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ブログ:黒田総裁の泰然自若

竹本 能文

写真は3月20日、都内で講演する黒田東彦日銀総裁(2014年 ロイター/Yuya Shino)

一部日銀ウォッチャーの間で、黒田東彦総裁の泰然自若とした姿勢が話題になっている。

市場には追加緩和期待が根強いにもかかわらず、物価は目標の2%を目指して順調に上昇しているとの強気な発信が続いており、微動だにしない風情だ。そして、黒田総裁が「次の一手」に容易には踏み切らないと考えられる材料も多い。

黒田総裁は3月の金融政策決定会合後の記者会見などで「日本経済が完全雇用に近い」と述べた。日銀関係者によると、円安効果がはく落し、輸出の低迷が続いても物価が上がり続けることを強調するのが趣旨という。しかし、完全雇用に近づけば理論上、物価はするすると上昇ピッチを加速する。物価が順調に上昇するのではなく、上振れてしまうリスクもなんとなく連想されなくもない。

もっとも、消費増税による実質所得の減少が景気を下押しするのは必至ななかで、2%の物価目標が実現できるとの見方は市場には少ない。黒田総裁は、シナリオが下振れれば追加緩和を辞さない姿勢を繰り返し示しているが、増税後は世論がデフレ脱却よりもインフレを懸念し始めるとの指摘もある。

日銀は消費増税による影響を除いたベースで2%を目指すとしている。しかし、一般消費者の目には物価は税込で表示されるため、4月以降は前年比で3%台上昇していると映る。日銀がさらなる物価上昇を目指す姿勢について、世論の風向きが変わる可能性はある。

元財務次官で日銀副総裁の武藤敏郎・大和総研理事長が、「(物価目標2%)達成期限の2年を延長する議論が秋にも始まる可能性が高い」と繰り返し発信し始めたのも先を読んでのことだろう。

そもそもリーマンショック以降、日銀に対して追加緩和期待が続いたのは、急激な円高に産業界が苦しんだからだ。日銀に対する圧力は、1)産業界の円高是正要望、2)政府・与党・金融業界の株価上昇期待、3)政府の長期金利安定期待、に分けることができる。このうち1)と3)について日銀は満額回答しており、現在も強い緩和期待を抱いているのは政府・与党と証券業界が中心と言える。

黒田総裁は3月下旬ロンドンでの講演で、日本の15年間のデフレについて、毎年の物価下落率が平均どの程度だったか尋ねる形で、マイナス0.3%と説明した。「緩やかな下落であれば問題がないかというと、そうではない」と説明したものの、デフレと言えば大恐慌などの2ケタの物価下落が想像されることも多い海外で、日本のデフレは緩やかなものだったと説明した趣旨は何なのだろうか。

(東京 31日 ロイター)

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