for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:解散で考える日本の未来、移民と高齢者活躍の複合型で

[東京 19日 ロイター] - 安倍晋三首相が衆院解散の方針を表明し、アベノミクスが争点の選挙戦が実質的に始まった。アベノミクスが成功するカギは、賃金上昇の動向が握っているとみられるが、本質的に重要なのは、その先にある「この国のかたち」だ。

 11月19日、アベノミクスが成功するカギは、賃金上昇の動向が握っているとみられるが、本質的に重要なのは、その先にある「この国のかたち」だ。写真は巣鴨で9月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

直面する人口減に対し、移民で対応するのか、75歳まで現役とする高齢者活用か、このまま「座して死を待つ」のか。私は移民と高齢者活用のハイブリッド型社会への移行を進めるべきだと考える。

<アベノミクスの行方、賃金動向がカギ>

アベノミクスの功罪について、12月14日の衆院選投票日に向け、与野党から様々な意見が出るだけでなく、有識者や市場関係者からも「賛成」[反対」の声が交錯するに違いない。

私は、「3本の矢」のうち、1本目の金融政策と2本目の財政政策の効果で時間を稼いでいるうちに、3本目の成長戦略を推し進め、0.5%未満に低下した日本の潜在成長率を高める必要があると考える。

そのプロセスで短期的に重要なのは、賃金動向だろう。政府が10%への消費税率引き上げを延期した背景には、マイナスに転落している実質所得のプラス化を図るということがあったに違いない。

増税を延期しても、来年の賃上げが今年ほどではないということになれば、8%への消費税引き上げの後遺症が長引いている消費を上向かせることは難しくなる。

<日本企業が直面するガバナンス問題>

円安と原油安の「二重の利益」で業績の好転が見込まれる輸出型産業の利益拡大を起点に、雇用者報酬全体の底上げを図ることが、短期的にアベノミクス成功の成否を握っている。

ここで問題になるのは、日本企業のガバナンスだ。収益が拡大しても、内部留保に溜め込むことが常態化している日本企業の経営には、海外の投資家からも鋭い批判が相次いでいる。

その意味で、金融庁と東証が取りまとめ中のコーポレートガバナンスコードの試案の中身が中途半端な内容になれば、海外投資家の失望を招くだけでなく、企業の内部留保を適切な投資に回すことも「夢物語」に終わってしまう。

設備への投資とともに、従業員の給与など人的な投資への適切な判断が、企業収益の向上につながるという認識がなければ、高い成長を実現することは難しい。米大企業が過去10年以上にわたって年率2%の賃上げを実施してきたことと比較して、日本の企業が人件費カットにばかり目を奪われてきたのは、電機産業の失墜を見れば明らかに失敗だった。

政府の圧力だけでなく、企業経営者が自主的に判断して、2%超の賃上げを決断していく経営に転換できなければ、競争力の低下を政府の失態というばかりの「無能ぶり」をさらけ出すことになるだろう。

<日本経済の抱える高齢化と人口減>

だが、日本経済を中長期的に発展させるために逃げられない問題が、行く手に存在している。それは人口減の問題だ。

人口減は、国内市場の縮小を招くだけでなく、現在の社会保障システムの継続性を危うくする要因だ。何も手を付けなければ、いくら量的・質的金融緩和(QQE)を日銀が強化し、財政出動を繰り返しても、財政赤字が膨らむだけで、潜在成長率がマイナスに転落していくことになるだろう。

これを回避するために、あえて過激な選択肢を提示したい。1つは、米国型の移民社会を目指し、海外から日本に移住を希望する人々に対し、「門戸開放」を進める政策だ。しかし、国内の治安悪化などを理由に、難色を示す声がかなり多い。

2つ目は、女性の社会進出だけでは賄えない労働人口の不足を高齢者の大規模な参加で対応する案だ。具体的には75歳まで企業は雇用させ、年金支給時期は75歳超とするシステムに変更する。ただ、年金受給年齢の大幅な引き上げは、相当な反発を招くだろう。

3つ目は、移民受け入れと高齢者活用をそれぞれマイルドにして組み合わせる「ハイブリッド型」だ。移民受け入れに一定の要件や受け入れの量的制限を設け、社会の混乱を最小限に抑制することを目指す一方、高齢者の雇用に関しても、「意欲のある人」に限定し、雇用されている間の年金受給もゼロではなく、一定額を受け取れるようにする。

私は、現実的な選択として、3番目の「ハイブリッド型」が適切であると考える。現在、平均寿命が大幅に伸びているにもかかわらず、日本の社会では、60歳を超えると新たに雇用される機会が激減し、新規雇用者として雇用されるケースは極めてまれだ。

65歳を超えて元気に活躍している人をみると、国会議員を筆頭に医者、弁護士、企業経営者などいわゆる所得上位者が多数を占めている。一方、サラリーマンは定年退職後に就職を希望しても、選択できる職種はかなり限られている。

このシステムを大幅に改編し、75歳までの雇用希望者には、原則として門戸を開くことを義務付ける法的な整備が必要だと考える。

<考えるべき高齢者の生きがい>

65歳から75歳までの雇用者が増加すれば、結果として膨張し続ける医療費も抑制できるという副次的な効果も発生するはずだ。「生きがい」を持って働ける環境が整備されれば、自宅にいる時間が長くなって、自覚しないままに体力が衰えるということと正反対の現象が出てくると考える。

世界で最も高齢化の進む日本は、あるべき高齢化社会の理想像を描く責任があるはずだ。日本で新しい雇用と社会保障のシステムが構築できれば、いずれ高齢化が押し寄せる中国を初めとする世界の多くの国々の参考になるだろう。

アベノミクスの先を見据え、日本の社会と経済がどうあるべきなのか、「この国のかたち」を日本に住むひとりひとりが考える時に来ている。「そのうち、政府が何とかしてくれる」という考えがはびこったままでは、いずれ年金や社会保険制度の破たんを招くことになりかねない。

●背景となるニュース

・10%への消費増税を1年半延期、21日に衆院解散=安倍首相

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up