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コラム:日本株、2015年は「最後の良い年」か=丸山俊氏

[東京 22日] - 2015年も日本株を取り巻く環境は、良好である。背景には大別して次の5つの好材料がある。国内景気の持ち直し、企業収益の拡大、株主還元の強化、国内年金基金のポートフォリオシフト継続、日銀の追加金融緩和期待だ。

 12月22日、BNPパリバ証券・日本株チーフストラテジストの丸山俊氏は、2015年の日経平均株価について、下値めどを1万7000円、年央および年末のターゲットをともに1万8000円と予想。提供写真(2014年 ロイター)

2015年中の日経平均株価については、下値めどを1万7000円、年央および年末のターゲットをともに1万8000円(1ドル120円)と予想している。日経平均株価ベースの1株当たり利益は1000円/株を上回り、予想株価収益率(PER)は18倍弱だが、円安サイクルであることを考えると、大幅な割高感はない。

アップサイドは小さいが、2015年は大きな政策イベントがないため、短期筋が売買を主導する東京株式市場で日経平均株価が1万8000円を安定的に維持するのは、実はそれほど容易ではない。むしろ、ファンダメンタルやコーポレートガバナンスの改善が良質な長期資金を呼び込み、市場に厚みが増すことで株高基調が継続するのだと受け止めてもらいたい。

ただし、原油安による物価下振れリスクから物価安定目標2%(消費税の影響を除くコアCPI)達成期限の2015年終盤を意識する日銀が、再び追加緩和を実施すれば、日経平均株価は1万9000円を試す展開になると予想する。

<アベノミクスの成否が問われる年>

2015年は、消費や投資の好循環が戻るかどうかアベノミクスの成否が問われる年だ。2014年末にかけて発生した一連の政治・政策イベント、すなわち年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用見直し、日銀の追加緩和、補正予算・経済対策への期待、消費再増税の延期、衆議院解散・総選挙を追い風とした円安・株高が一服するからである。

ただし、筆者は基本的には2015年の国内景気は消費増税によって想定外の落ち込みを経験した2014年に比べれば大きく改善するとみている。まず、個人消費には、以下のような追い風が吹くからだ。

1)2017年4月への消費再増税の延期、2)冬季賞与の増加や春闘賃上げなどによる賃金上昇、3)原油市況下落に伴う灯油・ガソリン・エネルギー価格下落、4)円安進行を受けた日本人の国内旅行への回帰や外国人観光客の一段の増加、5)株高による資産効果、6)企業の株主還元強化に伴う配当の増加、7)3兆円規模の補正予算やエコポイント制度や地域商品券などの経済対策、である。

生産活動の持ち直しや消費者向けを中心とした経済対策は、政府による地方創生の取り組みと相まって特に消費増税後の消費の落ち込みが大きかった地方経済の底上げにつながる。設備投資は消費増税後の国内景気停滞もあって手控えられているものの、円安の進行とそれに伴うキャッシュフロー改善を受けて、2015年度の計画は製造業を中心に大幅に増加する可能性が大きい。当社のマクロ経済チームの予想では、実質国内総生産(GDP)成長率は2014年度にマイナス0.8%と落ち込んだ後、2015年度はプラス1.0%に回復する見通しだ。

<企業は株主還元姿勢を積極化へ>

また、ミクロ面に目を移しても、企業業績の改善に加えて、企業の株主還元姿勢が一段と積極的になることに期待が持てる。

根拠としては、年金基金をはじめとする機関投資家によるJPX日経インデックス400など株主資本効率(ROE)を重視した株価指数の採用の広がり、2014年2月に金融庁が公表した機関投資家向けガイドライン「責任ある機関投資家の諸原則」(日本版スチュワードシップ・コード)、会社法改正による社外取締役制度改革、株主総会が集中する2015年6月までに適用される「コーポレートガバナンス・コード」といった企業統治の強化に対する時代的・政治的要請などがある。

実際、上場企業の配当・自社株買いは2008年の直近ピークに肩を並べる水準だ。また、2015年中はGPIFなど年金基金による債券から株式へのポートフォリオシフトや日銀の上場投資信託(ETF)買い入れが続くため、日本株の下値は堅いと考える。

なお、蛇足だが筆者は有望な投資先がないからといって、単純に内部留保を配当・自社株買いなどとして掃き出すべきだとは思わない。外国人投資家や金融機関が日本株の7割超を保有する中での株主還元を増やしても、それは資本の有効活用を妨げるどころか資本を流出させるだけであって、国民所得を増やすという観点に立てば日本経済のためにはならない。

株主還元を増やすくらいであれば、賃金を増やすべきであるし、その方が最終的には株高をもたらすのではないだろうか。仮に2003年以降の配当・自社株買い総還元金額110兆円超が全て賃金に充てられていたら、そのうち外国人投資家や金融機関に還元されていた7割超の約80兆円が家計の追加的な所得になっていたはずであり、年平均で名目GDPは1.5%以上嵩(かさ)上げされていたことになる。

<日銀ETF買い入れのインパクト>

本題に戻ろう。日銀のETF保有残高は2014年11月末時点で約3.5兆円であり、10月末の追加緩和でETF買い入れ額を年間1兆円から同3兆円に増額した。日銀の買い入れ対象となるのは日経平均連動型ETFとTOPIX連動型ETF、新たに対象に加えたJPX日経インデックス400連動型ETFであり、その合計時価総額は約8.7兆円である。

つまり、これらのETFに対する日銀の保有比率は約40%であり、買い入れ規模は時価総額の約35%に相当する。これだけでも、日銀のETF買い入れがその価格を押し上げるインパクトが大きいことが分かるだろう。

