏は、タブレット端末を先取りした「エアボード」を「iPad(アイパッド)」より10年早く開発するなど革新的な商品をソニーで生み出してきたが、ソニーに限らず日本の家電メーカーに対しては「商品企画力が欠如している」と手厳しい。同氏によると、家電メーカーの歴史に残る新商品には、法則が2通りあり、1つは従来の商品を「リプレイスする商品」、もう1つは従来の商品と「併存する商品」だという。

前者の商品の例は、レコードに取って代わったCD、フィルムカメラから置き換わったデジカメ、ビデオデッキに取って代わったDVDやブルーレイディスク、ブラウン管から置き換わった液晶テレビなど。一方で併存する商品の代表がウォークマンだ。従来のステレオ機器と併存しながら、携帯音楽プレーヤーの新市場を創造した。

前者はすでに市場が存在しているが、後者は新たな市場を作り出す。携帯電話は、固定電話と併存しながら新しい市場を作ってきたのに対し、アップルの「iPhone(アイフォーン)」で人気が爆発したスマホは携帯電話のリプレース商品。だが、スマホについては少し事情が異なる。すでにソニーで起こっている現象の通り、1つの商品の置き換えにとどまらず、デジカメ、ビデオカメラ、ゲーム機などさまざまなデジタル機器の市場を次々と飲み込みながら、巨大な市場を形成している。

年明けからアップルのアイフォーン5の減速が伝えられている。市場内でのシェア変動は確かに起こりうるだろうが、スマホはもはや既存市場だ。この中での3位争いだけでは復活のチャンスはなかなか見込めない。ソニーは、スマホを置き換える商品に挑戦できるのか、それともスマホと併存する商品を開発し、新市場を作り出すことができるか。待たれているのは「ソニー発の画期的な商品」だろう。

ソニーの歴代トップは、創業者の井深大氏がテープレコーダーやトリニトロンテレビ、盛田昭夫氏がウォークマン、大賀典雄氏がCDなど自らのリーダーシップで商品を世に出してきた。井深氏は、電気釜の開発など失敗も伝えられているが、これも商品そのものに徹底して向きあったエピソードだろう。アップルの故スティーブ・ジョブス氏のデザインに対する徹底したこだわりは語り継がれている。

「私も商品が大好きだ」と語る平井社長は、新商品の開発に向けては、社長直轄のプロジェクトチーム、事業部の壁を取り払ったマネジメントのチームワークを強調する。さらに「厚木の研究所にも足を運び、商品や技術をみせてもらって、『これはいいね』と商品を熱く語って徹底して議論している」と述べている。ヒット商品という成果を出す時期がいよいよ問われる。

(東京 22日 ロイター)

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