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コラム

コラム:ドル高が多国籍企業に逆風、それでも米経済は中長期的に拡大

[ニューヨーク 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ドル高は、米多国籍企業にとって忍耐力を試される要素になりつつある。アップルや製薬大手ファイザーから手作り作品のネット通販を手がけるETSY(エッツィー)まで、経営幹部の間からは約20年来のドル高が利益を目減りさせているとの声が聞かれ始めた。

 7月29日、ドル高は、米多国籍企業にとって忍耐力を試される要素になりつつある。アップルや製薬大手ファイザーから手作り作品のネット通販を手がけるETSY(エッツィー)まで、経営幹部の間からは約20年来のドル高が利益を目減りさせているとの声が聞かれ始めた。2021年2月撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

米国の製品を海外で販売する企業は今後、業績がさえない内容になってもおかしくない。しかし、総合的にプラスとマイナスを勘案すると、盤石のドル高は引き続き米国の利益になっている。

ドルは円、ポンド、カナダドル、ユーロ、スイスフラン、スウェーデンクローナの主要6通貨で構成するバスケットに対して過去1年間で15%強と、2015年以降で最も急速に上昇している。

その理由の1つは、米連邦準備理事会(FRB)の積極的な利上げだ。直近の7月27日の75ベーシスポイント(bp)利上げを含め、ドル保有の魅力を高めている。

さらに今のように世界的な疫病や戦争を巡る不安が広がっている局面では、投資家は厚みがあって流動性が豊富な市場に向かう傾向がある。これらの点で、米国と肩を並べられる国・地域はなお存在しない。

その結果生じたドル高騰は、海外で休暇を過ごす米国人にとってまさに願ったりかなったりだが、海外で稼ぐ米企業からすれば頭痛の種となる。

モルガン・スタンレーによると、S&P総合500種企業の売上高の海外比率は約30%。リフィニティブの今年の売上高見通しに基づけば、これは4兆ドル前後に達する。企業利益は、ドルが上がるとともに減少する傾向にある。

確かにドル高が行き過ぎ、その期間が長期化すれば問題になりかねない。海外からの利益に依存する企業は、米国に利益を還流すると投資資金が少なくなってしまう。生産拠点をよりコストが安い国に移転しようというインセンティブも働く。

とはいえ、ドル高が海外における数多くのリスクに起因している場合、米国が「空洞化」する恐れは小さいように思われる。ユーロの下落は投資機会の話だけではなく、エネルギー価格高騰などに伴う地域の混乱が影響しているのだ。

そうなると当面、ドル高は主に株式市場に関する問題ということになる。一方で、FRBのパウエル議長は株安に全く動揺していない。バイデン大統領は通貨問題に沈黙を守り、イエレン財務長官はドル上昇について「理解できる」と発言している。

外国為替市場に介入しない米政府の方針と、歴史的にホワイトハウスがドル高を好ましいと考えてきたことも、米国が世界中の投資家を引き付ける場所であり続けている根拠になっている。

いずれにしても、米企業は今失っているものをやがて取り戻せる公算が大きい。市場は既に来年初めの利下げを織り込んでおり、その時期までにインフレが制御されるとみていることが分かる。

実際そうなれば、投資家はリスク志向を復活させ、再び株を買うだろう。ドル高を嘆く企業の口調も遠からず明るくなるかもしれない。

●背景となるニュース

*7月29日までの1年間で、ドルは主要6通貨のバスケットに対して15%強上昇した。

*データストリームによると、4月からはドルの前年同期比上昇率が2015年以降で最も高い状況が続いている。

*多くの米多国籍企業は、ドル高が売上高や利益に打撃を与えると警告している。アップルは7月29日、為替差損によって4─6月期の売上高が3%減少したと述べた。

*その前日には製薬大手ファイザーが、ドル高のために通年の売上高は約20億ドル目減りするとの見通しを示した。ネット通販のETSY(エッツィー)は7月27日、ドル高で売上高が「数ポイント」下振れるとアナリストに説明した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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