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コラム

コラム:ギリシャ、反緊縮派勝利でも低い「ユーロ離脱」リスク

[アテネ 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ギリシャ総選挙で急進左派連合(SYRIZA)が大勝したことで、同国はユーロ離脱(Grexit=グレグジット)に一歩近づいた。それでもなお、ユーロ離脱は最も確率の高いシナリオではない。同国と欧州債権者側の双方が大人の対応を示すとの前提に立てば、両者は取引を交わし、ギリシャは破滅を避けられるはずだからだ。

 1月26日、ギリシャ総選挙で急進左派連合(SYRIZA)が大勝したことで、同国はユーロ離脱に一歩近づいた。それでもなお、ユーロ離脱は最も確率の高いシナリオではない。写真はSYRIZAの支持者。アテネで25日撮影(2015年 ロイター/Alkis Konstantinidis)

SYRIZAのチプラス党首は巨額支援プログラムによる制約を課せられているにもかかわらず、数々の実現不可能な公約を掲げた。年金と最低賃金の大幅引き上げ、解雇された公務員の再雇用、労働市場自由化の撤回、そしてユーロ圏諸国に対する巨額債務の削減だ。

問題は、ギリシャが経済改革と財政均衡の努力を続けない限り、ドイツを筆頭とする債権国は融資を続ける心づもりがない点にある。

関係者全員に分別があるなら、妥協の余地はある。早い話が、ギリシャ国民の大半はユーロ残留を望んでいる。離脱すれば政治紛争と貧困の悪循環に陥ることを、正しくも恐れているのだ。

一方他のユーロ圏諸国にも、ギリシャの離脱を望む政府首脳はいない。離脱は政治的な敗北となる。ギリシャは欧州連合(EU)からも飛び出し、ロシアの影響圏に下る恐れさえあるからだ。ここ数年でユーロ圏諸国の救済措置が数多く導入されたとはいえ、ギリシャの危機が他国に伝染する恐れも捨てきれない。グレグジットのような事態は前代未聞で、危機がどう連鎖するかは想像を絶する。

良いニュースは、チプラス党首の勝利演説がかなり和解的なトーンだったことだ。悪いニュースは、党首は連立を組む相手として国際的な救済に反対する極右政党、「独立ギリシャ人」を選びそうなことだ。

チプラス党首の次の優先課題は2月末に期限切れを迎える救済プログラムの延長要請になろう。要請されればECBはギリシャの銀行に流動性を供給し続けるだろう。ギリシャの金融システムから過去1週間で預金が流出しているため、これは重要な点だ。

チプラス党首の要請が礼儀正しく行われ、新たな合意に向けて適切な対話が持てるなら、他のユーロ圏諸国はプログラム延長に同意するだろう。政権交代早々に金融システムが崩壊するのは御免こうむりたいはずだ。

党首は欧州委員会、ECB、国際通貨基金(IMF)から成る「トロイカ」から取引を直ちに強制されるのではなく、首脳会談を開いて自分の案にも耳を貸してほしいと望むはずで、ユーロ圏諸国首脳はこれについても受け入れるだろう。最終的にはトロイカの関与が必要になるが、最初から参加をごり押しすると、ギリシャを下手に刺激することになる。なにしろトロイカは同国で毛嫌いされている。

しかし債権国側の態度軟化は、チプラス党首が首脳会談前に扇動的な言動を控えることが条件になる。例えば最低賃金の引き上げを強行して既成事実作りを図ったりしてはならない。こうした問題については債権国と交渉すべきだ。

SYRIZAはいったん政権に就いたなら、選挙戦中のような激しい物言いを控えることも重要になってくる。財務相起用が予想されているバロウファキス氏は言葉を慎む必要がある。彼はトリシェECB前総裁が地獄に堕ちるがよいと述べたとフランス紙が最近伝えているが、これでは友人は支援してくれる有力者は得られないだろう。

その先には長期債務についての合意形成という作業が控えている。SYRIZAは現在、ヘアカット(債務削減)を望まない代わり、債務返済額とギリシャの経済成長率を連動させる措置を提案する姿勢。これに対して欧州債権国側は返済期間の延長に応じる構えを示している。

厄介なことに、問題は長期債務の返済緩和にとどまらない。ギリシャはIMFからのまとまった融資が期限を迎える3月に資金不足に陥る。最良の解決策は、政府が真剣な交渉を約束した上で、国内銀向けに国債を追加発行できるようにすることだ。

しかし6月にはECBが保有するギリシャ国債も次々と満期を迎え、再び資金問題が持ち上がる。この時点でギリシャがユーロ圏諸国から追加で資金を借り入れずにデフォルトを回避できるとは考え難い。そしてユーロ圏諸国は、SYRIZAが経済改革と今年の財政均衡を約束しない限り、追加融資には応じないだろう。

SYRIZAは経済を圧迫してきた支配勢力の弾圧と、脱税取り締まりも約束している。チプラス党首がこの点で本気を見せれば欧州首脳らから歓迎されるだろう。問題は、彼が労働市場改革の巻き戻しを主張し続けるなら、欧州首脳の怒りを買うであろうことだ。労働市場改革はギリシャが近年前進を見せた数少ない分野の一つなのだから。

同様に問題含みなのが今年の予算の取扱い。これまでの政権はこの点で債権者と合意に至ることができなかった。総選挙に向けて税収が急減したため、SYRIZAは一層厳しい課題に直面する。チプラス党首は公共投資の強化を掲げて当選したのであり、削減は約束していない。

しかしこの点でも妥協の余地はある。チプラス党首が他の分野で善意を見せれば、欧州側は極貧層に配慮するためとして今年に限った譲歩を行うかもしれない。そして来年以降の財政黒字額については現在の計画よりも小幅な額を認める可能性がある。

このように、妥協策に至る道はある。問題は、そのためには相当な離れ業を必要とすることだ。チプラス党首は支持者の多くから裏切り者とそしられるだろう。彼にそうした事態への覚悟があるかどうかはまだ判然としない。

チプラス氏に妥協の用意が無いとすれば、ギリシャはデフォルトを起こし、銀行破綻を防ぐために資本統制を課す必要が出てくる。そうなってから国民が政府に方向転換を迫れば、それがユーロに留まる最後のチャンスとなろう。さもなければ通貨ドラクマの復活が待っている。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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