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コラム:今年後半への投資戦略 市場を読み解く6つの視点=青木大樹氏

[東京 5日] - 新型コロナウイルスの被害は変異株による感染も増加し、いまだに多くの国で厳しい状況が続いている。一方、世界の景気動向は、各国政府による大規模な財政出動やウイルスワクチンの接種拡大で、今後さらに回復、正常化が進む方向にある。

 4月5日、新型コロナウイルスの被害は変異株による感染も増加し、いまだに多くの国で厳しい状況が続いている。一方、世界の景気動向は、各国政府による大規模な財政出動やウイルスワクチンの接種拡大で、今後さらに回復、正常化が進む方向にある。写真はニューヨーク証券取引所で2020年3月撮影(2021年 ロイター)

コロナワクチンについては、イギリスやイスラエルなど接種拡大の効果を示す国も出始めており、米国やカナダ、EU諸国ではワクチン接種ペースが加速している。

財政追加支援として、米国では3月、国民への現金給付を柱とする1.9兆ドル(約210兆円)規模の「米国救済計画法」が成立した。さらにインフラ・環境に向けた8年間の支出として2.3兆ドルの支出計画を発表、4月中にも教育・保育・介護面で1兆ドル程度の計画が期待されている。

財源確保のための増税は市場のリスク材料ではあるものの、2022年の中間選挙に向けて大規模な増税実施は難しいだろう。

これらを踏まえ、私は米国の今年の経済成長率見通しを6.6%へ引き上げた。中国でも大規模な引き締めリスクは低いとみており、9.0%の経済成長を見込んでいる。

株式市場では、金利低下でグロース株、ハイテク株中心に上昇した昨年とは風向きが変わり、景気回復や財政支援の効果によって景気敏感株が明確にアウトパフォームする展開になっている。

米国での金利上昇は一部のグロース株にはマイナスだ。しかし、テレワーク需要やオンライン業務の拡大など、コロナ終息後の「ニューノーマル(新常態)」を見据えたテーマに沿って、確固たるビジネスモデル・収益構造を持っているハイテク株の下値は非常に硬い。

では年央・年後半に向けた経済、市場をどうみていくべきなのか。今年後半への投資戦略で確認すべき6つの視点をチェックリストとして提供したい。

<1.リフレーションに備えているか>

米国では、景気の回復に伴うインフレ率の上振れがひとつの焦点になるだろう。この先の投資を考えるうえで、まず景気過熱に伴う物価上昇(リフレーション)に備えているかどうか、が重要になる。

今年4-6月期の米国経済は強い成長のリバウンドが意識され始めているが、その原動力となるのが、大規模な財政支援により貯蓄が大きく膨らんだ家計の消費動向だ。

通常であれば、米国の家計は年間で1.2兆ドル程度の貯蓄を行うが、昨年は3兆ドルを超える貯蓄を行っており、2兆ドル程度が過剰貯蓄とみている。すでに3月中旬以降、「米国救済計画法」による現金給付が始まっており、さらに過剰貯蓄が拡大する見込みだ。

この過剰貯蓄は、米国株式市場にとっても強い下支え要因となるが、特にワクチン普及後のサービス消費をけん引するだろう。

実際、米国での旅行やホテル予約の状況を見ると、ファミリー向けレジャー目的の予約は急増しており、その予約時期は主に5,6月以降となっている。ワクチンの普及は1週間で3.5%の人口が接種を受けるなど、そのペースが加速しており、人々はワクチン接種後の消費計画をすでに立て始めているようだ。

足元の米国の金利上昇も、2004年や2013年のときのような連邦準備理事会(FRB)による早期利上げ・引き締め観測の高まりによるものではなく、2016年にドナルド・トランプ氏が勝利した大統領選挙後や2017-2018年の減税決定後に見られたようなリフレ期待が要因とみるべきだろう。

リフレ期の金利上昇は金融セクターや資本財、素材セクターが恩恵を受け、他のセクターをアウトパフォームしやすいと考えている。

<2.利回りを追求できているか>

市場金利が上昇しているといっても、利上げが開始されるのは米国でも2023年以降となろう。ユーロ圏や日本では利上げ開始はさらに遅れる見込みだ。つまり、過去のトレンドからみれば金利はまだまだ低い水準が続く。このような環境では、リスクを考慮した上でしっかりと利回りを獲得できる資産へ配分していくことが重要だ。

具体的には、米国では配当性向の高い企業群ほど2020年のパフォーマンスは良くなく、今後、出遅れを取り戻して上昇する余力は大きいとみている。

また、アジアのハイイールド債の利回りは7%を超えており、今年末までにトータルリターンは7-8%になるとみている。米国のハイイールド債も、堅調な経済やデフォルト率の見通しからみて魅力的な水準だろう。

