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フォトログ:へき村医療改善へ、助産師目指すアフガンの若い女性

[フォラディ渓谷(アフガニスタン) 7日 ロイター] - 柔らかく輝く雪に覆われた山並みが囲むアフガニスタン中部バーミヤン州の小さな村で、アジザ・ラヒミさん(35)は昨年生後まもなく亡くなった息子のことを今も嘆いている。難産にもかかわらず、何の医療措置も受けられなかった。

 バーミヤン近辺のいくつかの村は、助産師としての研修を受けさせるため、40人の若い女性を2年間州都に派遣した。研修を終えた後、郷里の村に戻る予定だ。写真はバーミヤンの病院で2日、子どもに服を着せる女性(2023年 ロイター/Ali Khara)

「赤ん坊が死んでしまったときはひどくつらかった。母親として9カ月間、自分の身体の中で大切に育んできたのに死なせてしまった。つらすぎる」

アフガニスタン・バーミヤン州フォラディ渓谷で、自宅に立つラヒミさん。3月2日撮影(2023年 ロイター/Aki Khara)  

バーミヤン州フォラディ渓谷にあるこの村は、人里離れた荒削りな美しさをたたえてはいるが、妊産婦にとっては、それが命に関わる障壁となっている。村へと続く狭い道路を走る車はほとんどなく、雪で通行不能になることもあり、病院や診療所、訓練を受けた医療従事者のもとに駆け込むためのライフラインが途絶えてしまう。

だが、ひょっとしたら命を救うことにつながる改善が進んでいる。ラヒミさんの村をはじめ、バーミヤン近辺のいくつかの村は、助産師としての研修を受けさせるため、40人の若い女性を2年間州都に派遣した。研修を終えた後、郷里の村に戻る予定だ。

アフガニスタン・バーミヤン州を囲む雪に覆われた山並み。3月2日撮影(2023年 ロイター/Aki Khara)

医師や援助関係者は、出産の際に何か問題が生じた場合、孤立はそのまま死につながる恐れがあると指摘する。それが一因となって、アフガニスタンの非常に高い妊産婦・新生児死亡率は世界最悪の水準にある。

国連の推定では、アフガニスタンでは2時間に1人のペースで妊娠中・出産時の女性が死亡しており、同国の妊産婦死亡率はアジアで最も高い数値となっている。

病院で女性を検査する助産師研修生。バーミヤンで3月2日撮影(2023年 ロイター/Aki Khara)

助産師育成プログラムは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、アフガニスタン国内の慈善団体「ワタン社会技術サービス協会」と共同で進めるものだ。両者はこのプログラムを広げていきたいとしており、隣接するダイクンディ州でも実施されている。

2021年に権力を奪還して以来、イスラム主義組織タリバン当局は女性の大学進学や大半の慈善関連職への就業を禁止したが、医療セクターは例外とされている。UNHCRによると、地元の保健当局もプロジェクトに好意的だという。

<ロバ頼みの場合も>

UNHCRバーミヤン支部を率いるモハマド・アシュラフ・ニアジ氏は、「道路が通行不能になれば、もちろん移動の手段はない。患者を診療センターに運ぶためにロバに頼ることさえあるが、それすら無理な場合もある」と語る。

ラヒミさんにはすでに5人の子どもがいる。4カ月前、妊娠9カ月の時点で、陣痛に耐えつつロバに乗るというのは論外だったと話す。夫は妻を病院に運ぶため車や救急車を探したが見つからず、出血もある中で、よろめきながら2時間かけて義父母の家にたどり着き、そこで出産した。

産後まもなく、赤ん坊は死亡した。救急車が到着したが手遅れだった。

一方、バーミヤン市の主要病院では、出産する女性の状況は非常に異なる。スタッフの脇では見習い助産師が働き、指導員のもとで、妊産婦の状態評価・指導、分娩(ぶんべん)、産後ケアについて学ぶ。

毎日2時間歩いて病院に通う23歳の研修生は、「勉強して、村の人たちのために働きたい」と話した。UNHCRは安全のため氏名を明かさないよう研修生に指示した。

助産師研修生に講義をする教師。バーミヤンで3月2日撮影(2023年 ロイター/Aki Khara)

ある小規模な臨床診療所では、外で数十人の女性が順番を待っている。見習い助産師が1人の女性に、絵入りのパンフレットを使いつつ、出産に備えてどのようなことが予想されるか説明している。訓練を受けた医療従事者が2人、注意深く見守っている。

合併症のリスクがある女性は、近くにある建物の妊産婦病棟に入院する。ここでは、別の見習い助産師が、感染症にかかった妊婦の血圧を測定している。6時間前に出産した母親と、その脇で眠る生まれたばかりの女児の様子も定期的にチェックしている。

見習い助産師の中には、自分にも小さな子どもがいる場合がある。多くは移動手段や費用の面で困難を抱えており、プログラムに参加するために長距離の移動を強いられる、あるいは自宅から遠く離れて暮らす人もいる。

18カ月の息子がいる20歳の研修生は、「最初は、看護を学びたいとか助産師になりたいという気持ちはなかった。でも、妊娠中に問題があってつらい思いをしたことで、助産師の勉強をしたいと思うようになった」と語る。村で妊産婦ケアを受けることは難しかった。へき地で暮らす女性や家族の多くにとっては、安全な出産を準備するために必要な情報も支援もない、とこの研修生は言う。

「こうした考え方を変えなければならない。私はへき地に行って、問題を抱えている女性に対応したい」

(Mohammad Yunus Yawar記者、Charlotte Greenfield記者、翻訳:エァクレーレン)

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