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コラム

コラム:中東「宗教戦争」に深入り禁物、米国は歴史に学べ

[16日 ロイター] - 中東のイスラム教徒は宗教戦争を戦っている。北アイルランドでも20世紀の最後の約30年間、プロテスタントとカトリックの対立で多くの血が流されたが、そこから得られた教訓は、当事者同士が平和を強く希求しない限り、宗派間対立を終わらせることは誰にもできないということだ。

 9月16日、宗派間対立に外部から干渉しても火に油を注ぐだけであるのは、歴史が証明しているが、オバマ米大統領は、内側からしか完治できない「がん」を切除しようとすることで、米国民を危険にさらしている。写真はイラク軍に参加したシーア派戦闘員。ナジャフで撮影(2014年 ロイター)

宗派間対立に外部から干渉しても火に油を注ぐだけであるのは、歴史が証明している。激しい戦闘の終結は内側から始まるものだ。オバマ米大統領は、内側からしか完治できない「がん」を切除しようとすることで、米国民を危険にさらしている。イラクや中東に再び関与を強めることは、干渉主義からの脱却というオバマ政権の大きな方針とも矛盾する。

広大な地域を飲み込む宗派対立の嵐が最後に吹き荒れたのは、4世紀前の宗教改革の時だった。当時はキリスト教徒たちが、現在の中東イスラム教徒たちのように憎しみをぶつけあっていた。

イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」は、カリフ制の復活のために戦っている(カリフ制=預言者ムハンマドの後継者であるカリフを選定し、イスラム世界全体を指導する資格を付与する制度)。カトリックとプロテスタントも、似たような問題をめぐって何世紀も争っていた。すべてのキリスト教徒は同じ信仰教義を受け入れるべきだろうか。すべての国家がローマ法王の支配下に置かれるべきだろうか。

イスラム世界で最初の内乱があったのは656─661年で、その時にスンニ派とシーア派の対立が生まれた。両派はともに互いの正統性を認めなかった。

スンニ派は、国家に関係なくすべての信仰者を支配するカリフを頂点とした。最後のカリフとなったアブデュルメジト2世は1924年、オスマン帝国崩壊後に発足したトルコ共和国のムスタファ・ケマル初代大統領によって廃位させられた。

当然ながら、この決定を誰もが受け入れたわけではなかった。1928年には、エジプトでムスリム同胞団が結成された。ムスリム同胞団や志を同じくする他の組織は次第に、シリアやヨルダン、イラク、イランなどにも広がっていった。

現在、スンニ派とシーア派の間で激化している宗派間対立では、お互いが自分たちの教義が勝利し、宗教的正統性が認められることを望んでいる。

カトリックとプロテスタントが争った1618─48年の三十年戦争では、欧州の人口の4分の1が犠牲となった。火あぶりの刑や水責め拷問などの残虐行為も行われ、戦争で飢饉や腺ペストも欧州全域に広がった。戦闘員たちは土地や金をめぐって争いを繰り返した。現在と同様、人間の強欲さが宗教対立を複雑にした。

戦争で疲弊しきったプロテスタントとカトリックは5年に及ぶ交渉の末、ウェストファリアで講和条約を締結し、国教の尊重や内政不干渉などが確立した。

宗教やイデオロギーをめぐる紛争は通常、国境線の引き直しや政権転覆を目的として行われる。米国は知っているはずだが、こうした争いを第三者が終結させることはできない。南北戦争では70万人が命を落としたが、英国もフランスも終わらせることはできなかった。

先行きの見通せない戦争に再び踏み出したオバマ大統領は、「2週間」以内に「海外の同盟国と米国議会」に意見を求めると約束している。

米政府には新たな戦略が必要だ。米国を最優先し、他国は自分たちで責任を引き受けなくてはならないと認める戦略だ。他国は、自分たちが内側に抱える問題に対しては、なおさら自分で責任を持たなくてはならない。

エコノミスト誌が繰り返し指摘するように、イラクやシリアには、宗派間対立の解決に本気で取り組むようになるまで、イスラム国の阻止は望めない。

米国が宗派間対立を解決させることはできない。アフガニスタンのカルザイ大統領との11年間、イラクのマリキ前首相との8年間に及ぶ協力が無駄に終わったことが、それを十分に証明している。

現在の中東の指導者たちは、大きな犠牲を伴う平和を受け入れるかどうか、決断を迫られている。

*筆者は米サンディエゴ州立大学の歴史学教授で、スタンフォード大学フーバー研究所研究員も兼任する。以前は米国務省歴史諮問委員会のメンバーだった。著書に「American Umpire(原題)」などがある。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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