for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:政治イベントで財政出動は年明けに、年後半はゼロ成長も

[東京 10日 ロイター] - 29日投開票の自民党総裁選への注目度が高まって東京市場では日経平均が3万円台に乗せる大幅上昇となったが、その先の衆院選や組閣などを考えると来年度予算の年内編成は綱渡りの日程に直面している。2021年度補正予算の編成も年末から年明けになる可能性があり、追加の財政支出が効果を発揮するのはどんなに早くても来年2月以降になりそうだ。

 9月10日、29日投開票の自民党総裁選への注目度が高まって東京市場では日経平均が3万円台に乗せる大幅上昇となったが、その先の衆院選や組閣などを考えると来年度予算の年内編成は綱渡りの日程に直面している。2016年2月撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)

一方、日本の21年7─9月期の国内総生産(GDP)ゼロ近辺から小幅のマイナスとなる見通しで、10─12月期も内外需ともに大きなプラスを見込める要因がない。ならして見れば日本経済は、ゼロ成長へと高度を下げていくのではないか。景気悪化の実感が増大すれば、11月にずれ込みそうな衆院選の結果にも影響を与えかねない。

<11月衆院選・年明け補正審議の可能性>

自民党総裁選は17日に告示、29日に投開票される。きょう10日に河野太郎ワクチン担当相が立候補を表明し、すでに出馬表明した岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相らとの間で激しい選挙戦が展開されそうだ。

新総裁を首相に指名するための臨時国会は10月4日に召集される可能性が高く、その後に新内閣の組閣が行われる。衆院議員の任期は10月21日で、その前の17日を衆院選の投票日する案では選挙事務準備が間に合わないため、事実上、11月の衆院選実施が固まっている。

臨時国会の会期中に衆院を解散し、11月7日、14日、21日、28日のどこかが投票日になる。仮に最も遅い28日が投開票日となるケースでは、首相を指名する特別国会の召集が12月にずれ込み、組閣などのイベントをこなしていくと予算編成の重点や新内閣の目玉政策の位置づけなどを議論しているうちに年末を迎え、来年度予算案の年内編成が日程的にかなり難しくなることが今から想定される。

11月28日より前の日程で衆院選を実施しても、予算編成の基本方針や骨格が決まっていなければ時間的な余裕があるとは決して言えないだろう。まして菅義偉内閣から引き継ぐ新内閣は、最優先に処理する目玉政策の予算措置や緊急に対応すべき項目を補正予算で処理するなどの「線引き」にも時間がかかるだろう。

補正予算や本予算の編成が年末ぎりぎりか年明けとなり、1月召集の通常国会の冒頭で補正予算を審議し可決・成立させても、本格的な執行が始まるのは早くても来年2月だろう。それまでは、大型の財政的な手当てなしに日本経済は走っていかざるを得ない。

<外需好調・消費不振、7─9月はマイナス成長か>

新型コロナウイルスの感染拡大の影響から立ち直りV字回復基調を見せている米国経済であれば、「財政的支援なし」でも景気失速の可能性は低いだろう。だが、日本経済の成長は主要7カ国(G7)の中で最も低く、先行きもかなり怪しい。それで政府のサポートが期待できないため、グライダーが高度を下げながら滑空するように経済は減速していくだろう。以下で詳しく見ていきたい。

まず、7─9月期の外需は、輸出が好調なためGDPにもプラス寄与しそうだ。7月の輸出は前年比37.0%増と伸びており、9月までは好調な輸出が日本経済を支える構図が維持されそうだ。

一方、個人消費は弱い。家計調査ベースで7月は4─6月比でマイナス3%と減少。8月、9月も、緊急事態宣言の発令などもあり弱い基調が続きそうだ。企業の設備投資は足元でプラス幅が大きくなっているが、外需のプラスと合わせて考えても、消費のマイナスを埋め合わせるのは難しいのではないか。7─9月期は小幅のマイナス成長になると予想している。

野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト(元日銀審議委員)は7─9月期GDPについて、現在、緊急事態宣言の延長もあり前期比年率マイナス5%程度のペースにあると考えられるとの見解を示している。

<年後半は米中減速、内需はコロナ次第>

10─12月期を展望する場合、日本の外需を支えてきた米国と中国の景気をどう見るのかというのがポイントになるだろう。まず、米国は各種の失業給付の終了や足元での物価高などで個人消費の拡大に減速感が出てきた。アトランタ地区連銀が出しているGDPNOWは現在、7─9月期を前期比年率3.7%と出しており、今年前半の6%台の成長からは減速していることを示している。

人出不足を背景にした物価高は10─12月期も継続する可能性が高く、消費の減速傾向はしばらく続くのではないか。少なくとも7─12月の成長率は1─6月よりも伸びが鈍化する公算が大きい。これは日本の対米輸出に影響するだろう。

また、中国経済も今年前半とは様子が違ってきた。財新/マークイットが発表した8月の製造業PMIは49.2と判断の分かれ目となる50を割り込み、8月のサービス部門PMIも46.7に急低下した。どうやら中国でも、今年前半と比べて後半は景気減速を覚悟すべき情勢に入ってきたのではないか。

米中の景気拡大ペースが減速するなら、日本の外需がその伸びを弱めるのは確実な情勢と言える。

他方、内需は、新型コロナウイルスの感染拡大を抑圧できないため宿泊、交通、飲食などの対面型サービスのV字回復が望めず、冬場に「第6波」の襲来があれば7─9月期からの悪化すら想定できる。内外需を総合すると、ゼロ成長近辺に着地する公算が大きいのではないか。

今年のGDPは1─3月期に前期比年率マイナス4.2%と落ち込み、4─6月に同プラス1.9%と持ち直したものの、これまで見てきたように7─9月は小幅マイナス、10─12月期はゼロ成長近辺になる可能性がある。

特に年後半は極めて弱々しい足取りとなり、国民の生活実感レベルでは「景気は悪化している」との受け止め方が多くなると予想する。だが、政治イベントが目白押しで財政拡張などの政策対応は、来年1月まで予算化が難しい。

この経済情勢が、11月とみられる衆院選の状況に影響するのかしないのか。その点は、29日に判明する自民党新総裁の発信力や政策提言力との関連で大きく変動すると予想している。

●背景となるニュース

・ UPDATE 2-GDP、4─6月期2次速報は0.5%増に上方修正 名目2期連続マイナス

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up