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訂正-コラム:「3倍速」の米利上げ、ドルは年末125‐130円へ=上野泰也氏

[東京 10日] - 7月の米雇用統計が強い内容になったことから、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも6月、7月に続いて0.75%ポイントの利上げが行われる可能性が高くなっている。

 7月の米雇用統計が強い内容になったことから、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも6月、7月に続いて0.75%ポイントの利上げが行われる可能性が高くなっている。写真は米ドル紙幣、7月17日撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)

年内はさらに2回、11月(訂正)と12月にFOMCが予定されている。仮に、この2回のいずれにおいても最低ラインである0.25%ポイントの利上げが行われる場合、利上げ3回の合計幅は1.25%ポイント。現在のフェデラルファンド(FF)レート誘導水準は2.25─2.5%なので、これが12月には3.5─3.75%になる計算である。

6月のFOMC終了後に公表されたFRB理事・地区連銀総裁の金利見通し(ドットチャート)で、2022年末に想定されるFFレート誘導水準の中央値は3.375%、誘導レンジに引き直すと3.25─3.5%だった。9月のドットチャートで小幅に上方修正される可能性が、明らかに存在している。

<利上げ加速なら、利下げの時期が前倒しに>

しかし、手前で利上げを重ねれば重ねるほど、景気に遅かれ早かれ及ぶダメージは大きくなり、利下げが手前に引き寄せられることにもなる。

筆者は6月29日の本欄で、米連邦準備理事会(FRB)が利下げへと「Uターン」する時期がポイントになるとコメントした。市場はその後、実際にそうした先行きの利下げ転換の織り込みを行っており、FRBサイドがそうした観測の否定に回っている構図である。

以前はハト派の代表格だったものの、インフレ率急上昇を目の当たりにしてタカ派になびいているミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は8月3日に「FRBが来年に利下げに転じるとの予想が金融市場の一部で示されている」とした上で「あり得ないとは言いきれないが、インフレの基調的な動きを踏まえると、そのような可能性は極めて低い」と述べた。「利上げを継続し、インフレ率が2%に戻ると強く確信できるまで据え置く」シナリオが、最も現実的だという。

必要と考える利上げが一巡した後、そのピーク水準でしばらく政策金利を据え置いて様子見を続け、金融引き締め効果が十分浸透して物価目標2%の安定的な達成が確保されたと判断されてから、必要に応じて利下げを検討するという含意だろう。

けれども、このカシュカリ総裁の考えは、理想論の範ちゅうに属するように思われる。

通常の「3倍速」である0.75%ポイント幅の利上げを連発するなど、焦ってハンマーを打ち下ろしているFRBが、景気のオーバーキルを引き起こすことなく、見事に「ソフトランディング(軟着陸)」に成功できるのだろうか。そうなる確率は、大幅な利上げを繰り返せば繰り返すほど、低下していくと予想される。

<加わるQTの引き締め効果>

また、忘れられがちではあるものの、量的引き締め(QT)の方も、FRBのバランスシート規模にようやく反映されてきた。8月4日に発表された計数によると、3日までの1週間にFRBの資産規模は前週から153億ドル減少した。2週連続のマイナスである。9月以降は総資産の縮小ペースが加速する計画になっている。

もっとも、求人数の多さや労働市場参加率の停滞から考えて、米国の労働市場が鋭角的に悪化するシナリオは描きにくい。また、クリアカットな米国経済のリセッション(景気後退)入りが起こるかどうか、全米経済研究所(NBER)が後日にリセッション(景気後退)だと正式認定するかどうかには、不透明感が漂う。それでも、金利と量の両面からの急速な金融引き締めを受けて、米国の経済状況がこの先悪化する可能性は高い。

金融引き締めを続ける中で、パウエルFRB議長が米景気の今後について「ソフトランディング」あるいは「ソフティッシュランディング(軟着陸に近い着陸)」が可能だと述べているのは、景気の底割れは回避できるという十分な自信からではなく、景気を軟着陸させることに十分な自信を持てておらず、景気が下振れてしまうリスクが少なからずあることを意識していることの表れではないだろうか。

<139.38円はドル高のピーク>

ドル/円相場は、7月14日に139.38円をつけたところがドル高・ドル高円安のピークだった可能性が高い。外為替市場参加者を対象にした調査結果などからは、理論値から一段と離れていく形で140円以上の水準をトライすることには、慎重な雰囲気が存在していることがうかがえる。

FRBが2023年にも利下げに転じることを織り込みつつ、ドル/円は8月2日には一時130.40円までドル安・円高方向に戻した。しかし、5日に発表された7月米雇用統計は、サービス分野のインフレ圧力につながる賃金の高い伸びと、リセッション懸念を和らげる雇用者数の予想以上の増加を含んでいた。このため、タカ派に有利な内容とみなされてドル買い/円売りの材料になり、ドル/円は135円前後に上昇した。

景気、物価、金融システムのいずれかにおいて、相当大きなサプライズが生じない限り、FRBのタカ派姿勢は揺らがないと見込まれる。特に11月の中間選挙よりも前は、バイデン政権からインフレファイターを任されていることによる政治的なプレッシャーから、FRBの姿勢軟化はハードルが高いだろう。

しかし、すでに述べた通り、年内に利上げを焦って重ねれば重ねるほど、景気の悪化度合いは大きくなり、利下げに転じるタイミングが手前に引き寄せられる。こうしたやや複雑な構図の中で行きつ戻りつしながらも、ドル/円相場は年末にかけて125─130円のレンジに向けて動いていくことになるだろうと、筆者はみている。

編集:田巻一彦

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。

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*2段落目のFOMC開催の月を10月と12月から11月と12月に訂正します。

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