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ブログ:日本のギリシャ化回避は可能か

中川 泉

写真は2011年6月、アテネで撮影(2014年 ロイター/Pascal Rossignol)

日本の財政赤字を補填する源泉となっている経常黒字。その「黒字神話」が陰りを見せる中で、日本がギリシャ化するのではないかとの古くて新しい議論が、再び俎上(そじょう)にのぼっている。

2013年暦年で日本の貿易赤字が11兆円台と過去最大を記録。さらに経常収支も昨年10月、11月の実績値が赤字となり、未発表の12月、今年1月の数字も赤字になりやすい月だけに、4カ月連続の経常赤字に陥る可能性も出てきたためだ。

比較可能な1985年以来10兆円から20兆円台で推移してきた年間経常黒字が、13年は4兆円にも満たないことになりそうだ。

企業間でも財政危機への不安は強い。欧州のような財政危機が日本で発生する可能性があるかについて、ロイターが国内企業400社を対象に今月調査したところ、10年以内に発生するだろうとの回答が6割に達し、10年以上先に発生もしくは発生しないとの回答4割を上回る結果となっている。

とはいえ、経済規模や、財政を支える金融資産の裏付けなどのデータで比較すれば、日本がギリシャ化することは考えにくいように思える。

財政赤字のGDP比率はギリシャが09年に14%まで上昇したのに対し、日本は14年末見通しで8.5%と相対的に低い。政府債務の家計金融純資産に対する比率は、ギリシャが08年に220%だったのに対し、日本は90%程度と、辛うじてまだカバー可能な状態にある。

経常黒字が激減していても、年間で赤字に陥る可能性は極めて小さい。なんといっても日本では国債の金利が極端に低く、誰も国債の信用性を疑っていないかのようだ。

しかし欧州財政危機に詳しい国際金融筋は、「経済データだけに頼った判断では不十分。ギリシャ化しかねない最大の問題は、日本人のメンタリティーがギリシャと酷似している点だ」とみている。

欧州でも指折りの富豪や資産家が少なくないギリシャでは、財政危機の初期段階において「国内資産でなんとかなる」との発想が蔓延していたという。さらにそれが背景となって、政府にも債務残高を自ら何とかしようという強い意志が欠落していたのは誰の目にも明らかだった。日本にとっても、他人事ではない話に思える。

「メンタリティーの緩みによって、経済データの優位性は気づいたときには覆えっていることがある」と先の国際金融筋は指摘する。

日本の財政に対する自己規律が相対的に緩いことを証明する良い例がある。リーマンショック後の財政収支の悪化は先進国共通だったにも関わらず、08年以降14年までの改善ペースは先進7カ国中、日本が最も遅い。

加えて債務残高の規模がずば抜けて巨額であることも不安を誘う。債務残高GDP比は11年にギリシャが134%、日本は14年度末見通しで202%、金額にして1000兆円と、08年当時のギリシャ債務残高0.3兆ユーロ(42兆円程度)とは比較にならない。

そして日本の最大の弱点は、援助の手を差し伸べてくれる仲間がいないことかもしれない。ギリシャにはユーロ圏という援助を頼める仲間、言い換えれば、援助せざる得ない立場の国々がいた。

財政危機に陥った日本が、国際通貨基金(IMF)に対して、たとえ厳しい指導と引き換えに援助を仰いだとしても、この国の巨額の債務には焼け石に水ということもあり得る。「日本はギリシャと違って孤立無援なのだと自覚した方がよい」との国際金融筋の指摘はその通りだろう。

安倍政権は、まずは経済の好循環を実現することを優先し、税収増を通じたルートで財政再建を目指すとしている。それはそれで一つのやり方として評価できる。ただし、社会保障費を主因とした歳出の自然増が避けられない以上、債務削減の努力をするメンタリティーがなければ、ギリシャ化する日は近づくだろう。仲間のいない日本にとってはギリシャよりも悲惨な展開が待っているかもしれない。

(東京 29日 ロイター)

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