日銀のETF買い入れが現物株式に影響を与えるメカニズムは、ETFは通常の投資信託とは違って金銭の拠出が認められておらず、現物株式のバスケットを拠出した場合に限ってETFの受益証券を管理会社から受け取ることができるということがポイントである(これを「設定」という)。日銀の買い入れによって市場でETFの価格が現物株式の価格より高くなれば、投資家は割安な現物株を買ってETFを設定し、割高なETFを市場で売却すれば差額が利益になる。

つまり、ETFと現物株の間には裁定が働くため、日銀の買い入れによってETFが値上がりすれば、現物株も値上がりするというメカニズムが働くのである。

<日銀緩和のリスクは金利上昇よりも超円安>

しかし、アベノミクス相場に死角はないのか。確かに2015年の景気は回復する可能性は高いが、もしも失敗すればデフレに逆戻りするか、金融抑圧によって円安が不可逆的に進み(ハイパー)インフレに陥るというシナリオの現実味が増すことになる。この点、もう少し検証してみよう。

ゼロ金利下で銀行貸出が伸び悩む日本経済では、増税延期というある種の財政拡張によって初めて、長期国債の大量買い増しを決定した追加緩和の効果が増幅される。そして、追加緩和と増税延期のポリシーミックスは、家計のインフレ期待を再び高める可能性がある。

一方、原油安はガソリン・電力・ガス料金などの値下げを通じて物価を下押しするだけでなく、それ自身が期待インフレを低下させる可能性がある。2015年前半に向けて円安と国内景気持ち直しに伴う需給ギャップ縮小という物価押し上げ圧力が、原油安という物価押し下げ圧力を上回り、物価は緩やかに上昇していく可能性が高いとみてはいる。

ただし、原油安が長引けば長引くほど2015年度終盤に向けて物価が2%に到達するという黒田日銀総裁の見通しを達成することが難しくなる。円安効果も時間が経てば経つほど(前年比でみた)物価押し上げ圧力が減衰するため、黒田総裁の見通しを原油安の下で達成するには、ある程度の限られた期間内に大幅な円安を起こさなければ難しいだろう。

その場合、良いインフレ・悪いインフレの是非はともかく、デフレマインドを完全に払拭(ふっしょく)するためには、原油安を直接的な理由に追加緩和を決定した2014年10月末の電撃緩和のように2015年前半(例えば4月)に日銀が再び追加緩和に動くというシナリオも十分にあり得るのではないか。

需給ギャップや賃金を通じた物価上昇経路を否定するものではないが、前述の通り「2年」という物価目標達成の期限を考慮すると、日銀はより直接的な経路として為替レートや原油価格に対する依存をますます高めていく可能性が強い。

日銀の国債保有比率は2014年9月末時点で20%に達し、このまま国債買い入れを続けていくと2015年末には30%台、2016年末には40%台に達する計算になる。日銀は債券市場でほぼ唯一の巨大なプレーヤーであるため、長期金利を人為的に低水準に抑え込むことができているものの、株式市場や為替市場をコントロールすることはできない。このため、日銀が緩和政策を長期化させればさせるほど、長期金利は低水準に抑えることができても、その歪みは株式市場にはバブルをもたらしたり、為替市場には大幅な通貨下落(円安)をもたらしたりする。

世界経済の低成長化、国内製造基盤の海外流出や国際競争力の低下、原子力発電所の稼働停止に伴う化石燃料の輸入増加などにより、日本経済は従来よりも円安に対して脆弱になっている。そのため、円安加速に伴う物価高騰が、ついに経済成長を損ない始める「臨界点」が問題となる。

実際、中小非製造業の景況感は1ドル=110円を突破したあたりからコスト増を受けて悪化に転じた。為替レートが同水準だった2007年と比べると、企業の収益構造は強靭(きょうじん)になっていることや原油安の恩恵によって円安耐性は高まっているように思われるが、タイムリミットを意識した金融政策運営は急激な円安を招いて経済活力を殺いでしまう恐れがある。日銀の金融政策が限界に直面するとすれば、それは金利上昇ではなく、急激な円安であろう。

<日銀の政治離れという新しいリスク>

もともとアベノミクスには前政権時代に決定した消費増税というメニューはなかったとも言えるし、消費増税に賛同する黒田氏を日銀総裁に任命した安倍首相は消費増税を前提にしていたとも言える。そして、元財務官僚で衆参両院の同意を経て内閣に任命された黒田日銀総裁は、安倍首相の増税延期という「政治判断」に表向きには理解を示した。

だが、追加緩和を実施した日銀(黒田総裁)と消費増税を延期した政府(安倍首相)の政策協調にひびが入ったことは衆目の一致するところであり、将来的に両者の関係の変質が金融政策に影響を与える可能性がある。

すなわち、2017年4月に延期された消費再増税は景気弾力条項が付与されていないため、金融政策で消費増税を後押しする経済環境を醸成する必要性が薄れた黒田総裁は、政治的な要請よりも物価安定目標に忠実に金融政策を運営するようになっていく可能性がある。

市場は2017年4月の消費再増税前に日銀が緩和縮小(テーパリング)に動くことはないと高をくくっているようだが、仮に日銀の思惑通り物価が2015年度終盤にかけて2%に到達すれば、政治思惑よりも早いタイミングで日銀がテーパリングに動く可能性を否定できない。この点は中長期的な日本株のパスを考える上で気に留めておく必要があるだろう。

*丸山俊氏は、BNPパリバ証券の日本株チーフストラテジスト。早稲田大学政治経済学部卒業後、三和総合研究所に入社し、クレディ・スイス証券を経て2011年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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