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ブログ:長期金利はなぜ上がったか

写真は先月24日、都内証券会社の株価ボード前を歩く人々(2013年 ロイター/Issei Kato)

志田 義寧

長期金利が落ち着きどころを模索している。投資家の「押し目買い」目線は明らかになりつつあるが、ボラタイルな展開が続く中で、積極的な買いは手控えられている。長期金利に上昇圧力がかかっている理由はいったい何なのか。ロイターが毎週実施しているJGB調査から探ってみた。

ロイターは2011年からJGB市場関係者を対象に「週次JGB調査」を実施。質問内容は、1)今週末の長期金利は上昇/低下/横ばい、2)その判断理由(株価、為替、需給、欧米金利、景気、物価、金融政策、財政などから選択)──などで、毎回20─30人が回答を寄せている。

長期金利に上昇圧力がかかったのは、日銀が「量的・質的金融緩和」踏み切った4月4日以降なので、この間の長期金利を予想する上での判断材料を調べてみた。

まず「物価」だ。アベノミクスを受けてブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)が急上昇したのとは対照的に、判断材料として「物価」を挙げる回答者はゼロ─4.2%にとどまっており、回答者が今後の物価上昇についてかなり冷めた目で見ている様子がうかがえる。

「景気」はどうか。4月8日調査では3.7%にとどまっていたが、4月30日調査では19.2%まで急上昇。一瞬「景気回復による長期金利上昇」期待が高まったようにみえたが、その後は4.2─13.3%に再び低下しており、判断するにはもう少し時間がかかりそうだ。

こうした中、他の要因を大きく引き離し、4月4日以降に実施された8回の調査のうち7回トップとなった項目がある。「需給」だ。本来ならば日銀の大規模購入で需給が引き締まり、長期金利の低下要因となるが、コメントでは逆に流動性低下による「ボラティリティの上昇」を懸念する声が相次いだ。

判断材料ごとに過去8回の選択パーセントポイントを足し合わせると、トップが「需給」の509%ポイントで、以下「金融政策」の391%ポイント、「欧米金利」の252%ポイント、「株価」の236%ポイントと続いている。「景気」は79%ポイント、「物価」は15%ポイント、「財政」は17%ポイントだった。

長期金利の上昇をめぐっては「アベノミクスにより、景気・物価に対する目線が上がった自然な流れだ」「いや、日銀の大規模国債買い入れで流動性が極端に低下したためだ」「やはり米金利が上昇した影響が大きい」といった市場参加者の声が聞かれたが、ロイターJGB調査からは物価でも景気でもなく、ましてや財政懸念でもなく「流動性低下によるボラティリティ上昇が主因」という姿が浮かび上がる。

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