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フォトログ:中国北西部、地道な植林は砂漠化を押し戻せるか

[武威(中国) 3日 ロイター] - 午前中、ゴビ砂漠の周縁部の砂丘で苗木を植える作業に汗を流した農家のワン・ティアンチャンさん(78)。小屋から3本の弦を張った楽器を取り出すと、真昼の灼熱の太陽の下、演奏を始めた。

 午前中、ゴビ砂漠の周縁部の砂丘で苗木を植える作業に汗を流した農家のワン・ティアンチャンさん(78)。4月15日、甘粛省武威郊外で撮影(2021年 ロイター/Carlos Garcia Rawlins)

「三弦(サンシェン)」と呼ばれる楽器を弾きながら、ワンさんは「砂漠と闘いたいなら、恐れる必要はない」と歌う。彼は、中国が長年にわたって続けてきた「原野開拓」運動のベテランである。

植林のイベントに参加する子どもたち。

ここ数十年、中国による環境問題への取組みの柱となっているのは、植林だ。国境近くの荒涼とした砂漠や沼地を農地へと転じ、モンゴルから中国北西部にかけて130万平方キロにわたって広がるゴビ砂漠から吹き付ける黄砂から首都・北京を守ることが狙いだ。天安門広場は、春になると毎年のように砂埃に覆われる。

だが今年3月、北京が6年ぶりの規模となる大規模な砂嵐に見舞われたことで、これまでの植林の取り組みに厳しい目が注がれている。植林に適した土地がますます不足するなか、もはや植林では気候変動の影響を相殺できなくなっているのではないか、と。

中国北西部の甘粛省では、今や地元では有名人になったワンさんとその家族が、毎年、省都・蘭州からバスで大挙してやってくるボランティアの若者の先頭に立って砂漠に向かい、苗木を植え、新たに植えた木と低木の茂みのために水を引いている。

辺境の土地を再生させようという骨の折れる仕事は、模範として称賛され、ワンさんらは砂漠を押し戻す役割を称える政府の宣伝ポスターにも登場している。

木の枝を切るワン・インジさんとジン・ユーシウさん。

俗に「緑の長城」プロジェクトと呼ばれる「三北防護林計画」により、1949年には10%に満たなかった中国の森林被覆率は、この40年間で25%近くにまで上昇してきた。

だが北西部の辺境地帯では、植林は、単に森林再生の国家目標を達成する、あるいは北京を砂嵐から守るというだけの話ではない。最も辺境に近い農地で生計を立てるには、1本の樹木ややぶ、わずかばかりの草地でも重要だ。気候変動によって気温が上昇し、水の供給がさらに厳しくなっているとなれば、なおさらだ。

「森林が拡大すれば、ますます砂漠に食い込んでいき、我々にとって好都合になる」と語るのは、ワンさんの息子のインジさん(53)。彼は病み上がりの父に代って、重労働の農業・植林の仕事の多くを引き継いでいる。

<砂を止める>

年季の入ったジープに給水タンクを積み、大きな中国国旗をなびかせながら、ワンさん一家は起伏のある砂丘地帯で、「フアバン」と呼ばれる華奢なイワオウギを植えていく。

イワオウギは、砂漠の厳しい条件の下でも80%の定着率を誇る。砂が農地近くに迫るのを食い止めるべく、砂漠の斜面に均等な四角形に低木や草を植えていく、その作業を地元では「砂を止める」と表現している。

苗を手に持つリー・ランインさん。

ワンさん一家は1980年、内モンゴル自治区との境界線にほど近い、甘粛省武威市のホンシュイ村近郊の不毛な土地に定住して以来、砂漠化の進行と戦ってきた。

現在、ワンさん一家が暮らす住居は、ルバーブの畑と松やトウヒの並木に囲まれている。メーメーと鳴き声を立てるヤギ20頭は、貴重な植生を食い荒らさないよう、木の柵で囲われた放牧地に入れられている。

1.6ヘクタールの農地の一方は約10年前に植林された森に守られ、他方は長く伸びる砂の絶壁に面している。

木を移動させる作業員。

森林は地元経済において重要な役割を果たすようになった。ホンシュイ村の大部分を占めるのは、国有の大規模な商業林だ。

インジさんは、国家主導の森林再生イニシアチブに触れ、「植林が加速した1999年以降、状況ははるかに改善された」と語る。「トウモロコシは以前よりよく育つようになった。かつては東、北東から吹き付けてきた砂も食い止められた」

専門家によれば、中国の森林再生への取組みは年月を経て巧みになってきているという。政府は数十年もの経験を活かし、数千人の植樹ボランティアを動員し、ワンさん一家のような最前線の先駆者たちを模倣させている。

だが、この闘いが終わるのはまだ当分先になると専門家は言う。気候変動によって、北部の乾燥地帯で暮らす農家にとっては条件が悪化しているからだ。

持続可能な森林管理を推進するNPO森林管理協議会(FSC)で中国担当ディレクターを務めるマー・リチャオ氏は、「彼らは数世代にわたって似たような条件のもとで暮らしてきた」と語る。「だが、気候変動は全く新しい要素だということは強調したい」