<3.ボラティリティの高まりを活かしているか>

投資家のリスク心理を示す米株式市場のVIX指数(恐怖指数)は、今年1年を通じて25-30程度と比較的高い水準で推移すると見込まれている。

市場にとって、今後の金融政策と金利動向、米中対立などの外交・地政学リスク、コロナウイルスの再拡大の懸念など、先行きの不確実性は様々な形で残っている。

ボラティリティの高い状況下では、相場変動に強いヘッジファンドへの投資やボラティリティを活かした戦略が有効となろう。

つい最近発覚した米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントの運用失敗は、高いレバレッジをかけて株式投資を行っていた同社のような「ファミリーオフィス」への懸念をかきたてた。同社の損失による他の金融機関などへの影響が注目されているが、ヘッジファンドのパフォーマンスは全体としては良好であり、ファミリーオフィスで大きなリスクを取っているケースはまれである。市場全体へ波及するリスクは高くはないと考えている。

もちろん、こういった事例が続く場合、金融機関のリスク管理強化や米国での規制・監督強化のリスクが出てくるため、状況を引き続き注視していく必要があるだろう。

<4.アジアへの投資機会を逃していないか>

今後、アジアへの分散投資はますます重要になると考えている。中国経済がコロナ禍をいち早く脱し、他国に先駆けて正常化へ向かう中、アジア(日本ベース除く)の企業収益は10%後半の強い成長を見込んでいる。

米中対立はバイデン米大統領の下で急激に悪化することも、大きく緩和することも難しく、両国関係は膠着(こうちゃく)に近い状態が続くだろう。欧米は人権問題では中国に厳しいスタンスで臨む一方、脱炭素・環境の分野では一部で協力ムードがみられるなど、対中姿勢は分野によって異なっている。

一方、米国が環太平洋連携協定(TPP)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を通じてアジアの需要を積極的に取り込もうとすることも考えにくく、米中経済のデカップリング(分離)がどうなるかは両国関係の中長期的なテーマであり続ける。 

中国は、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で採択した5カ年計画でも、製造業の内製化・自前化による内需拡大、「一帯一路」構想による世界的な経済圏の拡大、脱炭素・環境政策の推進による技術力や国際的な影響力の強化を図ろうとしている。 こうしたアジアの経済成長や需要拡大のうねりを投資戦略に取り込めているか。短期的には政治による規制強化などで変動が高まる局面もあるが、中期的な需要拡大余地は大きく、投資戦略の重要な要素であると考えている。

<5.構造的に成長する分野へ投資をしているか>

さらに、今後、世界規模で中期的に経済成長の推進力になる動きにも注目する必要もある。ハイテク株は将来のキャッシュフローへの影響から金利上昇の影響を受けやすいものの、中長期の経済成長をけん引していく重要なセクターだ。

第5世代(5G)通信ビジネスやフィンテック、新技術を医療・健康に活用するヘルステックや脱炭素へ活用するグリーンテックなどは構造的に成長が見込まれる分野であろう。

また、デジタル・サブスクリプションも新しい投資テーマになるだろう。サブスクリプションは、一定期間の利用料を払うことで自由にサービスを受けられる形態であるが、ドラマや雑誌などでは日本でも広がりがみられる。

今後、フィットネスやフードデリバリー、オンライン講座など成長分野は様々に広がると予想される。Eコマースやクラウドサービス、ストリーミング・サービスなどのデジタル・サブスクリプションのグローバルでの市場規模は2025年に向けて毎年18%の成長を見込んでいる。

<6.投資戦略は「持続可能性」を織り込んでいるか>

そして、最後の視点はサステナビリティ(持続可能性)投資だ。グローバル経済や政治環境が変化する中、持続可能な投資戦略の構築は一段と重要となっている。

脱炭素・環境政策の推進は、日米欧中といった主要国が大きく舵を切り始めるなど、中長期的な政策課題であり、大きな需要拡大、技術革新が見込まれる分野である。

持続可能性をテーマにした投資はミレニアル世代といった若い年齢層を中心に特に関心が高まっており、彼らが事業や投資の意思決定を担う時代となる中、グローバルの資金フローに大きな影響を与えるだろう。

関心の高いドル/円については、グローバル景気回復が続く中で円は低下し、ドルはやや上昇傾向がみられる。

4-6月期の米国景気の強さからみれば短期的には米国10年金利の上昇(といっても2%まではいかないとみているが)に伴う、さらなるドル高円安の余地はあろう。ドル/円のレンジとしては110-115円をみたい。

一方、足元の上振れリスクはワクチン普及に伴う移動再開と財政効果のダブル効果による一時的なリフレトレードの側面がある。年後半に財政の効果が減退していく局面では、金利低下・ドル安がみられる時期もあると考えている。

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*青木大樹氏は、UBS証券ウェルスマネジメント本部の日本における最高投資責任者(CIO)兼チーフエコノミスト。2001年より内閣府で政策企画・経済調査に携わった後、2010年にUBS証券入社。2016年より現職。2016年、インスティテューショナル・インベスター誌による「オールジャパン・リサーチチーム」調査の日本経済エコノミスト部門にて5位(外資系1位)に選ばれる。

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編集:北松克朗

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