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コラム

コラム:中国不動産市場が直面する危険な「三角関係」

[北京 21日 ロイターBREAKINGVIEWS] - 中国の不動産市場は、危険な「三角関係」の上に成り立っている。不動産業界に対する圧力が高まっていることを示す状況は3つある。それは投資の落ち込み、開発業者の資金調達リスク、住宅価格の下落だ。これらはすべて関連しているものの、その影響と対処法は異なる。

 5月21日、中国の不動産市場は、危険な「三角関係」の上に成り立っている。投資の落ち込み、開発業者の資金調達リスク、住宅価格の下落だ。写真は北京市内のマンション。6日撮影(2014年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

さえない経済指標からは、投資の落ち込みが最も差し迫った脅威であることがうかがえる。1─4月の住宅着工件数は前年比25%減少し、過去10年で最大の落ち込みとなった。不動産投資が減退するときは、経済成長もペースダウンする。固定資産投資や小売売上高など、4月の中国の主要経済指標はほぼすべて減速を示した。

不動産開発業者の資金調達についても懸念がある。借り入れの資金源は、銀行から信託会社などにシフトしている。おそらく、最も豊富な資金源は、他に貯蓄の選択肢が乏しい住宅購入者で、彼らはまだ建設されていない住宅に資金を注ぎ込み続けている。

開発業者のバランスシートは圧迫されている。中国本土の株式市場に上場する111社を合わせた債務は2013年に20%拡大。純債務総額は利払い・税・償却前利益(EBITDA)の4.3倍と、1年前の3.4倍から膨らみ、再編が不可避な状況だ。

香港市場に上場する不動産開発会社、緑城中国(グリーンタウン・チャイナ)3900.HKは資金調達に向け、すでに上海の土地を売却しており、最大30%の株式を同業の融創中国控股1918.HKに売却する可能性がある。

もう1つの懸念は住宅価格だ。供給が持続不可能な水準なため、価格も持続不可能だ。中国では2005年以降、面積にして75億平方メートルの住宅が建設されている。解体の報告はなく、さらに40億平方メートルの住宅建設が進行中だ。これは、平均的な住宅1戸の面積を60平方メートルとし、そこに3人が居住するとすれば、都市部のほぼすべての人口に匹敵する約5億7500万人に十分供給できる規模となる。

<対処法>

では何ができるだろうか。それは3つの危機のうち何を優先するかに左右される。投資を優先するのであれば、中国は2008年に行ったように新たな建設を推し進めればよいだろう。だが、指導部は異なる考えを持っているようだ。習近平国家主席は、一段と緩やかな経済成長による「ニューノーマル(新たな標準)」に適応するよう警告している。また、雇用創出が鈍化している兆しや、建設業界での解雇が社会の緊張状態を招いている兆候もまだ見られていない。

開発業者の資金調達はより複雑な問題だ。建設会社が資金繰り難に陥れば、破綻や不良債権が発生し、住宅購入者が支払いを済ませた物件も未完成のままとなるかもしれない。開発業者が選択によってではなく、必要性にかられて建設を停止すれば、信用収縮は投資にも打撃を与えるだろう。

メルトダウンの回避には開発業者の再編と国有銀行からの支援が有益となる。

最大の懸念は価格の下落だ。確かに、中国の住宅購入者の家計債務はそれほど多くない。英オックスフォード大学傘下のオックスフォード経済予測研究所(オックスフォード・エコノミクス)によると、住宅ローンは2010─2013年に3兆5000億元増加したが、これは同期間に登録された住宅取引のわずか5分の1強に相当する水準だ。

しかし、他にも住宅を担保にしている融資は依然多い。価格の急落を招いた住宅の大量売りによって、こうした不動産担保融資が試練に直面する可能性がある。

中国は地域によって状況に大きな差があることから、全国的な危機が発生する可能性は低い。価格の下落が住宅所有者の怒りを招く場合もあれば、ほとんど気づかれないままなこともある。しかし、このことは同時に危機がどこで起こるか予見するのを困難にもしている。

一部の地方当局は住宅購入規制を緩和しているが、ある都市で購入を促進しながら、他の地域で売却を引き起こさないでいることは難しいかもしれない。

価格というものはとりわけ非科学的だ。それ故に、当局が心地よいと見なす水準を超えてしまう。賢明な政府でさえも、信用が失われれば住宅価格の押し上げに苦戦する。それに加え、価格が将来上昇するという広く普及している見方がなくなれば、開発業者の資金や投資も枯渇する。

住宅価格が下落していくにつれ、「三角関係」が持ちこたえられないことが明らかになるだろう。

*筆者は「ReutersBreakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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