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コラム

コラム:脱ロシア図るEUのエネルギー政策、強まる中国依存リスク

[ミラノ 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州連合(EU)は、ある国へのエネルギー依存をせっかく脱却しても、別の国に頼る結果になる危険にさらされている。EUが切望しているのは、ロシア産化石燃料の輸入を減らすことだ。そのために再生可能エネルギー利用を拡大するのは、欧州委員会が今年3月に提案したように有効な手段になる。

 5月9日、欧州連合(EU)は、ある国へのエネルギー依存をせっかく脱却しても、別の国に頼る結果になる危険にさらされている。写真はドイツのロットルフのソーラーパーク。2021年7月撮影(2022年 ロイター/Fabian Bimmer)

しかし、太陽光パネルに関係する世界のサプライチェーン(供給網)は現在、中国に支配されている。だから欧州がエネルギー政策の自主性を確保するには、内製化の取り組み強化が欠かせないだろう。

太陽光による電力を増やせば、確かに欧州が必要とするロシア産石油・ガスを削減できると同時に、EUが掲げるクリーンエネルギー普及に関する野心的な目標達成にもつながる。

さらに太陽光発電のコストは低下の一途をたどっている。欧州委によると、太陽光発電施設の建設にかかる費用は2009年から18年の間に75%減少した。

EUは、太陽光と風力の発電量を今の3倍にしたい考えだ。そうすれば、2030年までに年間で1700億立方メートル相当のガス消費を置き換えられる。これは現時点でのEUのロシアからのガス輸入量を上回る。全体の半分近くは、域内で420ギガワットの太陽光発電能力を備えることで賄われる。

だが、そこに落とし穴がある。太陽光パネルはセルと呼ばれる部材の集合体で、このセルは純度の高いシリコン、いわゆるポリシリコンで製造される。ポリシリコンの塊を薄く切断したウエハに、特殊な処理を施して電極を取り付けるとセルが出来上がる。

現在、こうした工程のほとんどが中国で行われている。ブルームバーグNEFのデータによると、中国はポリシリコン生産の77%、ウエハの98%、セルの83%、組み立て工程の75%を管理している。

つまりEUが太陽光発電を拡大しようとすれば、中国に上場している禾邁や固徳威といったメーカーが恩恵を受ける。

中国の通関統計を見ると、太陽光電池のEU向け販売は今年第1・四半期に4倍増となった。こうなるとロシアへの依存を減らしながら、EUのエネルギー政策は結局、中国の意のままになってしまう恐れが出てくる。

そうしたリスクを下げるには、欧州が域内で太陽光パネルを製造しなければならない。既にEUは、イタリア電力大手・エネル傘下のエネル・グリーン・パワーの工場で2024年までに年間で3ギガワット相当のエネルギー効率が高いパネルを生産する計画に、助成金を交付することを承認している。

EUの内製化能力を高めるという面で、例えば、年間40ギガワットを確保するためには300億─400億ユーロ規模の投資が必要になる、というのが業界の見積もりだ。

EU製のパネルは相対的に価格も高めになるだろう。それでもEUは今、ロシアからのエネルギー購入に毎日10億ユーロも負担している以上、エネルギーの独立性を保つための対価を支払う価値はある。 

●背景となるニュース

*欧州連合(EU)欧州委員会は今年3月、ロシア産天然ガスへの依存を減らすため、域内で太陽光と風力による発電の普及を加速させることを提案した。

*EUが2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも55%削減することを目指して策定した「フィット・フォー・55」計画では、域内の太陽光と風力の発電量が30年までに3倍に拡大し、1700億立方メートルのガス消費を置き換えると想定されている。

*ブルームバーグNEFのデータによると、中国は太陽光パネルに使われるポリシリコン生産の上流部分の77%を握り、太陽光パネル用ウエハの98%と太陽光パネルのセルの83%を製造し、セル組み立て工程の75%を管理している。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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