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コラム

コラム:欧州のコロナ拡大と地政学リスク、日本に「ダブルパンチ」

[東京 22日 ロイター] - 欧州で新型コロナウイルスの感染者数が急増し、一部でロックダウン(都市封鎖)が実施されることになったが、それに伴う経済活動の落ち込みが、原油や天然ガスの価格を急低下させる可能性は低そうだ。ベラルーシが欧州向け天然ガスの供給停止をほのめかしたり、ロシアがウクライナ国境の軍備を増強するなど地政学リスクが高まっているためだ。

 欧州で新型コロナウイルスの感染者数が急増し、一部でロックダウン(都市封鎖)が実施されることになったが、それに伴う経済活動の落ち込みが、原油や天然ガスの価格を急低下させる可能性は低そうだ。写真は、感染者が増加しているドイツ中部ギーセンで撮影したプラカード。「クリスマスのスターになろう」との言葉を添えて、マスク着用を訴えている(2021年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

過去の経験から予想すると、欧州の感染拡大はいずれ米国などに波及するリスクが高く、年明けは欧米で需要が減退しかねない。他方でエネルギー価格が高止まりすれば、増益見通しを出している日本企業にとっても、需要減少とコスト増という「ダブルパンチ」に直面するだろう。日本を取り巻く外的環境は、風雲急を告げてきた。

<緊張する東欧情勢>

ドイツが19日に公表したコロナ新規感染者は5万2970人、死者は201人だった。シュパーン保健相は状況が極めて深刻なため、ワクチンを接種した人も含めてロックダウンを排除できないと表明した。オーストリアは同じ日、感染拡大を抑制するため、完全なロックダウンを再導入すると公表した。西欧でロックダウンが再導入されるのは初めてだ。

ロックダウンまで至らなくても、陽性者は病院や自宅に隔離されるため、感染拡大は経済・社会活動に大きな制約をもたらす。消費に影響が出るだけでなく、工場や会社への出勤もできなくなるので、いわゆる「供給制約」も顕在化し、需要と供給の両面で欧州経済は大きな打撃を受けるだろう。年末商戦を直撃し、国内総生産(GDP)の大きな下押し要因になるのは避けられない情勢だ。

また、この2年間の経験を踏まえると、感染の波が米国などの北米大陸に波及する可能性を予想すべきだ。米アトランタ地区連銀が集計している「GDP NOW」では、10─12月期の米国のGDPを8.7%と予測しているが、西欧での感染拡大が波及すれば、米国でもクリスマス商戦を直撃する事態がありえる。

その場合、足元で米国を悩ませているインフレは果たして沈静化するのだろうか。筆者は、2つの理由でインフレは沈静化しないと予想する。1つは、東中欧で起きている地政学リスクの高まりだ。欧州連合(EU)は、EUの制裁を受けているベラルーシのルカシェンコ政権がその仕返しとして中東からの不法移民をポーランド、リトアニア、ラトビアといった最も東寄りのEU加盟国に送り込んでいると非難してきた。

一方、ベラルーシ側はこれを否定しつつ、ルカシェンコ大統領が11日にEUへの天然ガス輸送を停止する可能性を示し、欧州の天然ガス価格は過去最高水準で張り付いている。また、ロシアがウクライナ国境で兵力を増強し、東欧情勢は米国のサキ報道官が19日に「ロシアのウクライナに対する軍事的な活動と厳しい表現を米政府は深く懸念している」と述べるような緊張感の高まりを見せている。

こうした地政学リスクは、米国や日本などの原油の戦略備蓄放出検討の報道で、いったん下落している原油価格を押し上げる役割を果たすだろう。

2つ目は、コロナの感染者拡大による供給制約の表面化だ。欧米での工場の操業度の低下や、ようやく回復の兆しが見えてきた半導体不足が逆戻りするリスクもある。供給サイドの不透明感が意識されれば、製品価格だけでなくサービス価格も高止まり、コロナの感染拡大にもかかわらず、物価上昇圧力がかかり続けるという米欧諸国にとっては、最悪のシナリオである「スタグフレーション」の入り口に差し掛かる危険性が高まるのではないか。

<経済対策の効果を打ち消し>

このリスク要因は、日本経済にとっても大きな負担になる。まず、欧米の需要が年末・年始に落ち込めば、日本の輸出産業にとっても大きな打撃だ。さらに中国の輸出産業が同様に落ち込むリスクもあり、日本から中国向けの輸出にもタイムラグを伴って下押し圧力がかかる。

その一方で、天然ガス価格の高止まりが足を引っ張って、原油価格の下落も一過性に終わり、足元のドル高・円安傾向も手伝って、エネルギー価格を中心とした企業の原材料コストは明確に上昇すると予想する。

この2つのルートで、日本企業は売上高・利益ともに下方修正圧力を受けやすくなる。政府が策定した経済対策は、財政支出規模が55.7兆円、GDPを5.6%押し上げると試算されているが、これまで見てきたような需要減少とエネルギーなどのコスト増大というダブルパンチで、日本経済は下押し圧力を受けるだろう。

経済対策の効果を打ち消してしまい、2022年の日本経済は、楽観を許されない厳しい展開が冒頭から待ち受けていると予想する。

●背景となるニュース

・ 欧州の都市封鎖で金融市場が動揺、独追随の観測も

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