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コラム

コラム:ECBの追加緩和、キャリートレードに追い風=サフト氏

[4日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)が打ち出した異例の政策は不透明感にあふれているが、確かなことがひとつある。キャリートレードにはおあつらえ向きだということだ。

9月4日、ECBが打ち出した異例の政策は不透明感にあふれているが、キャリートレードにはおあつらえ向きであることは確かだとジェームズ・サフト氏は指摘する。写真はECBのドラギ総裁(2014年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

ユーロ建て資産より利回りが高い資産であれば――そういう資産にはは現在事欠かない――ユーロで借りた資金を別の資産に振り向ける投資の増加が追い風になるだろう。筆頭は新興国市場だが、お楽しみはそれで終わらない。

ECBは4日、ユーロ圏の低成長に対応して数々の措置に踏み切った。3つの政策金利は10ベーシスポイント(bp)ずつ引き下げられ、中銀預金金利はマイナス20bpとなった。伝統的な金融緩和はこれで打ち止めであるとECBは示唆した。

ECBは資産担保証券(ABS)とカバードボンドの買い入れプログラムも発表し、詳細は10月に公表するとした。これらすべてを踏まえると、流通市場で国債を買う量的緩和(QE)にも一歩近づいたようだ。

これらの措置はおそらく正当化できるし、効果さえ発揮するかもしれず、少なくとも追い風にはなるだろう。しかしユーロ圏では金融政策効果に留保を付けたり制限する要因が枚挙にいとまがない。

疑問の余地がないのは、ユーロ建ての資金調達コストがわずかとはいえ下がること、そして現在銀行が遊ばせている資金が浸み出して、銀行顧客が携わるプロジェクトや投機活動へと流れる可能性があることだ。

数ベーシスポイントの金利低下では、ドイツの中小企業が新たな機械設備を購入するかどうかの判断を大して左右しないかもしれない。しかしレバレッジ集約型の活動、例えばユーロで資金を借りて新興国市場の資産を買うといった取引には、間違いなく桁外れの恩恵が及ぶだろう。

シティグループの外為ストラテジスト、バレンティン・マリノフ氏は顧客向けノートで「少なくとも資金の一部は海外に流れるわけで、強力な緩和はユーロのキャリートレードを勢いづかせるだろう」と指摘。「その結果、ユーロ建て資産を購入している外国人投資家は下落リスクのヘッジを積極化するだろう。最後に大事なこととして、ECBの措置を背景にユーロ圏の内需が強まれば、対外収支の悪化とユーロの下落につながる可能性がある」と記している。

ユーロは下落するだろうし、実際既に下落した。世界の金融市場は、年末にかけて米連邦準備理事会(FRB)の利上げ協議の結果が見えてくるまでは少なくとも、ちょっとした刺激を得られることになる。

<リスク志向>

実際、ECBの動きは十分に大きく、意外性も十分だったため、5日の米雇用統計の重要性がやや低下するかもしれない。雇用統計の数字が、ECBの措置ほどのサプライズをもたらすとは考えにくい。つまり今週は間違いなく、週初に比べて大いにリスク志向が高まった状態で週を終えることになりそうだ。

ソシエテ・ジェネラルの新興国市場ストラテジスト、ブノワ・アンヌ氏は顧客向けリポートで「今日は世界の市場にとって重大な日となった。ECBは想定よりずっと強力なメッセージを送り、市場が政策に失望するリスクを一蹴した」と書いた。

アンヌ氏は続けて「皆さんは新興国市場の上昇相場にもう一度強力な波が訪れるのを、安心して享受すればよい。もちろんこの上昇相場はある時点で終わるだろうが─近い将来ではないが─ECBによって息を吹き替したばかりだ」としている。

こうしてリスクテークと金融資産に朗報がもたらされたわけだが、長期的にはどうなのだろう。

金融市場はリスクテークという面で大きなサプライズを受け取った。これはあまりにも頻繁に繰り返されてきたことだ。

実際、厳しい金融危機後の数年間は、異例のテコ入れ策が次から次へと出現した。米国のQE1、QE2、QE3。ECBが繰り出した様々なアルファベットの金融緩和措置。日本のアベノミクス――。

その度にリスク志向は強まったが、それとひきかえ実体経済にどの程度の恩恵が及んだかとなると、まったく定かでない。

ECB、FRB、日銀の採った措置が、副作用として投機的なフローを呼んだからといって、間違っていたということではない。それよりも懸念すべきは、そうした投機的フローの直接的な享受者が、相当な確度で分け前を受け取れるのに対し、西側諸国の経済はいつまでたっても回復していないことだ。

ユーロ圏は、実現しそうもない財政改革をめぐってぶざまな合意を結び、その改革を当てにしているだけに、景気回復はとても覚束ない。

楽しめる間に、存分にキャリートレードを楽しんでおくことだ。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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