<土地利用をめぐる対立も>

中国は昨年23%だった森林被覆率を、2025年には24.1%に引き上げようと計画している。だが、森林の順調な拡大の裏には、多くの問題が潜んでいる。

北京大学で森林の研究を専門とする保全生物学者フア・ファンギュアン氏は、「一部の地域では樹木の生存率が比較的低く、地下水の枯渇をめぐる議論もある」と語る。

手作業で「砂を止める」ための対策を施すワン・ティアンチャンさんと家族。

内モンゴル自治区の行政府は、新たな植林用地の確保に苦労しており、2019年には、中央政府が設定した森林被覆率の目標を達成するために農地を接収していたとして批判を浴びた。また一部の研究によれば、天然林を犠牲にして、ゴムの木などの単一品種による人為的なプランテーションが生じているという。

フア氏は、「土地利用をめぐる圧力は、中国に限らず、世界全体の問題だ」と語る。「我々は、何百万ヘクタールもの森林を再生するという目標を掲げる。しかし人口の増加を考えると、そこに競争と対立が生じる」

自然を尊重したアプローチによる植林へのシフトも徐々に進んでいるとはいえ、中国は森林再生の目標達成に向けて、政府の支援による産業規模の植林に頼っており、土地利用をめぐる競争はさらに深刻化している。

陽関の農場に植えられた新疆ポプラ。

生態系への過剰な負担を是正することを意図した政府支援による植林農場の1つ、敦煌市郊外における1700ヘクタールに及ぶ「陽関プロジェクト」は、賛否の分かれる結果となった。

借地人らは、利益率は高いが生育のために多くの水を必要とするブドウを植えたいと考え、2017年に森林のかなりの部分を整地してしまった。政府による調査チームは今年3月、当局が保護対象の森林でブドウを栽培することを認めたのは規則違反だと判断した。また村民は違法な伐採を行ったとして罪に問われ、当局は不法占拠された土地を回収するよう命じられた。

この計画の担当者らによれば、わずか4日間で38ヘクタールに3万1000本の木を植えるため、近日中に何百人もの政府機関職員が来る予定だという。あるマネジャーによれば、残っているブドウ畑も徐々に樹木に置き換えられる。これにより、数百人もの農家が影響を受けることになる。

森林管理協議会のマー氏は、「政府と農家は、収入を確保すると同時に、水資源を圧迫しないような道を協力して探るべきだ」と語る。

中国が過去の失敗から学んでいる兆候も見られる。かつては、既存の生態系や気象条件を考慮することなしに(多くは軍用機から種子を散布する方法で)植林が行われ、結果的に根付きもしないという事例もあった。

しかし現在では、政府もどのような樹種を植えるべきか慎重になっており、人工的なプランテーションを作り出すよりも、天然林が拡大する余地を残そうという志向が強まっている。

専門家によれば、新たな植林により水資源への圧迫が強まるという懸念に対処するため、森林委員会では北西部における戦略を再考する用意もあるという。

だが地方政府には経済成長と食糧供給の確保を求めるプレッシャーがかかっていることもあり、中国の植林は収穫逓減の局面に近づきつつあるとも言えそうだ。

マー氏は、「大規模な森林再生プロジェクトのために残された場所はそれほど多くない。森林被覆率を実際に増やすことはますます困難になりつつある」と語る。

<進行する気候変動>

マー氏は、3月に北京を襲った砂嵐は、植林の失敗を意味するものではなく、気候変動による影響を相殺するには、もはや植林だけでは十分ではないことを示している、と語る。

砂嵐の中、北京のバス停に立つ人々。

「正直なところ、木がこの状況を改善できるとは考えていない」と同氏は言う。

中国国家環境監視センターのリ・ジアンジュン氏は、先日行われたブリーフィングにおいて、モンゴルおよび内モンゴル自治区では2月以来の気温が平年より2-6度高く、融雪により風にさらされる砂が増えたと述べている。

武威市の農家の一部は、数十年にわたって砂漠を征服しようと試みた後、希望を失いつつある。

家の外に立つディン・インフアさんと夫のリー・ヨンフさん。

牧羊農家のディン・インフアさん(69)はロイターに対し、砂嵐があまりにも激しく、目を開けていられないときもあると語る。

さらに、植林にもかかわらず、ここ数年は春・夏の降水量が減少した結果、牧草地が荒廃しているという。

「雨が降らなければ全然ダメ。農地を持っているわけではないから、他に道はない。羊を育てるしかない。2015年と16年は雨が降ったが、その後はどうにもならない。今年も、9月まで待たなければ」と彼女は言う。

ヒツジに与えるトウモロコシを準備するヨンフさん。

夫のリー・ヨンフさん(71)は、植林は結局のところ何の効果もなかったと思っている、と語る。

「砂は今も移動している。これはどうにもならない」とリーさんは言う。「風が吹くときは、たいていは本当に強く吹く。誰にも止められない」

(翻訳:エァクレーレン)

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