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コラム

コラム:ECBを苦境に追いやるFRBの物価上振れ容認

[ロンドン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ある中央銀行の金融政策は、別の中銀にとって悩みの種になっても不思議ではない。現在は債券利回りが世界的に上昇しているが、その一因は米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が物価上昇率の2%超えをしばらく容認したいと改めて明言していることにある。パウエル氏の方針はドル安基調の継続にもつながる。こうした状況は、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁にとって助けにならない。

 2月16日、ある中央銀行の金融政策は、別の中銀にとって悩みの種になっても不思議ではない。写真は2019年10月ワシントンであいさつを交わすパウエルFRB議長(右)とラガルド氏(2021年 ロイター/Mike Theiler)

労働市場の改善を意図するパウエル氏のこうしたメッセージは、バイデン米大統領が打ち出している大型経済対策案と相まって、投資家の物価上昇期待を生み出している。例えば予想物価に関する指標の一つである期間10年のブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は足元で2.2%を突破して上昇、2014年以来の高水準を付けた。投資家はインフレで目減りする債券投資リターンの補償を要求するものだ。そのため米国債利回りも上昇を続けており、16日には10年債利回りが一時1.3%台と、約1年ぶりの高さに達した。

世界で最も規模が大きく流動性に厚みがある米国の債券市場の動きは、ユーロ圏にも波及している。ドイツ10年債利回りもマイナス0.36%と8カ月ぶりの高水準となった。ユーロ圏については域内総生産(GDP)が新型コロナウイルスのパンデミック発生前の規模に戻るのが米国よりも遅く、従って物価圧力も比較的弱くなりそうだとみられているのに、金利が上がったのだ。

これはラガルド氏にとって不幸な事態を意味する。ECBが実行している2兆ユーロ近い規模の緊急資産買い入れ政策の核心は、域内の借り入れコストを抑制してまず経済成長を促し、物価を押し上げるという点にある。ところが長期債利回りに上昇圧力がかかれば、この政策効果に水が差されてしまう。

FRBの積極緩和の副産物であるドル安も、ラガルド氏には好ましくないだろう。ドルは1月、対ユーロで18年に付けた以来の安値に沈んだ。パウエル氏がすぐに短期金利を引き上げる気配がない中で米物価上昇率が少しでも上振れすれば、投資家が得られるドル建ての実質金利は低下する。その結果投資家がユーロ買いに向かうと、欧州の輸出に打撃を与えるユーロ高が長引くことになる。

さらには、米経済を完全雇用状態にしようというパウエル氏の取り組みは長期的にもECBの立場を悪くしかねない。完全雇用はFRBが掲げる2大目標の1つ。そしてECBには、物価上昇率を2%弱にするという単一の任務しかない。だからもしECBが、最終的に物価上昇率が目標を一定期間上回る局面になって金融引き締めを検討するような場合を考えてみよう。そうしたときには、なぜFRBのように、雇用がもっと改善するまで緩和を続けないのかと政治的な批判を浴びるかもしれない。

●背景となるニュース

*米10年国債利回りが16日に一時1.3%台と約1年ぶりの高水準に達した。これに引っ張られてドイツ10年国債利回りも昨年6月以来の高さになった。

*パウエルFRB議長は10日、米国民、特にマイノリティーや低賃金の仕事を失った労働者がパンデミック後にまた働けるようにするため連邦政府に幅広い取り組みを求めた。

*パウエル氏は「労働市場環境が完全雇用のレベルに達し、物価上昇率が2%に上がってしばらく2%を緩やかに上回る流れができるまで、現在の緩和的なフェデラルファンド(FF)レートの目標レンジを維持するのが適切になる、とわれわれは想定している」と述べた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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