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コラム

コラム:最低賃金導入でも増加、ドイツ雇用の「奇跡」

[ロンドン 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ドイツの労働市場で、オーソドックスな経済学の知見に背く現象が起きている。時給8.5ユーロという法定最低賃金案に対し、大半の主流派エコノミストは数百万人単位の失業につながるとして何年も反対を唱えてきた。

 5月29日、ドイツの労働市場で、オーソドックスな経済学の知見に背く現象が起きている。写真はドイツの国旗カラーのネクタイを着用する男性。ベルリンで2006年6月撮影(2015年 ロイター/Arnd Wiegmann)

しかし1月にこの最低賃金が導入されたにもかかわらず、今のところドイツでは雇用が増え続けている。

雇用主が法を守っていないわけではない。美容院やタクシーといった最も影響の大きいサービス業で賃金が増えているのがその証拠だ。しかし第1・四半期の就業者数は前年同期比27万5000人増加した。失業率は横ばいで、国全体に比べて旧東ドイツ地区の方が良好な成績を示している。

エコノミストは理由探しに躍起になっている。運が良かっただけ、という可能性はある。ドイツ経済は堅調だ。インフレ率が低い一方で家計所得は伸びているため、非熟練労働者に依存する国内サービス業への需要は多い。

経済データが混乱を招いている面もある。ドイツの最低賃金水準は時給中央値の62%相当と、欧州で2番目に高い水準になると推計されていたが、最近の計算ではもっと低くなる。公的シンクタンクIABによると、多くの産業分野で最低賃金の導入が段階的に進むことや、経済全体の賃金の伸びが原因で、この比率は2016年末までに50%未満に下がる見通し。これなら欧州諸外国の水準に近付く。

その上、エコノミストらが古いデータを用いたことで、影響を受ける労働者の数が過大に推計されていた。新たなIABの計算によると、時給が8.5ユーロの労働者の割合は、当初推計の15%からわずか4.4%に下がる。

しかし、労働市場について従来と異なる解釈が生まれているのも事実だ。現代的な労働エコノミストは、非熟練労働者の雇用主の多くが価格決定力を享受し始めた結果、生産性との関係でも賃金支払いでうまく対応できるようになったと主張する。そうであるなら、国家による介入が自動的に雇用喪失をもたらすことはない。

これまでの経過は良好だ。しかし拙速に良い結論を下してしまうと、将来的に最低賃金の過度な引き上げを招きかねない。高めの最低賃金を提唱する者でさえ、あまりにも高く設定し過ぎると雇用を壊すと認めている。とはいえ、最低賃金反対派が守勢に立たされているのは確かだ。景気後退が訪れて失業率が上昇しない限り、反対派は自らの正しさを証明できないかもしれない。

●背景となるニュース

*ドイツ政府は1月、時給8.5ユーロの法定最低賃金制度を施行した。

*多くのエコノミストは、この法律で最大100万人の雇用が脅かされると警告した。

*ドイツの第1・四半期の就業者数は4240万人と、前年同期比0.7%増えた。4月も労働市場の前向きな動きは続いた。失業者数は280万人と、前年同月比3.4%減少した。季節調整済み失業率は6.4%で横ばいだった。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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