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コラム

コラム:ダボス会議で明暗、日本は評判アップ

世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の出席者は数々の会合や会議、内輪話やスキーを終え、新たに築いた人脈とともに帰路についた。過去4年間の同会議が悲観的な見通しや金融危機後の懸念に支配されていたのに比べ、今年はかなり前向きなムードが漂っていた。

1月30日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で評価を上げた国と下げた国、視界から消えた国を挙げてみた。日本政府の代表団は確固たる自信にあふれ、見事なコーディネートを見せた。写真は26日撮影(2013年 ロイター)

センチメントは振り子のように大きく揺れ動くものだが、慎重ながらも楽観的になれる理由はある。ダボス会議の出席者の意見などを基に、評価を上げた国と下げた国、そして視界から消えた国を挙げてみた。

<評価を上げた国>

●米国

今年のダボス会議で、米国政治はほとんど忘れ去られていたかのようだった。いわゆる「財政の崖」問題もひとまず解決し、予算をめぐる争いも当面はなく(少なくとも向こう数週間は)、ダボス会議で議題となるような差し迫った危機を提供せずに済んだ。その代わり、製造業の米国回帰やシェールガス革命、前向きな成長見通しといった(恐らく誇張された)活気ある明るい話題を振りまいた。

●ユーロ圏

実績のあるユーロ圏指導者たちのほぼ全員が会議に出席したため、おのずと話題も明るかった(ダボス会議では、努力さえしていれば好意的に迎えられる)。

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁もメルケル独首相も人気だったが、中でも話題をさらっていったのは、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事だった。ラガルド氏が基調演説で最も強く訴えたメッセージの1つは、男女格差の縮小。権利の平等という観点だけでなく、「女性の置かれた状況の改善には経済的意味がある」訴えた。

欧州経済が底を打ったのは明らかだ。今はそこからはい上がる準備が整っている。まだ完全ではないにしろ、昨年より回復に向かっているのは確かだ。

●日本

自分が記憶している限りでは初めて、日本政府の代表団は確固たる自信にあふれ、見事なコーディネートを見せた。安倍晋三首相が中継で会合に参加したほか、代表団も理路整然と日本の主張を行った。そして、「ジャパンナイト」と呼ばれるパーティーには約1000人が参加するなど、大成功を収めた。しかし何よりも重要なのは、金融緩和策などを柱とする「アベノミクス」が差し当たり好意的に受け止められているように見えたことだ。

●サハラ以南のアフリカ諸国

今年の会議には、アフリカ諸国からかつてないほど多くの国家元首や閣僚が参加したが、これまでと異なるのは、彼らが中心的な役割を演じたことだ。主だった全ての会合に参加しただけでなく、アフリカ以外の問題も人任せにしなかった。多くのアフリカ諸国が新興市場として注目を集めていた。

<評価を下げた国>

●英国

英国の欧州連合(EU)離脱の可能性について語ったキャメロン首相のロンドンでの演説は、ダボス会議では不興を買った。キャメロン首相は同会議に出席していた間、質問攻めに遭い、金融企業やユーロ圏諸国などの代表者は皆一様に首相が市場に投げかけた不安定要素について神経質になっていた。

そして、キャメロン首相が2017年にEU離脱を問う国民投票の実施を提案していることを考えると、このことは、英国に向こう5年間立ち込める暗雲となり得る。世界最大の広告グループ、英WPPのマーティン・ソレル最高経営責任者(CEO)は、キャメロン首相が、英国での投資を制限することになる不安定要素「グレイ・スワン」を生み出した可能性があると指摘する。

●ロシア

ロシアのメドベージェフ首相はダボスで一番ひどい演説を行った。会議出席者の78%が、ロシアの最大の課題はガバナンスだと答えたのに対し、首相はこうした否定的な意見を一笑に付した。経済は低迷し、政治的には疑問の余地があるロシアはBRICsから外れるべきだと私は依然から思っていたが、ダボス会議参加者のお墨付きを得たということだ。

●ブラジル

ナイトクラブの火災事故はさておき、ブラジルにとってはいたって静かな1年だった。成長路線を突き進む第1級の新興市場であるブラジルにとって、今まで静かさは無縁だった。それを考えると、ブラジルは今年のダボス会議で幾分勢いを失った。

●中東

シリアに関する会合が、今年のダボスでは最も暗い空気に包まれていた。エジプトでの暴力拡大や泥沼化しつつあるマリ情勢など、中東地域に関して明るい話は全くなかった。中東問題は気候変動の議論のようになりつつある。ダボスの出席者全員がその重大さを認識していながら、悪化の一途をたどり続け、実現可能な解決策の見いだせない問題となりつつあるようだ。

<視界から消えた国>

●中国

世界第2位の経済大国としては、中国の存在感は明らかに薄かった。昨年のダボス会議では、中国は欠席の理由として旧正月と日程が重なったことを挙げていた。今年はそのような言い訳は通用しないが、ハイレベルの代表者が出席することはなかった。中国の十八番とまでは言わないが、ダボス会議が透明性や民主化、自由市場、法の支配といった問題の解決に向け話し合う場であることを考えれば、さして驚くことでもあるまい。

●インド

昨年のダボスでは、インドは「驚くべきインド」と銘打ったキャンペーンを行ったが、今年は「見えざるインド」と言えるほど振るわなかった。国内は汚職問題に揺れ、海外で目立った活躍をしているインド企業も限られている。インドはアフリカ諸国と共同でイベントを開催したりしていたが、インドの影は薄かった。

(30日 ロイター)

*筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End of the Free Market」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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