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コラム

コラム:「オバマの赤字」のうそ=ローレンス・サマーズ氏

ローレンス・H・サマーズ

11月5日、ローレンス・サマーズ氏はオバマ大統領とロムニー氏の経済アプローチが好対照をなしていると指摘する。アイオワ州で撮影(2012年 ロイター/Jason Reed)

[5日 ロイター] 私は先週のコラムで、オバマ大統領の経済政策が多くの点でロムニー候補の政策よりも優れていると指摘した。これに対し、ロムニー陣営を代表して、友人であるマイク・ボスキン氏から返答があった。

ボスキン氏は「オバマの赤字」を批判し、ロムニー氏のほうが「均衡予算に向けた優れた選択肢」を提示できると主張している。

私はオバマ陣営を代表しているわけではなく、このコラムは財政赤字以外の幅広い問題を論じているが、ボスキン氏の一部の指摘は適切といえる。

まずボスキン氏が、今の財政赤字と債務増加ペースをいつまでも維持することはできないと主張しているのは正しい。恐ろしい経済問題を回避するには、債務の対GDP比を安定させ、最終的に低下させることが重要と指摘しているのも正しい。これは両候補がともに指摘している点であり、候補を選ぶ基準とはならない。

第二にボスキン氏は、現在の高水準の財政赤字について、オバマ大統領の政策が原因だと批判している。これは事実とは言いがたい。クリントン大統領が2001年に退任した際、財政収支は黒字で、年間数千億ドルのペースで政府債務が削減されていた。

その後、ブッシュ政権下で財政収支は大幅な赤字となった。大型減税、イラク戦争・アフガニスタン戦争への大規模な軍事的肩入れ、新たな処方薬給付などが行われ、それを相殺する歳出の削減や歳入の拡大は実現しなかった。

こうした決定以外で、現在の赤字の最大の原因といえるのが、大恐慌以来最悪の景気低迷だ。これはブッシュ政権時代に始まった。

オバマ大統領の景気刺激策には賛否両論があるだろうが(個人的には景気と雇用に好影響を及ぼしたことは火を見るより明らかだと思うが)、そうした議論はあまり重要ではない。政府の雇用は縮小しており、刺激策をめぐる議論は概ね下火になっている。

第三にボスキン氏は、財政健全化に関して誰が建設的だったかという事実を曖昧にしている。同氏は、財政赤字削減に向けたシンプソン・ボウルズ委員会の報告書に触れながら、この報告書が2010年11月に提出された時点で、下院共和党の反対ですでに廃案になっていたことに言及していない。反対を主導したのは、同委員会で報告書に反対票を投じた共和党のポール・ライアン氏だ。

オバマ大統領には、シンプソン・ボウルズ報告書の原則に基づいて合意する用意があったことは以前からはっきりしている。しかし、議会が歳出削減と歳入拡大に消極的だったため、合意は実現しなかった。

ロムニー氏は10ドルの歳出削減に対し、1ドルの歳入拡大でさえも認めないと発言しており、同氏もそうした抵抗に加わっていたとみられる。

第四に、ロムニー氏に財政均衡化に向けたプランがあると断言するボスキン氏は、控えめに言っても能天気だといえる。

ロムニー氏は、現行水準から税率を20%下げることを公約に掲げているが、独立機関の試算によると、これには10年間で5兆ドルのコストがかかる。その他、国防費の2兆ドル増額や、納税額上位1%のブッシュ減税を延長すること(1兆ドルのコストがかかる)も提案している。

ロムニー氏は、高所得納税者の抜け穴を指摘する以外、こうした措置の財源をどのように確保するか、明示していない。

残念ながら、独立系のアナリストが繰り返し指摘するように、それだけの財源を確保できるだけの抜け穴はない。

高所得納税者の税額控除・優遇税制をすべて廃止しても、同氏の全プランはもとより、高所得者向けの減税のコストさえ賄えない。しかも、財政均衡化のコストについては、まだ何も考えてないのだ。

こうした堂々巡りの議論に終止符を打てるのは選挙だけだ。今回の選挙は、オバマ大統領とロムニー氏の経済アプローチが好対照をなしている。

オバマ大統領はクリントン大統領のアプローチを続けるだろう。ロムニー氏はブッシュ父子大統領の戦術に戻るだろう。

2つのアプローチが経済成長・雇用創出・政府債務・その他ほぼすべての経済統計にどのような影響を及ぼすかは、説明するまでもない。

(ローレンス・H・サマーズ氏はハーバード大学教授。元米財務長官)

* 本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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