[15日 ロイター] - スコットランドは独立国家となるべきか──。英国からの独立の是非を問う歴史的な住民投票が、いよいよ間近に迫ってきた。
週末に公表された世論調査では、独立反対派がリードするものもあれば、賛成派が上回っているものもあり、賛否は割れている。接戦が予想される投票の行方は不透明だが、明らかなのは、かつては非現実的だと思われていた賛成派の勝利が現在、現実味を帯びていることだ。
なぜ、独立賛成派がここまで支持者を増やしているのか。
第一に、独立で得られることのできる明らかな経済的利益がある。先進的なサービス産業と製造業、そして石油収入により、スコットランドは世界でも有数の富裕国になるだろう。
だが、民主主義的な利益は、経済的利益と同じくらい魅力的だ。
スコットランドは「民主主義の赤字」に苦しんできた。スコットランド人は長い間、英国政府が自分たちの利益を反映しないことに懸念を示してきた。筆者の経験からいうと、スコットランドを支配してきたこれまでの英国政府の半数以上は、スコットランド人から支持されていなかった。これは、うまくいっているとは言い難い。
1980年代─90年代、当時のサッチャー首相とメージャー首相の政策はスコットランド経済に大打撃を与えた。スコットランド人の目には、炭鉱閉鎖や製造業の破壊は民主的な正当性を持たないと映った。
英保守党の政策は他の地域では多くの支持を得られたものの、スコットランド議会59議席のうち保守党は1議席ということからも、スコットランドでの圧倒的な拒絶反応は明らかだ。
加えて、英国議会におけるスコットランドの議員の占める割合は全体のたった9%で、スコットランドが反対する政策に声が届きにくくなっている。例えば、使われていない寝室に税金をかけ、比較的貧しくて公共住宅に暮らす住民が打撃を受ける「寝室税」のような政策に対してだ。
英国議会は過去、こうした「民主主義の赤字」を認めてきた。世論の大きな後押しもあり、1999年にはスコットランド議会が創設された。英労働党はかつて、「スコットランドの問題はスコットランドが解決」と言ったが、提示された解決策は十分とは言えなかった。
問題の核心は、スコットランドの予算がいまだに英国政府によって決められており、スコットランドの議員たちは与えられた予算の配分しかできないことだ。
これは、スコットランドが実現したいと考える政策の多くが財政的なプレッシャーにさらされていることを意味する。例を挙げると、スコットランドは英国の他地域とは異なり、高等教育を無償化しているが、予算が独自に決められないために困難もある。
もちろん、民主主義の赤字は他の方法で取り組むことも可能だ。もし防衛や外交では英国内にとどまり、財政的な独立のみの是非を問う住民投票がなされるのであれば、圧倒的支持を得られるだろう。だが、中央集権的な英国政府は、いかなる有意義な方法で実権を手放すことには消極的な態度を取るとみられる。ただしこれは、独立運動を勢いづかせるだけだ。
英国政府がスコットランドに権限のさらなる移譲を申し出たことは驚きではない。だが、このような動きは遅きに失する感が否めないばかりか、提示されている権限移譲は範囲が限定的だ。
同様に誤算であったのは、世論調査で独立賛成派が逆転したのを受け、英国の主要3党の首脳がそろってスコットランドを訪れたことだ。保守党党首のキャメロン首相、労働党のミリバンド党首、自由民主党党首のクレッグ副首相は、スコットランドで最も信頼度が低い政治家に含まれる。3党首の反独立キャンペーンは、もし独立反対派が住民投票で勝利した場合、今後何年もの間、彼らによって支配されることを改めてスコットランド人に思い知らせることになった。
民主主義をより機能させるため、多くの人はスコットランドの未来が、最もスコットランドを心配している住民たちに委ねられるべきだと考えている。
スコットランドが独立を選ぶかはまだ分からない。筆者はすでに自信を持って「賛成」に投票した。同胞たちもそうしてくれることを願っている。
*筆者は1999年、スコットランド国民党からスコットランド議会議員に選出された。英紙サンデー・メールのコラムニストも務め、現在は通信会社シャーロット・ストリート・パートナーズの創設者兼マネージング・パートナー。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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