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コラム

コラム:デフレとの闘いで見落とされてきた重大事実

[2日 ロイター] - 多くの病気と同じように、デフレーションを1つの症状としてだけ見てしまうと、実際にそれが起きた場合に早合点して間違った治療を施してしまう可能性が大きい。

 4月2日、多くの病気と同じように、デフレーションを1つの症状としてだけ見てしまうと、実際にそれが起きた場合に早合点して間違った治療を施してしまう可能性が大きい。写真は日本の国旗。昨年10月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

世界大恐慌時代には異例かつ自己増殖的なデフレ、つまり一般物価の下落が長期に定着する事態が発生した。その教訓におびえた中央銀行当局者は金融危機以降、持てる手段をすべて行使してデフレの兆しと格闘してきた。

だがこれはいくつかの真実を無視している。その一部は国際決済銀行(BIS)が最近公表した過去140年間にわたるデフレの調査研究でも論じられている。

財やサービスの価格下落は経済成長の中の「弱い輪」にすぎない。一方、不動産バブル崩壊といった資産価格の収縮はより打撃が大きい。

金融政策では、不動産バブル崩壊の後始末でなく、バブル形成に至るまでが鍵になる。掃除のモップを持つ中銀当局者には、すべてが水たまりに見える。

金融政策でデフレとの闘いに重点を置くのは、バブル崩壊後、財政支出で景気を刺激するのは政治的に非常に難しくなるからだ。シャベルを没収されたからハンマーで塹壕を掘らなければならない、という意味ではない。

BISのクラウディオ・ボリオ、マグダレーン・アーデム、アンドルー・フィラード、ボリス・ホフマンの各氏は「大恐慌をさも典型例であるかのように考えて、そこからデフレのコストに関する推論を導き出すのは誤っている」と指摘。

「生産減少という観点では大恐慌は例外的な事象。加えて、生産の落ち込み度合いと一般物価水準下落の程度との相関性は、資産価格急落やそれに絡む銀行の不良債権といった他の要素に比べて低い可能性がある」としている。

この研究は過去140年の主要国の事例を調べ、期間全体の18%がデフレに陥ったが第2次世界大戦後でみると5%でしかないことを発見した。またBISによると、債務水準の高さは重要な意味があるものの、一般物価の下げを加速させるのではなく、不動産価格の収縮を増幅させる。

にもかかわらず、ユーロ圏や米国、ある面では日本においても、まるで1930年代の状況が再燃する危険が続いているかのようにデフレの脅威と闘いながら、おしなべてエネルギーや一部生産財の価格下落がもたらす影響についてはあえて見過ごそうとしている。

<日本の状況から見えること>

ユーロ圏のコア物価上昇率は過去7カ月間、0.6─1.0%のレンジで推移し、欧州中央銀行(ECB)が目標とする2%弱を大幅に下回っている。だからといってそれ自体が量的緩和(QE)を完全に正当化することにはならない。

ADMインベスター・サービシズのエコノミスト、スティーブン・ルイス氏は顧客向けノートで「先進国の働き手が賃上げを要求できないといった金融危機後の状況下で、物価の低さは普通ということだろう」と述べ「そうした環境において、金融政策を通じて消費者物価を押し上げようとする、いかなる試みも成功は一時的なものにとどまる可能性がある。物価上昇は家計の実質所得を圧迫し、消費需要を失速させて、最終的に生産者の価格決定力を弱める」とみている。

日本の最近の歴史と現状を見てみよう。多くの人々は、現下の経済低迷の根源的な要因は根強いデフレだと主張するが、この分析は人口減少がもたらす影響を軽視している。

2000年から07年までに日本の実質国内総生産(GDP)は9%増加し、経済が堅調とみなされる米国は11%増えた。だが労働力人口でみた実質GDP成長率となると、日本は15%で米国は8%にすぎない。

アベノミクスの下、日本は2%の物価上昇率達成を目指してまい進し、円相場を押し下げるとともに大規模な金融緩和を実施している。主な「成果」は、少なくとも今のところは、物価上昇に賃上げが追い付かないことで生じた生活水準の低下だ。

今の時代と、通貨供給量が中銀によって調整されるのではなく金本位制によって制限されていた時代のデフレには大きな違いがあるのは間違いない。この柔軟さこそ、不換紙幣制度に正当性を与える原則の1つといえる。

手段を持つこと良いが、それを適切な任務のために使えば、なお良い。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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