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コラム

コラム:中国自動車市場、西側にとって真の懸念は国内勢の実力

[香港 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国に進出した西側自動車メーカーは頭の痛い問題をあれこれ抱えており、中国による政治的な干渉はその1つに過ぎない。欧米自動車大手ステランティスのカルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)は先月、中国の合弁事業からの撤退を表明した際、政府の干渉を理由に挙げた。しかし、より深刻な懸念は、中国メーカーの市場シェアがどんどん拡大しており、間もなく海外市場でも大きな脅威となりかねないことの方にある。

 8月5日、 中国に進出した西側自動車メーカーは頭の痛い問題をあれこれ抱えており、中国による政治的な干渉はその1つに過ぎない。写真は上海で2月撮影(2022年 ロイター/Aly Song)

中国で足場を固めたい自動車大手は何十年も前から、中国への進出にあたり現地企業との合弁事業立ち上げというわずらわしい手続きを強いられてきた。中国政府はこうした戦略により、経営効率の悪い国内企業を業界の雄に育てたいと考えていたが、取り組みは実を結ばなかった。こうした企業は輸出市場を開拓できなかったばかりか、愛国心の強い国内の消費者からもそっぽを向かれ、日産自動車やゼネラル・モーターズ(GM)、フォルクスワーゲン(VW)などが人気を集めた。2000年には中国市場におけるVWのシェアは50%を超えていた。

しかし今、中国が合弁規制を緩和しているというのに、国内メーカーは事業拡大が加速している。国内市場における外資系メーカーの合計シェアは昨年、前年から5.5%ポイント低下して45.6%となった。VWは今年上期のシェアが15.5%だ。

2つの要因が中国メーカーの競争力向上を後押ししている。1つ目は国内で技術者の層が厚みを増している点で、電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)、ボルボの親会社である浙江吉利、 長城汽車など勢いのある民間のメーカーが生まれた。こうした企業は現在、中級の従来型乗用車市場で競争力を持っており、ドイツのBMWやイタリアの設計会社ピニンファリーナから一流の外国人設計者を引き抜くことが可能になっている。

2つ目の要因は、政府の後押しにより中国がEVの開発で欧米を抜き去ろうとしていることだ。中国は昨年のハイブリッド車とバッテリー車の登録台数が330万台で、総販売台数に占める比率は16%だった。欧州のEV購入は、これより110万台少ない。マッキンゼーによると、中国メーカーは海外の競合メーカーに比べると軽量ながらも安全な車体の製造が可能だ。また寧徳時代新能源科技(CATL)など国内大手を通じてバッテリーの最先端技術にアクセスすることもできる。

中国の業界団体が発表する売れ筋EVトップ10に名を連ねる外国メーカーはテスラだけ。調査会社レッドバーンによると、VWは今年、中国のEV市場における年初来のシェアが10.8%にとどまった。ただし同社は新モデルの発売を計画し、研究・販売拠点に投資してはいる。

中国メーカーの競争力向上は影響が海外にも及んでいる。中国メーカーは事業拡大を受けて、海外市場で西側大手と対抗するために利益を再投資しているのだ。ウォーレン・バフェット氏の支援を受け、テスラと世界最大のEVメーカーの座を争うBYDは8月、オーストラリアにEVのSUV(スポーツタイプ多目的車)「Atto3」1000台を初めて輸出した。中国車が西側市場を走り回るようになれば政治的干渉に対する不満の声は高まるばかりだろう。

●背景となるニュース

*「ジープ」ブランドで知られる欧米自動車大手ステランティスは7月18日、中国の国有車大手、広州汽車集団との12年に及ぶ合弁事業から撤退すると発表した。合弁会社の出資比率を75%引き上げる計画がとん頓挫したため。中国では輸入車を販売する形に切り替える。

*広州汽車は7月29日、ステランティスが中国で良い結果を出せなかったのは「中国自動車市場の顧客への敬意を欠いていた結果だ」と同社を批判した。

*ステランティスのタバレス最高経営責任者(CEO)は中国の当局者による政治的な介入に不満を漏らし、制裁措置の影響に懸念を示した。「西側企業が中国で車を売るのはどんどん難しくなっている」との危惧を表明した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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