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コラム

コラム:身近に迫るエボラ危機、米ダラスからの視点

[ダラス 14日 ロイターBreakingviews] - 10月12日の早朝、筆者は隣人からの携帯メッセージの音で目を覚ました。そこにはこう書かれていた。「ダラス市当局からの緊急電話はあったか」

 10月14日、世界的に不安が広がっているエボラ感染。米国内で初めて2次感染した看護師の家があるダラス近郊では、普段とさほど変わらない日常生活も見られるという。写真は6日、エボラ感染者の家から家具を運び出す衛生当局者(2014年 ロイター/Jim Young)

筆者が夫と2人の子供と居を構えているのはダラス市のマコマス地区だが、そこから南に4ブロック、西に4ブロック離れた場所に、米国内で初めてエボラ出血熱に2次感染した看護師の家がある。近隣住民はダラス市当局から、同看護師についての緊急電話を受けていた。

世界的に不安が広がっているエボラ危機は、文字通り筆者の目と鼻の先にまで迫っていたのだ。

実は筆者がエボラ熱に恐怖を覚えたのは2週間前のことだった。リベリア国籍のトーマス・エリック・ダンカン氏がエボラ熱でテキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院に入院したが、そこは筆者が息子を出産した病院だったからだ。

同病院がエボラ患者の受け入れ態勢を整えているか確信が持てず、筆者自身エボラ熱に関する知識を十分か持っているかどうか分らなかった。ダラス市が世界の実験台の役割を引き受けられるかにも不安を持っていた。

結局のところ、おそらくダラス市の医療サービスは他の米都市と同様に、日々の対応に追われてほぼ限界に達している。米国のエボラ熱対応は、世界中の注目を受ける中で初めての試練に直面していたのだ。すでに手一杯の医療機関が迅速に対応できるだろうか。もし出来ないなら、医療システムや地域住民が危機に瀕するまでどれほどの時間的猶予があるのだろうか。

心配を和らげるため、筆者はエボラ熱に関する報道や文献を読み漁り、市当局の話も聞いた。地元病院でさまざまな経験を持つ友人や隣人と議論も交わした。

ウイルスが広がりやすい幼稚園での新たなエボラ対策が計画されているかどうか聞くため、市のホットラインに電話もかけた(まともな回答は得られなかった)。自分たちのリスクに関する統計的計算もやってみた。

時として、母親としての本能が優先する場面もあった。子供たちを一時的に通学させなかったり、事態が完全に収拾するまで地域を離れることも検討した。一方、ジャーナリストの1人として、当局の見解を聞かずにはいられなかった。

当局は自分たちの方針や手続きに強い自信を持っていた。しかし、地元の疫学者は筆者にこう言ったのだ。「我々は38年間のエボラ研究で学んだすべてをテストしているようなもの。我々が学んだことが正しかったかどうかを、テストしている」。別の言葉で言うなら、我々は知っていたと思っていたが、実際のところは分らないということだ。

現地の反応はどうか。緑豊かな筆者の自宅近くでは、防護服に身を包んだ男性たちがバイオハザード容器の中にがれきを入れていた。それでも、子供たちは近くの公園に遊びに行き、コーヒーショップは営業を続けていた。

おそらく、怖がることは何もないのだろう。ただ、我々はエボラ熱が先進国でどう広がるか、まだ学習している最中だ。

米国初のエボラ熱2次感染者が近くに住んでいたにもかかわらず、筆者の元には、当局から一通の通知もメールも来ない。緊急電話も来なかった。受け取ったのは子供が通う学校からの2通のメールだけだ。西アフリカではエボラ封じ込め策が強化されている一方、我々の身近で発生した2次感染は我々の日常生活を変えていない。

大衆はミスをすぐに忘れがちだ。リベリア人男性にエボラ熱の兆候があったにもかかわらず病院が帰宅を認めていた時、世論は「偶然」ととらえていた。ホワイトハウスの広報責任者ダン・ファイファー氏は「米国は世界最高の医師と公衆衛生インフラを持ってる」と言い、テキサス州のリック・ペリー知事は「安心して欲しい。我々のシステムは狙い通りに機能している」と自負して見せた。

しかし、われわれの守りは残念ながら弱いことが露呈した。エボラ対策は病院での手続きに間違いがあったか、そもそも最初から欠陥があったのだろう。いずれにせよ、2次感染は起きてしまったのだ。

我々が今置かれているのは、米疾病対策センター(CDC)のフリーデン所長が言うところの「深く憂慮すべき」状況だ。医療従事者が感染した今回のケースを見る限り、米国はエボラ熱対策でセネガルより劣っていると言える。ギニアと国境を接するセネガルは今のところ、エボラ感染者を1人だけで食い止めている(その患者は回復した)。

スペインも米国と似た状況に置かれている。エボラ熱に感染して帰国した患者の治療に当たっていた看護師の1人が、エボラ熱に2次感染したのだ。しかし、国の対応が違っている。住民は防護マスクを着用しているという。看護師が飼っていた犬は、感染の予防措置として殺処分された。

ダラス市当局者の対応はスペインと一線を画している。米国の2次感染患者も犬を飼っているが、面倒を見てもらえることになった。ダラス市のマイク・ローリング市長は「これは新展開だ」とし、「犬は患者にとって非常に大切であり、我々は犬の安全を期したい」と話した。結構なことだ。

*筆者はダラスを拠点とするフリーの金融ジャーナリストで、ロイターBreakingviewsや米フォーチュン誌に寄稿している。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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